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【書籍化】転生幼女は愛猫とのんびり旅をする【2巻12/10発売!】  作者: 茨木野


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100/102

100.

幻術が解けたことで、目の前にいる「負け犬」の正体が露わになる。


 ヨレヨレの臙脂えんじ色のジャージに、便所サンダル。

 何日風呂に入っていないのか分からない、ボサボサの銀髪。

 顔立ちは彫りが深く、色素の薄い瞳をした整った美少女なのだが、溢れ出る「残念オーラ」が全てを台無しにしている。


「ふんっ。……やってくれるじゃないか」


 彼女――三才山みさやまぽんぽこが、ジャージについた土をパンパンと払いながら立ち上がった。

 さっきまでの土下座(屈服)はどこへやら。

 彼女は長い銀髪をバサッとかき上げ、ニヒルな笑みを浮かべる。

 どうやら彼女は、祖母がロシア人のクォーターらしいが、その神秘的な血筋もこのジャージ姿では形無しだ。


「この偉大なる幻術使い、『三才山ぽんぽこぅ』をボコボコにするとは、なかなかやるじゃねえか。褒めてやるよ」

「……はぁ。どうもでしゅ」


 私はジト目で返す。

 名前の語尾に「ぅ」をつけるのが彼女のこだわりらしいが、正直どうでもいい。

 すると、ぽんぽこは仁王立ちになり、ビシッと私を指差した。


「気に入った! 貴様に免じて、特別にチャンスをやろう!」

「ちゃんす?」

「うむ! この私を仲間にする権利を与えよう! 喜べ! 光栄に震えろ! わっはっは!」


 彼女は腰に手を当て、高らかに笑った。

 清々しいほどの掌返し。

 負けた直後にこの態度を取れるメンタルだけは、一流かもしれない。


(……うわぁ)


 私は心底引いた。

 面倒くさい。

 やかましい。

 そして何より、この残念なジャージ女を連れて歩く恥ずかしさ。


「……やっぱり、いらないでしゅ」

「なぬっ!?」


 私が踵を返すと、ぽんぽこが驚愕に目を見開いた。


「ま、待て待て! 正気か貴様! 私の幻術だぞ? 一家に一台、あると便利なぽんぽこさんだぞ!?」

「うるさいし、臭そうでしゅから」

「臭くないわ! ちゃんと三日に一回はファブリーズしてるわ!」


 風呂には入れ。


 私は溜息をつき、少し考える。

 確かにこいつはウザいが、その幻術の腕前は本物だ。

 異世界での一人旅は危険が多い。

 囮や目くらましとして使える「手駒」がいるのは、悪い話ではない。


(……まあ、非常食(タヌキ鍋)にもなるでしゅしね)


 私は足を止め、振り返る。


「分かりましたでしゅ。……荷物持ちとしてなら、連れて行ってあげるでしゅよ」

「荷物持ちだと!? この私をパシリ扱いとは……!」


 ぽんぽこは一瞬ムッとした顔をしたが、すぐにニカッと笑った。


「まあいい! 貴様のその度胸に免じて、仲間になってやるかー! わっはっは! 感謝しろよな!」

「……チッ」


 私は盛大に舌打ちした。

 前言撤回。

 やっぱり置いていけばよかったかもしれない。

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※2/5(木)


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― 新着の感想 ―
次回、お猫様のヤキ入りまーす! たぶんかなりキツめのヤキ入れになりそう。
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