気まぐれ定食
特別報酬はお金だったりこの店の期間限定割引券とかならいいな、と想像を膨らませていると、食事が届いた。
ベージュの落ち着いた色合いの陶器製の皿は旅館を思わせるものである。比較的華やかな壁に比べて届いた食事は良い意味で質素であり、健康的な食事に見えた。
で、気になる気まぐれ定食の内容だが、メインディッシュは焼き鮭である。その焼き鮭には二本の円柱状のみょうがが添えられており、春を感じさせた。
なかなか、季節感があって良いな。高級料理店の支店というのは伊達ではないかもしれない。あれ、鮭って秋では...
ま、まあそこは置いておいて、木の器に入った味噌汁が良い匂いをさっきから漂わせている。この芳醇な匂いからして味噌汁なことは間違いない。食欲がそそられるな~~食事をする必要がないのに不思議だ。
そして、湯気を出してホカホカさをアピールしているお米は粒が一粒一粒しっかりとしている。雑穀米なのがなんか健康食っぽいが、コスト削減の為だろう。お米を入れている器も、落ち着いた皿だ。どうせなら店内も落ち着いた内装にすればいいのに。
「今回の気まぐれ定食は旬の食材を使ったものにしました」
「鮭の旬は秋じゃ?」
「失礼ですがセルア様、春でございます」
「そうなのか。それと、様付けしなくていいよ」
そう言うとカオルさんは困ったと一目見てわかる表情を受かべる。悪いことを言ってしまったかな?でも、これから協力しあうわけだし隔たりは除いた方が良いよね。
「いえ、一応お客様ですし...」
「これから協力するんだし、ただのお客様じゃないでしょ?」
「そうですね。セルアさん」
うんうんこれで良い。協力する以上、変な壁は作ってはいけないからな。それと、やっぱりゲームの世界だからだろうか鮭の旬が春っていうね。
気まぐれ寿司や鳥の照り焼きを見ても特に変わったものは無い。ゲーム世界ならではの料理とかはないらしい。鳥がコカトリスだったりしないのかよ....
運営よ、もうちょっとファンタジー感出そうよ!!!鮭の旬が春っていう相違点は微妙すぎるでしょ!!!魔物料理とかないのかよ!!
俺は運営に文句を言いながらまず、お米だけを口に入れる。
美味い。
お米がしっかりと弾力があり、甘さがあった。雑穀が米の美味さを引き立てていて絶品だ。次にずっと飲みたかった味噌汁を一啜り。ああ、なんだか落ち着くな。味噌が程よい塩梅で入っている。濃すぎず、薄すぎない。
それに味噌汁はアツアツということもなく、心安らぐ温かさだ。ちなみに具材はスタンダードに豆腐とワカメだ。個人的にはネギ派なのだが、旬を考えると仕方ないことだろう。ネギの旬は冬だからね。
「おいしいね」
「ん、おいしい」
「こりゃあ宣伝すれば間違いなく繁盛するな」
「お褒めにあずかり光栄です」
「カオルさん、そんな謙らないで。これから一緒に呼び込みをするんだから」
「はい」
「じゃあ、具体的に明日、やる作戦を練ろうか」




