天使
俺は冒険者ギルドに着くと、天使姿の子が居た。わけでもなく、昨日とギルドは変わらぬ喧騒を保っていた。まだ約束の時間になっていないのか?メニューで時間を確認するとしっかり約束の時刻になっている。
北山さんを捜すか。その後合流して石川さんを(街の中を含めて)捜そう。
北山さんを捜して少し経った頃にギルドから「うおお」一斉に驚きの声が上がった。驚きの声が上がった方向を見てみると光る羽根を僅かに落としつつ、羽を展開している石川さんが居た。
石川さんはリアルそのまんまの姿のようだ。だが、幻想的に光る羽がとても似合っている。まるで本当の天使のようだ。エフェクトすごいよな。幻想的な光りは聖なるなにかを感じさせられるからね。どうやったらあんな光を出せるのだろうか。
見惚れている場合じゃないな。俺は野次馬の中を潜り抜け、何とか石川さんの元へと辿り着く。石川さんが見せる一種の神聖さのせいで野次馬がある一定の距離を保っていたので隙間があって助かったわ。
野次馬を寄り付かせないって....グラ班本気出しすぎでしょ。ここまで来ると、プレイに支障が出るんじゃないか?
そんなことを思いつつ、俺は石川さんに頼んだ。
「羽を仕舞ってくれないか?」
「ん、わかった」
石川さんが羽を仕舞うとまるで正気に戻ったかのように人が動き始める。数秒すると冒険者ギルドにはまたあの喧騒が戻ってきた。それ見る石川さんはなんだかジト目をしていた気がする。その石川さんは相変わらずの無表情で告げた。
「羽を出すと面倒くさい。運営、本気出しすぎ」
「だよな。リアリティを追求しすぎなんだよ。さっきのは絶対プレイに支障が出るだろ」
「ん、それに羽を出さないと十全の力を発揮出来ないのが厄介」
「え、マジで」
「羽は象徴だから、羽を出さないと力が半減する」
「Oh....」
運営は人を集める気があるのだろうか。ただ単に、俺が作った最強のCVRMMO、みたいのを作ったわけじゃないよな??俺が運営の頭の心配をしていると北上さんことトリーが駆け寄ってきた。
「ごめん、ごめん。ちょっと見つけるのに手間取っちゃって、あんなことをさせることに...」
「別にいい」
「ありがとう」
「じゃあ、フレンド交換しようぜ」
俺はそう言うと、冒険者カードを取り出した。トリーも知っているので冒険者カードを取り出した。困惑する石川さんに俺は言う。
「じゃあ、冒険者カードを取り出してくれ」
「ん...取り出した」
「そのカードをしっかり持っててくれ」
俺は石川さんが持っているカードにカードを触れさせ、トリーも同じように触れさせた。
「あとは出て来たウィンドにYesと承認させるだけだ。ちなみに俺はトリー」
「私は、セルアってせめてちゃんとした名前でボケようよ!!!」
「ん?」
「さっきのは嘘で俺がセルア、この女性はトリニティだ」
俺は『カーラさんとフレンドになりますか? Yes or No』と眼前に出て来たウィンドウのYesを当然タップした。そりゃあ、天使には名前しかないよな。リアルでもルシファーとかアザゼルとか名前しかないからね。
なぜ、堕天使ばっかり名前が浮かぶか?.....俺にもそういう時があったからだよ。
「登録し終えた」
「じゃあ、私がクエストを取ってくるよ」




