新人受付嬢。その名はデイジー
食事処を後にすると、俺たちは冒険者ギルドに来ていた。結構時間が経ってしまったが、リアルの時間や素材の鮮度は大丈夫だろうか。
リアルの時間はともかく、素材の鮮度を気にするのもおかしいとは自分でも思うのだが、このリアルさを追求しすぎたゲームでは普通にありそうである。
「査定に時間がかかるので少しお待ちください」
クエストを報告した後、素材買取カウンターに素材を出すとそう告げられた。受付嬢から札を受け取り壁際に寄る。今回は昨日よりも幾分か空いていた。もう過疎化し始めたのかもしれない。
妙にリアルだからな。ゲームにしては鬼畜だし、一般のサラリーマンにはゲームシステム的にも厳しいのかもしれない。五日間なら空腹度が空にならずに耐えられるのだが、6日間となるとキャラによっては餓死してしまうからな。
やっぱり、このゲームシビア過ぎるね。そういえば、ゴブリンにはさほど時間が掛かっていなかったのに今回時間がかかっている理由はなんなんだろうな?
「随分と待つよな~なんでだろうな?」
「何でだろうね~」
「なるべく傷を付けなかったはずなんだけどね~(棒読み)」
「マネする時も棒読みかよ!!」
そんなことを話していると
「4番の札を持っている人査定終了しました!!」
受付嬢の声が聞こえた。ちなみに、4番の番号札は俺たちのパーティーが持っている物である。受付嬢にはRankアップの条件をついでに聞こうかな。
「はい、査定終了しました。よく、Rank1の冒険者の方々なのにこんな綺麗に倒せましたね。凄いです!」
「照れるな~~」
「いや、トリーじゃないだろ倒したの!!!」
「おぉ、噂の妖精男さんですね。私、デイジーと言います。宜しくお願いします」
な、なんだ!?この馴れ馴れしい受付嬢は!!?特に不愉快な訳ではないが、大丈夫だろうかと心配になってくる。
なぜ、心配しているか?それは簡単なことだ。カウンターで注文するマックなどの飲食店を想像してみて欲しい。
そこでは行列が出来ている。そして、君はついに後もう一人というところまで来た。そこで店員と客で会話をしている。
他の人がどう思うかはわからないが、恐らくは「会話してないで早く注文してくれ!!」と、思うだろう。
以上のことより、この状況の受付では私的な会話は控えた方がいいのだ。この、デイジーさんはそれを知らない新人なのだろう。
他の受付嬢や冒険者も睨んでるしな。
「あの?サインをくれませんか?絶対にあなたは有名になると思うので!!」
「私というマネージャーを通してもらわないと困る」
「いや、俺は芸能人かよ!!!まあカーラ、意味がわからん理由だがサインぐらいいいでしょ」
「ありがとうございます!!」
一層強くなった男冒険者の睨みに冷や汗を掻きながら、竹の筆でサインを書く。適当に名前でいいか。ちなみにデイジーさんに向ける、受付嬢や女冒険者の睨みも一層強くなっているのだが気づいていないようだ。
神経図太いね。俺はそう思いながら借りた木の板と竹の筆、墨を返した。
「ありがとうございます!!全部家宝にします!」
「いやいや、サインを書いた板はまだしも竹の筆と墨まで家宝にするのかよ!!!」
「報酬に色を付けるならOK」
「カーラは俺の所属事務所のお偉いさんかなんかなのか!?」
「そう、なんか」
これにびっくりしてトリーは終止フリーズしていた。そりゃあビックリするよね。俺もびっくりした。こうして俺らは700Gをゲットした。
デイジーいわく100G増額してくれたらしい。内緒ですよと小声で伝えられたわ。こんなんで冒険者ギルド大丈夫か...




