害は無いけれど、ちょび髭がねぇ……
宝箱も売れるので、アースが宝箱を収納した。アースの収納は私の鞄タイプとは違う指輪タイプ。壊れやすいけれど一定容量までは大きさ関係無く収納出来る優れもの。まぁ結構なお値段だ。
私の鞄タイプは鞄の口に入る大きさの物しか入れられない安物……安物と言っても一千万ゴルドしたよ。もちろん自腹だよっ! 可愛いの欲しいよちくしょう!
一億あったら安い指輪タイプ買えんのによぉ!
『今日はこのくらいにしておく?』
「はい……あっ、帰る時どうするのです?」
『帰還石で帰れるよー』
「帰還石……あっ」
買うの忘れていたな。
看板のあった魔法陣の部屋ににょきにょき出てくる魔法石で、魔物が周囲に居ない時に使える。一個千ゴルドで販売していた筈……
『私の帰還石、使う?』
「是非、欲しいです」
『どうしよっかなー。帰ったら二人きりじゃなくなるしー』
「ほっぺにチューでお願いします」
『……えへ、良いよ』
はい、ほっぺにチューで帰れるなら安いもんさ。
チュー。
そういえばアースは二人きりなのに私を襲わないな。恐らく制約があるのだろう。
「帰るので脱がないで下さい」
『暑いなぁって思って……ね』
「そう言って全裸にならないで下さい。スタイル良すぎて胸が苦しいです」
『もっと見て見て』
「アースさんって肌綺麗ですよね。精霊特有なんです?」
『お手入れしてるよ。精霊でも肌荒れってあるし……こことか特に』
「おー、綺麗ですねー」
『でしょ? 舐めても、良いよ?』
だーめ。
制約はなんとなく聞いた事があった……その日私がした事以上の事は出来ない、かな。ほっぺにチューは今されたから。尻触るのも今されたし。
口のチューは危ないから駄目だな。
ペロペロはもっと駄目。
「じゃあ一度帰りましょう。服着てください」
『うんっ、チューしてもらったから満足っ』
アースが服を着て帰還石を掲げると、ばしゅんと視点が切り替わり、最初の魔法陣の部屋に転移していた。原理が気になる所だけれど、きっとわからないから良いや。
「エルフィさんの家に帰りましょうか」
『うんっ』
部屋を出ようとする所で、おっさんが前に立ちはだかった。
横にずれると通せんぼ……なに? 喋れし。
「超位探索者はお前らか?」
「『いいえ』」
「……探索者証を見せてくれ。俺はギルド長の使いだ」
『「いいえ」』
「見せてくれないと出入り禁止にする、と言ったら?」
「えー、私達脅されていますよ」
『エルフィにチクっちゃおっか』
チラチラと金色のカードを見せて、マクガレフだよアピール……おっさんの眉がピクリと動いて、こっちに来いと顎で出口を指した。
なんか上から目線で嫌な感じ。
まぁ喧嘩しても良いのだけれどまだ攻略するまでは大人しくしていよう。
仕方がないのでおっさんについて行く事にした。
「帰ったらシャワー浴びたいです」
『一緒に入ろうねっ』
迷宮の入り口を出て、直ぐ横に探索者ギルドがある。
三階建ての建物で、一階は受付と救護室とか軽食屋とか色々あり、二階は上位以上の受付と休憩室、三階はギルド長の部屋や会議室といったスタンダードな造り。
その三階に案内され、ギルド長の部屋と書かれた場所に到着した。
おっさんがノックをすると、中から入って良いぞという声が聞こえ、案内されて中に入った。
中にはまたおっさん。
ちょび髭がきもい……ちょび髭と呼ぼう。
「ようこそファイアロッドの大迷宮へ、超位探索者の御二方」
「どうも……アースさん、私……ちょび髭が受け付けません」
『前のおっさんと変わったみたいね。前はアゴ髭おっさんだったよ』
