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夢見ノ森怪奇譚  作者: 種子島やつき
第十四話 殺人鬼
57/69

14-4

 連続殺人犯について部員たちが出した情報は、千博が知っている物ばかりであった。

調査手段がマスコミとインターネットに限られている今の状況では、それも仕方ないだろう。

情報が出尽くしたと感じた千博は、先日事件現場で手に入れた話とそれに対する推論を口に出した。

今までに事件が起きた場所のうち、少なくとも二か所で事件前に空き巣が現れている。

だから、犯人はあらかじめ空き巣として周囲の家を物色し、獲物を選んでいるのではないか、と。


 千博の発言に、話を聞いていた尾崎が小さな手で拍手をする。


「スゴイよ千博クン。立派になってくれて元部長はうれしいよ」

「貴女は何もしていないじゃないの」

「実を言うとさ、事件が起きた五つの場所全部で事前に空き巣があってね。警察もその空き巣が犯人だと思って捜査を進めてるみたいよ」

「まったく、知ってるんなら先に言いなさいよ」


 常夜が尾崎の長い尾を捕まえようとするが、彼女は巧みに手の平をすり抜ける。

机の上で追っかけっこをする二人を尻目に、花山が「でも……」と声を上げた。


「でも、それってやっぱり犯人について何も分からないってことですよね……。おそらく犯人はその空き巣なんでしょうけど、こっちが犯人を捜す手掛かりには、ならないじゃないですか」

