101.
ボンッ、と軽快な音が響く。
白煙が晴れると、そこには愛らしい二頭身の狸――「ぽんぽこモード」の彼女がいた。
つぶらな瞳に、ふかふかの尻尾。
中身がアレだと知らなければ、抱きしめたくなるようなマスコット感だ。
「……これ、やっぱり幻術なんでしゅよね」
私が冷ややかに見下ろすと、狸は懐からスケッチブックを取り出した。
【イエス。これが私の正装だ】
器用にマジックで書かれた文字。
喋るのが面倒になったのか、またこの筆談スタイルに戻っている。
【私の能力は『幻術』】
【幻術を使う獣……】
ぽんぽこは意味深にページをめくり、バッと効果音がつきそうな勢いでフリップを掲げた。
そこには、達筆な文字でこう書かれていた。
【すなわち、うちは幻獣!】
シーン。
森に、極寒の風が吹き抜けた。
木枯らしがカサカサと落ち葉を揺らし、遠くでカラスがアホゥと鳴く。
絶対零度の静寂。
「…………」
私は無言で鼻を鳴らし、くるりと踵を返した。
失笑ですらない。
完全なる無関心だ。
時間の無駄だった。さっさと行こう。
「おいぃぃぃっ! ちょっとぉぉぉっ!?」
背後で狸がフリップを投げ捨てて叫んだ。
幻術の設定を忘れて、普通に地声で喋っている。
「無視!? そこはツッコむか笑うところでしょ!? 今の『うちは』と『幻獣』がかかった高度なギャグ! 分からない!? これだから異世界人は!」
「寒すぎて凍死するかと思ったでしゅ。行くでしゅよ」
「待って! 置いていかないで!」
ぽんぽこは短い手足をバタつかせ、私の後をボールのように転がって追いかけてくる。
そして私の隣に並ぶと、懲りずに新しいフリップを出してきた。
【ま、改めてよろぴく頼むわ!】
バチコーンとウインクを決める狸。
その鋼のようなメンタルの強さだけは、確かに「幻獣」級かもしれない。
私は頭痛を堪えるようにこめかみを押さえつつ、新たな(そして最高に騒がしい)道連れと共に歩き出すのだった。
【おしらせ】
※2/11(水)
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