信仰
あまりにもの勢いに俺たちは満身創痍になりながら無事、客を捌ききった。これは数日で赤字から黒字になるのではないだろうか。少なくとも日本食...ではなくて、パンジ食を広めることには成功しただろう。
みんな幸せそうに食べていたから、値段も相まってほぼ確実に繁盛するけどな。それに、笑顔になる客を見てトリーたちも嬉しそうだった。俺はそんな余裕無かったけど。
「こういうのもいいものだな」
「カーラはなんでそんなに上から目線なんだよう!!」
「私は天使、偉い」
「今更!?」
トリーの言うように本当に今更である。まあ、カーラのことだからネタなんだろうけどさ。そんなことを考えつつ、俺はカオルさんに聞いた。クエストをクリア出来そうで満足なのだが、こっちが目的で始めた所もあるしな。
「カーラさんを信仰していただけますか?」
「カーラさんはとても優しい人ですしね。なぜ信仰してもらいたいのかはわかりませんが、いいですよ」
信仰してもらう以上誠意を見せようと思ったのか、カーラさんが翼を展開する。神々しく、気高さを感じさせていた。だが、友達だからか、店内に散ってしまった翼の羽根の方がどうしても気になってしまった。
もちろんカオルさんはそんなことはなく、祈りを捧げ始めていた。
「御身を持って助けていただきありがとうございます...」
感無量と言った感じで跪いている。自分がわかるならまだしも跪こうなどは露ほども思わないため、ちょっと戸惑うな。いつも、ネタをフルスロットルで飛ばしているからね。
そんなことを思っていると、カーラさんが天使モードを解いた。すると、まるで夢から覚めたようにカオルさんがハッと立ち上がる。カオルさん自身でも、無意識に跪いて居たようだ。
「カーラさんは天使なんですね」
「そうだな。天使らしい」
「信仰を集める事情があるんですね」
「ああ、そうだ。旅をしようと思っている」
「そうですか...」
「じゃあ、また明日な」
「明日...また明日ですね!」
俺たちは、ぶんぶんと手を振るカオルさんを見ながら食事処を後にした。