「確かに。警察は空き巣について捜査を進めていけばいいけど、パトロールで見つけようとしてる俺たちは、外見的な特徴なんかが分からないと意味ないもんな」

「やっぱり、鳴郎さんの予想したところを回るしかないんですかね……」


 千博と花山は、腕を組んで黙っている鳴郎を見る。

彼は若干ウザったそうに「五丁目。夢見ノ森団地」とだけ答えた。

夢見ノ森団地は、マンション群の近くにある集合団地である。

これまた大層な面積と戸数がある所で、千博は頭が痛くなった。

しかしよく考えてみれば、戸建ての住宅街に比べて隠れるところは少ないし、外から解放廊下が見えれば、戸口を見張らなくても住民の出入りを監視することができる。


「今はこれしか手段がないし、行くしかないか」


 他の部員たちも千博の意見に賛同し、怪奇探究部一同はファミレスを出て、夢見ノ森団地へ向かった。

五丁目まではとても歩けない距離なので、移動はもちろんバスだ。

目的地へ近づくにつれて、車窓からは壁のように乱立する団地群が見え始める。

城壁のように立つ団地を眺めながら、千博は自分の認識が甘かったことを実感した。

いくら見回る敷地が限られているとはいえ、広大な団地を全て調べ回るのは不可能だろう。

運よく犯人と出会えればいいが――頭を悩ませているうちに、バスは団地の入口へと到着した。

バス停は団地の中心である広場の真ん前にあり、一同はとりあえずそこで作戦を立てることに決める。

無計画に回ったら、団地の半分も見られないと思ったからだ。


「私はやっぱりこの前のように二組に分かれて動くのがいいと思うんだけど……」


 部長である常夜が口火を切る。

千博も彼女の作戦に異論はなかった。

他の部員たちも常夜の意見に賛同したが、いざ行動開始となる前に花山が言う。


「あ、あの、皆さんちょっとすみません……」

「どうしたんだ花山さん」

「実を言うと、あそこにさっきから迷子らしき子がいまして……。こんな時だけど、なんか気になっちゃって……。すみません……」


 花山の指さす先には、辺りを行ったり来たりする少年がいた。

背丈から察するに、幼稚園へ通っているくらいの年齢だろうか。

今にも泣き出しそうな表情を見ると、確かに彼は迷子かもしれなかった。

おそらくこの団地に住んでいる子だろうが、あれぐらいの年齢なら敷地内で迷子になっても無理はない。


 千博は彼に声をかけようが迷ったが、気が付くと彼の前にはすでにキクコがいた。


「キミどーしたの?」


 いきなり話しかけられ、少年は少し怯えた様子で言う。


「おかあさんがいなくなっちゃったの……」

「どこで?」

「おかあさんとおうち出て、ここでアリさん見ててね、それからおかあさんのこと見たらいなくなってたの」

「お母さんはどんな人? どんなカッコしてる?」

「かみが長くて、上が赤くて、下が青いズボン……」

「いなくなっちゃったのはいつ?」

「……」


 まだ時計の読み方も分からないのだろう。

少年はしばらく黙ってしまったが、やがて広場にある時計台を指さした。


「長いはり、7のところにあった……」


 時計の針は読めなくとも、それが時間を知らせるものだという認識はあるようだ。

ひょっとしたら、幼稚園である程度教えてもらっているのかもしれない。

現在、時計台の長針は、9の位置を指している。

少年の落ち着きぶりから一時間以上たっているとは考えにくいので、おそらく迷子になって十分くらいだろうと思った。


「仕方ないし、ついでに管理所へでも連れて行ってあげますか?」

「そうねぇ」


 迷子の幼児を見捨てていくのは忍びない。

千博は彼に声をかけようとしたが、その言葉は少年へ届かなかった。

声をかき消すようにして、広場で悲鳴が反響したからである。

何事かと悲鳴のした方へ振り返ると、植え込みの前で犬を連れた中年女性が腰を抜かしていた。


「し、した……。した……。死体……。死体ィィィィィッ!」


 植え込みには背の高い広葉樹と低木が植えられており、死体を隠すには充分だろう広さがあった。

駆けつけると、低木の中から白い腕が突き出している。

死体を低木の中へ投げ込んだのかと思いきや、胴体は広葉樹の幹の下に、頭は土の上で転がっていた。

そう、犯人は死体をバラバラにして、植え込みへ放り込んでいたのである。