「おぉ、まさかマクガレフ殿の弟子かな?」
「違います」
「おや? では何故マクガレフと名乗っているのかな?」
「保護者です」
なんか喋り方がきもい。
わざとらしいというか、ねっとりというか……
「そうかそうか、マクガレフ殿の関係者と聞いて是非お話を伺いたいと思ってね、よもやこんなに若いのに超位とは驚いた」
「はいどうも、じゃあ帰りますね」
「まぁまぁこれも何かの縁だ、少し依頼を受けてくれないかな?」
「えー、嫌です」
「なに、悪い話じゃない。第四層のルートが知りたくてね……エルフィ・マクガレフ殿に聞いて欲しいんだよ。第五層への道を」
第五層に行った事のある人はエルフィさんだけ、と言う事か。
つまり第五層に行く手段がわからないから教えてって事ね。
アースをみると少し悩む素振りを見せ、小さく顔を振った。
『無理ね、エルフィは適当に進んだだけだからルートなんて知らないわ』
「その適当も何か感じる事があったからだと思うが? 些細な事でも良いから聞いて来て欲しいんだよ」
「それを聞いて攻略するのです?」
「まさかっ、第五層にはまだまだ貴重な宝が眠っている筈……それを確認したいんだよ」
「やっぱりお宝ですか」
『良いんじゃない? 聞くだけなら出来るし』
「本当かっ、なら探索部隊の指揮をとって貰うから話を聞き次第ここに集合してくれ」
『指揮? 私達が?』
「もちろんだっ、第五層に行くんだろ? それなら人数が多い方が……ひっ!」
『なに勝手に決めてんの? 殺すよ?』
殺しちゃ駄目よ。
威圧もだーめ。
勝手に話を進められたら怒るのも無理はないけれど、つまりお宝が欲しいから私達に取ってこいという事ね。
それは嫌ね。
「交渉は決裂という事で、帰ります」
「まっ、待てっ! 迷宮に入れなくしても良いんだぞっ!」
「良いですよ。他の迷宮を攻略するだけなのでファイアロッドに拘りはありません」
『違う超位迷宮に行こっか。目的は他でも望みはあるし』
「脅されたってエルフィさんに言えば、エリスタ領主が血相変えて謝りに来ますかね?」
『エリスタ領主なんてお飾り領主じゃないの。この国の王に謝って貰えるレベルじゃない?』
謝られてもなぁ……とりあえず交渉は決裂した訳だし、帰ろう。
っと、案内のおっさんが通せんぼ、邪魔よ。
「説明が足りずに済まない……よく考えて欲しいんだかこれは国の為なんだ。ここだけの話、軍の装備を迷宮産の武具で揃えようという計画がある。それに協力できたらお前達の評価も上がるし、一生金に困らない生活だって出来る」
「その武具は、何の為に使われるのです? 魔物の氾濫ですか?」
「そう、だな。いらない武具も高値で買い取るし……悪い話じゃない。それなら二人で攻略を進めても良い」
「おい勝手に決めるなっ、ギルド長は私だぞっ!」
「はぁ…ギルド長、この方は精霊王様ですよ。下手な交渉は身を滅ぼします」
「なっ……精霊王?」
知っていたのね。
まぁ入る時に精霊王って言ったか。
はっはっは控えおろー、私は一般人だぞっ。
「それなら不要品を買い取ってくれるという事で良いですか?」
「あぁ、対価は払う」
「じゃあとりあえずこれは幾らで買います?」
土の杖を出して見せてみた。おっさんが少し考え、五十万でどうだと言ってきたので、少し高い値段で買ってくれるのは今の所本当だと判断。王都で売ればもっと高いけれどやり取りが面倒だからね。
不要な武具を買い取るという取引は成立、かな。
まぁ不利益になるならもう来なければ良いし……このちょび髭はちょっと怪しいな。一応報告はしておこう。




