パンジ
「私はカオルと言います。それで私、元々はパンジというここから海一つ挟んだ場所にある国に住んでいたんです」
「...パンジね」
どうやらカーラさんは知ってるらしい。いや、それはおかしいな。カオルさんの故郷を知っていると、言うことで信頼させやすくしているのだろう。
ただの赤の他人と故郷を知っている人では差が出てくるからな。
「パンジは奥ゆかしさに重点を置いていて、魚を生で食べる文化がある」
「そうです!あっすみません」
って何でカーラさんが知ってるんだ!?あ、でも聴くまでも無いのか。この漆やお通し、和服は日本まんまだからね。パンジという名前もジパングから取っているのだろう。
だとするとだよ。お店が追い込まれた理由は日本、じゃなくてパンジの文化が受け入れられていない、理解されていないからではないだろうか。知ってくれている人が居て、喜びの表情を見せたカオルさんであったが、その表情に陰りがさした。
「私はパンジでもこのような店を開いて繁盛をしていたんです。そうしましたら、このザンズシの国の店がオープンしてあっという間にお客様を持っていかれて....」
「なるほどな」
要するに前の日本のように欧米の食事を出す店が入ってきて、目新しさも手伝いそちらに客が流れて行ってしまったのだろう。こちらに来ざるを得ない程の被害とすれば、パンジの人は日本人以上に順応能力が高かったと言うことだ。
だって、和食高級店が生き残れないということは位が高い人が大量に流れて行ったということなのだから。そんな推理は遠からずも当たってはいなかったらしい。
「赤字は辛うじて出ないレベルではあったんです。ですが店長が、ザンズシの食文化を広められたのだからザンズシにパンジの食文化を広めてやろう...と」
「で、ここに店を出店はしてみたものの売れないということか」
「はい、お恥ずかしながら」
店長はよっぽどパンジの料理に誇りを持っていたんだな。でも、だからといって始まりの草原とかいう冒険者成り立てが集まるような街に高級料理店を出すなよ!!運営、もっと後の街に出せよ。こう、頑張ったボーナスみたいなさ。あっても食えないようじゃ生殺しだろ。
本当にこう考えるとなかなか立地が謎だよな。どうしてここに出した。運営の観点からもリアリティの観点からもさっぱり理解できない。
「店長に言わないとダメなんじゃないの?」
「あ、そういえばそうだな」
「私の言い方が誤解を招き申し訳ありません。私は支店長です」
「...なるほど」
ということは、この人が納得すればこの店を自由に出来るということか?でも、支店長だからな。本店には逆らえないか。そこらへんも聴こう。
「この店は自由に出来るのか?もちろんパンジの国の料理を出さない、なんて言わないから」
「それなら大丈夫です。赤字が出てからはパンジの国の料理を広めれれば良い。とにかく広めろ!と申し付かってますので」
「じゃあ、何で高級路線で?」
「高級なんですか?」
「Oh...」
この店、見た目が高級なだけかもしれない。
気軽な感じを目指してたが、設定を練りすぎた感ある。