血に濡れた凄惨な事件現場には、まるで供物のようにスポンジが置かれていた。


 六件目の殺人が起きてしまったのだと、千博は目を見開いたまま言葉を失う。


 引きちぎられたように断面が乱れた死体は、赤の上着と、青いジーパンをはいていた。











 警察の事情聴取などで、千博が家に帰ってきたのは日が落ちてからだった。

もちろん疑われたりはしなかったが、どうしてあの場にいたのかや、発見した時の状況など、嘘を交えて説明するのは大変骨が折れた。

持ち物などから、先ほどの死体が少年の母親だということは間違いないらしい。

ベッドの上に横たわると、千博は泣き叫ぶ少年の姿を思い出して顔をしかめた。

時間からいって犯人とニアミスしただろうに、何の手掛かりがないことも腹が立つ。

犯人は殺すだけ殺すとさっさと逃げてしまったらしく、鳴郎も何の気配も感じられなかったようだ。


 少年の話から考えて、彼の母が殺されたのは、いなくなってから十分足らずの間。

逃げる時間も考慮すると、おそらく連れ去られて五分以内に彼女は殺されたのだろう。

たった五分で人を殺し、おまけに体をバラバラにするなんて、普通の人間には不可能である。

犯行に要した時間と死体の断面。

そこから推察するに、おそらく犯人は自分の臂力ひりょくで被害者の体を引きちぎったのだろう。

やはり犯人は、人を殺すごとに怪物へ近づいていっているのだと思った。

今回室内で被害者を殺さなかったのは、手に入れた自分の力に酔い始めたからだろうか。

無差別虐殺までそう時間はないのかもしれないと、千博の背中に冷や汗が伝った。


 警察も有力な手がかりを未だ見つけられないようだし、化け物になりつつある犯人はやがて警察の守備範囲を越えるに違いない。

空き巣の捜査方面から、犯人の特定に至る証拠が出ればいいが。

だがまもなくかかってきた尾崎からの電話が、千博に告げる。


「千博クン、残念だけど、あの空き巣は殺人犯じゃなかったみたい」


 尾崎の声は珍しく沈んでいた。

遊び半分で事件を楽しむ彼女でも、犯人を捕まえられないと気分がよくないのだろう。


「殺人犯じゃないって――。空き巣は捕まったんですか?」

「そうなんだけど、殺害時にはほとんどアリバイがあるって」

「……間違いないんですか?」

「うん。空き巣はコンビニ店員でね。犯行時刻はいつもシフトが入ってて、監視カメラの映像もあるし、目撃者もちゃんといるの」


 電話を切った後、千博はケータイをベッドに叩きつけた。

床にしなかったのは、千博の理性がなせる業である。


(空き巣が犯人じゃないなら、一体誰が犯人なんだ――)


 もはや完全に手詰まりであった。

しかしこのまま引き下がるのはプライドと正義感が許さない。

尾崎以外は同じ気持ちであろう怪奇探究部員は、翌日、学校の部室へ集まった。

ファミレスではなく部室なのは、校舎が解放されている日であるのと、やはり落ち着いて話せる場所がここだからだ。


「こうなったら、どんな情報もすべて洗いざらい調べましょう。たとえ関係なさそうなことでもかまわないわ。事件に関する情報すべて調べるのよ」


 集まった仲間たちに、常夜が宣言した。

花山がうなずくと同時に、持ち込んだノートPCを開く。

いつもは不安げな表情も、今日ばかりはかたい決意に満ち溢れていた。


「昨夜のうちに、事件現場で撮られた証拠写真はすべてPCに移しておきました」

「一子ちゃん、どうやって……」

「県警察のセキュリティなんてザルです。それに尾崎先輩の協力があれば、鳴郎さんに金棒ですよ」


 「上手いこと言いやがって」と鳴郎がうそぶく。

前々からパソコンのできる少女だと思っていたが、まさか警察相手にハッキングするとは。

しかし今はそれについてとやかく言っている場合ではなかった。

犯行を重ねるごとに、化け物へと近づいていく猟奇殺人犯――ヤツを退治することが、いまこの街で他の何よりも優先されることだからだ。


「じゃあ花山さん、もしかして、犯行予告に使われた物の写真も見られたりする?」

「ええ、見られますけど……。どうしてですか?」

「昨日の死体の横にも、予告と思しきスポンジが置いてあったんだ。人並み外れた力を手にしてもなお、犯人は犯行を予告することにこだわっている――。きっとなにか重大な意味があるんじゃないかな?」


