飴ちゃんだけは豊富だよっ
探索者ギルドにて、退屈そうに資料を読んでいたギルド長の元に、受付の女性が訪れていた。
受付の女性はギルド長の舐め回すような視線に嫌悪感を抱きながら、感情を乗せず淡々と話し始める。
「ギルド長、報告します。第二層にて災害が発生した様です」
「災害? どんな?」
「探索者の話では、砂丘から黒い山が現れ、直ぐに消えたらしいです」
「なんだそれ。被害は?」
「現在調査中です」
「ふーん。過去に事例は?」
「二十年近く前に似たような事案は発生しています。その時、視察に訪れた当時のエリスタ領主……グラン・エリスタがしばらく行方不明になった様ですが……資料に書いてあるのはそれだけでした」
「よく調べたね。君のような優秀な人材が居て俺は幸せだよ」
「…失礼しました」
受付の女性はギルド長の軽口を流し、業務事項だけを述べて去っていった。
ギルド長はふんっと詰まらなさそうに鼻を鳴らすと、受付の女性が置いていった数枚の資料を手に取り読み始め、二枚目の資料を呼んだ瞬間……嫌そうに口が歪んだ。
「よりによって……もうすぐファイアロッドで学院の研修かよ。人数は希望募集だから二十くらい、か。少ないにしても……あ? なんでアルセイア王女も来るんだ?」
研修まで一週間……本来ならばもっと早く知っていなければいけない案件だったが、ギルド長は受付から嫌われているせいでギリギリの報告になっていた。
♀×♀×♀×♀×♀
……
……
「へ、へ……へっぷしっ! ぐおぉ鼻痛いっ!」
くしゃみで起きるとか、なんか切なくなるね。
なんか身体中砂まるけで気持ち悪いし……あっ、イシュラは?
辺りを見渡す……真っ暗だな。光の魔法で辺りを照らすと、パタリと倒れているイシュラの姿があった。
急いで駆け寄り、状態を確認……良かった、生きている。
イシュラも砂まるけ。
顔とか汗に砂が引っ付いて良い感じにブスだな。
って私も砂まるけだからブスなのだがね。
とりあえず、イシュラが起きるまで待つか。
イシュラの顔とか拭いてあげるか。暇だし。
濡らしたタオルでふきふき……うん、美人に戻った。眼帯も砂を取って、着け直す。
……口の中に砂とか入っていないかな? あーん。大丈夫みたいだ。
……とりあえずチューして良いかな? いやだってめちゃくちゃ色っぽいのよ。
悩ましい表情……時折洩れる声……この歳でこの色気、憧れるわぁ。
という事でこっそりチューしてみる。
「……ん、ん? ルクナ……?」
「あっ、ごめんついついチューしちゃった。私達、生き延びたみたいだね」
「……そう、みたいだね。でも、ここは何処?」
チューに関してはスルーしてくれて助かったよ。咎められたら気まずいからねっ。
友チューってやつだからスルーで良いよねっ。
イシュラっ、唇に指を当てて私の唇を凝視しないでっ。微笑まないでっ、なんか恥ずかしいからっ。
それになんだよその色気っ、いつの間にそんな色気を手に入れたっ! 羨ましいぞっ!
「さっきの奴の中、かな?」
「じゃあ、私達お腹の中で消化されて死ぬの?」
「いや、そんな事は無いと思う。見て」
ライトを地面に向けると、何年も放置されているような探索者の資材やら武器やらなんたら……おまけに開けていない宝箱もある。砂丘の中にあった宝箱を呑み込んだみたいな感じか?
「色々あるね。少しは生活出来そうだけど、ここから出れなかったら駄目な訳か……どうしようね」
「まぁ探検あるのみじゃない? なんかここ懐かしいっていうか、変な感じというか……魔物のお腹の中というより、まるで迷宮の中みたいなんだよね」
「迷宮? もし迷宮なら、こんな激しい迷宮なんてあるの?」
「うーむ……じいちゃんがなんか言っていたような……あっ」
「なんか思い出した?」
「うん、大きな大きな魔物に食われたと思ったら、そこが迷宮だったんだーって……本当だったんだ」
父と母には秘密だぞーって言われていたから、素直に言わなかったけれど……そっか、もしここがじいちゃんの言っていた迷宮なら……じいちゃんも、来ていたのか。
なんだろう、こんな状況なのに、ワクワクしてきたよ。
「……なんか笑ってるけどさ、もしかして」
「うんっ! 攻略しよっ! じいちゃんが出られたんだ、だから出られる方法は必ずあるしっ!」
「いや、出る方法だけ探せば……ごめん、そんな眩しい笑顔を向けないでよ」
「先ずは、周辺に使える物があるか調べようっ!」
「そうだね。あっ、松明あるから手分けして探そ」
「うんっ。あっ、でも魔物とか居たら困るから離れ過ぎないでね」
魔物の中に魔物とか変な感じね。
噂に聞く移動型迷宮……狙って入れるものじゃないし、アースには悪いけれど、しばらくここで過ごそう。
どうせ帰還石も使えないから出られないし。
「あっ……」
「ん? どうしたの?」
「ごはん、どうするの?」
「……あっ」
私の収納カバンには、普通の飴ちゃんと可愛い飴ちゃんと高級飴ちゃん。
食べるもの、無いじゃん。
第一層だけと思って気を抜いていたよ。
「まぁ、少しくらいならなんとか、なるね」
「うん……イシュラ、ごめんね。こんな事になってさ……」
「何言ってんの。言ったしょ、ルクナと二人なら怖くないって」
「いしゅらぁー」
よし、先ずは出口を探さなきゃ。