 これは千博が徹夜で考えて導き出した結論だった。

犯人はすでに今までの犯行にこだわらなくてもいいだけの力を手に入れている。

なのに未だ日用品を置く形の犯行予告にこだわるのは、なにかしらの理由や事情があると思っていいだろう。


「だから今までの犯行予告を見れば、何か手がかりが分かるんじゃないかと思ってさ」

「……分かりました」


 きっと警察も穴が開くほど犯行予告を調べたと思うが、何もしないよりはましだ。

花山がPCを操作すると、今までの犯行予告で使われた日用品が、画面を六分割する形で表示される。

すべての証拠品が一目で見られるので、共通点や互いを比較するのに便利そうだった。


「これが今までに残された犯行予告が……」


 メーカーなど具体的なことはマスコミに伏せられていたため、千博が実際の証拠品を見るのは初めてである。

台所洗剤、スポンジ、漂白剤、タワシ、台所洗剤、スポンジ。

事前に得ていた情報のとおり、証拠品のどれもが同じメーカー製のものであった。

証拠品の製造元であるブランド、株式会社日章生活にっしょうせいかつは、台所用品や洗濯用品などを売り出している大手メーカーだ。

中央の星を囲むようにして集中線が入っている印象的なマークは、家事手伝う千博でも呆れるほどおなじみだった。


 ちゃっかり集まりに参加していた尾崎(一匹)が、液晶画面をのぞき込みながら言う。


「しっかし、何度見てもおなじメーカーばっかりだよねー。よっぽど恨みでもあるのかな?」

「だけど犯行予告にこのブランドの商品が使われていることは、六件目の事件があった今でも報道されていません。日章生活に恨みがあるなら、途中で殺すのやめませんか?」

「殺すのが楽しくなっちゃたとか……」

「そしたら、別のメーカーの商品置き始めてもいい話ですし。きっと恨み以外で、このメーカーにこだわる理由があるんでしょう」


 そんな理由など、まださっぱり思い浮かばないが。

しかし常夜は何か思いついたようである。


「ひょっとして犯人は、警察への挑発を込めてここの商品を使ってるんじゃないかしら?」

「どうしてそういう風に思ったんです?」

「だって日章生活のロゴマークって似てるじゃない。警察のシンボルマークに」


 言われてみれば、確かにそうだと思った。

星に集中線が入った日章生活のマークは、警察が用いている日差しをかたどった紋章そっくりである。

花山が素早くネットを検索して、警察のシンボルの名が旭日章きょくじつしょうだということ、また日章生活はブランドマークも会社名も、その旭日章を意識しているのだということを調べてくれた。

これはひょっとしたら大きな発見かもしれない。


「そうなると、犯人は常夜先輩の言うとおり、日章生活の商品を置いて警察を挑発しているのかもしれません」

「挑発じゃなくても、警察に対して何らかのメッセージを発しているのは間違いなさそうね」

「警察に対して恨みがあるとか、ですかね?」

「それかゲーム感覚でからかってるっていうのが定番だけど……」


 犯人の意図がはっきりとせず、再び千博は考え込んだ。

だが悩むこちらに対し、あっけらかんとした様子で鳴郎が言う。


「犯人は警察のマークがついた証拠品をわざわざ残してるんだろ? だったら犯人は警察なんじゃねーの?」


 思いもよらぬ発言に、千博だけでなく常夜と花山も目を剥いた。

何を言ってるんだという視線に顔をしかめながら、彼は続ける。


「だってそうだろ。他にメッセージも残さず警察のマークを置いてるんだから、俺は警察だって言いたいんじゃねーのかよ」

「だけどお前なぁ……」

「それに事件現場付近ではどれも空き巣の被害が出てるんだろ? 辺り一帯警察が聞き込みに来たんじゃねーのか? だったら――」

「警察なら、聞き込みに乗じて色んな家に入ることが――!」

「そうだよ。やればできんじゃねーかテメェ」


 千博は言葉を失った。

彼の言うとおり、警察なら聞き込みのついでに様々な家の中へ入ることができる。

「防犯対策の指導も兼ねて」などといえば、なおさら容易に侵入できるはずだ。

実際に空き巣が発生しているのだから、住民が怪しむことはまずありえない。


 盲点だったと千博は思った。

殺人が起きるのは必ず過去に空き巣のあった場所だが、しかし犯人はその空き巣ではない。

空き巣でもないのに、この夢見の森タウンの中で起きた空き巣事件の場所をくまなく知っている人物――犯人が警察である可能性は高かった。


「そういえば――」


 警察について考えているうちに、千博はふと思い出す。

四件目の事件が発生した時間帯、刑事と婦警の二人組に声をかけられたことを。

鳴郎に言うと、彼は「バカか!」と怒鳴り声を上げた。


「テメェおいコラ!! どうしてそれをその時言わねーんだよ!! テメー頭いいのか悪いのかハッキリしろっ!!」

「だって、警察が見回りしてるのは別に普通のことじゃないか」

「馬鹿野郎!! 犯人に対する固定観念を捨てろって言ったじゃねーか! ソイツらが犯人だよ!!」


 「そんなわけあるか」と言おうとしたところで、千博は言葉を飲み込んだ。

あの二人の不自然なところに、今さら気づいてしまったからである。

四件目の事件が起きた時間帯、千博たちは現場のすぐ近くをうろついていた。

なのになぜ、四件目の殺人が起きた後、千博たちは何も聞かれなかったのだろうか。

事件を解決しようとしている警察なら、なにか目撃しているのではいかと事情聴取くらいしてもいいはずである。

名前こそ聞かれなかったが、起きているのは世間を騒がせる連続殺人事件だ。

身元が分からなくとも、着ていた制服から個人を特定し、署へ呼び出すくらいしてもやり過ぎではないだろう。

特に千博たちは目立つ容姿をしているから、中学に問い合わせれば一発で分かったはずだ。


「……鳴郎の言うとおり、あの二人が犯人かもしれない」


 千博の呟きに、常夜が勢いよくこちらへ振り返った。


「それ本気で言ってるの?」

「だってそうじゃないですか。俺たちは四件目の事件の目撃者かもしれないのに、あれから何事もなかったんですよ。あの二人が報告していれば、俺たちは事情聴取くらいされたはずです」


 「それに――」と千博は今気づいたことを口に出す。


「それに、あの二人の組み合わせ、今考えたら妙じゃありませんか?」

「……どうして?」

「私服を着ていたところから、恐らく男の方は刑事でしょう。でも女の方は制服でした。

刑事なら女でもいわゆる婦警の格好はしないでしょうし、たぶん別の課です。見回りするのに、どうして別の課同士で組ませるんでしょうか。一人だと危ないなら、同じ課同士で組めばいいはずですし。そもそも大事件真っ最中の刑事をパトロールに回すなんておかしいですよ」


 言いながら千博はあの二人が犯人である確信を強めていった。

刑事なら空き巣がどこで起きたか分かるだろうし、聞き込みで家の中にも入れる。

婦警が一緒にいれば、刑事とはいえ男一人尋ねるよりも、若い女性の家に入れてもらいやすくなるはずだ。

現場付近で目撃されても、男女二人なら怪しまれない。

いくらたっても捕まらないのはそういうわけかと、腑に落ちた気分だった。


 しかしいくら怪しくても、推論だけで犯人だと決めつけるわけにはいかない。


「花山さん、その二人の住所、調べられるか?」


 鳴郎は化け物になりつつある人間の気配を嗅ぎ取ることができる。

つまり鳴郎は二人に会うだけで、彼らが犯人かどうか察知することができるのだ。

居場所さえ分かれば、あとはこっちのものである。


「あの……住所なんですけど……。このパソコンだとちょっと無理なんですが、尾崎先輩が夢見の森署に忍び込んでいるので、先輩にメールで送ってもらいます」

「尾崎さん……。さすがだ……」


 千博は素直に称賛の言葉を述べる。

尾裂狐はすべての個体が知識と人格を共有しているから、ある意味、複数の場所に同時に存在できるのだ。

尾崎パート2はあらかじめパソコンの近くにいたらしい。


「とりあえず特徴に合致する婦警のデータを何人か送っといたよ。残念だけど刑事の方は情報が見当たらないんだよね。なんでか知らないけど」

「あの……。刑事の方は、もしかしたらキャリアなのかもしれません。国家公務員だから、管理系統が違うのかも……」


 たとえ刑事のデータが見つからなくても、婦警の方から聞き出せばいい話だ。

幸い目的の婦人警官は送られたデータの中から見つかった。

名前は「矢守ひろか」。

なんと彼女は、昨日団地で殺された女性のすぐ隣に住んでいるらしい。

いや、ひょっとしたら矢守ひろかの隣に住んでいたから、あの少年の母親は殺されたのかもしれなかった。

隣同士仲が良ければ、家にお邪魔したことがあっても不思議ではない。


「ぐずぐずしている時間はないわ。行きましょう」


 常夜の言うとおり、迷っている時間はなかった。

犯行ペースは最初より明らかに上がっており、こうしている間にも次の被害者が出るおそれがある。

自宅に矢守ひろかがいる保証はないが、行動する他に残された道はないだろう。


 教室を飛び出すと、怪奇探究部のメンバーたちは再び夢見ノ森団地へと急いだ。


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