王都で謎の奇病が流行っているらしいぞっ
「うーん……早速依頼が多いなぁ」
依頼主匿名で解呪の薬に、喉に良い蜂蜜、霊薬やら秘薬やら。声に良いとされる物はなんでも依頼になっている。
討伐者達も依頼ボードを見て首を傾げているし、情報が出回るのが早いのか、貴族達の行動が早いのか解らないけれど……ルナードに結び付ける人は、その内出てきそうだなぁ。
「ルナード? 何か依頼受けるの?」
「やぁセリア、今日の依頼は不思議だなぁって思ってさ」
「あー…ちょっと良い?」
セリアに連れられ、いつものテーブルに座る。今日も変わらず地味な雰囲気満載で、今日は弱セリアかセリアかよくわからないな。熟練しているのか、見分けが付かなくなってきたよ。
「何か知っているの?」
「まぁね。これでも情報通なのよ」
「ふーん、じゃあ私の悪評も知っている訳ね」
「まぁ、ね。随分派手にやっているみたいじゃない」
「らしいね。内容は知らないけれど」
「そうなの? 四年はあまりだけれど、二年は嫌でも聞くんじゃないの?」
「知らないよ。学院に行っていないから」
「えっ……辞めた、訳じゃないよね?」
「辞めてはいないよ。ちょっとお休み中」
「そうなんだ……理由は、聞いても良い?」
心配してくれるなんて、嬉しいよね。
学院で心配してくれるのは大人だけだし……余計に嬉しいな。
「つい先日、学院行きたくない病に掛かって……今も継続中、かな」
「なによそれ。でもなんで今日王都に居るの?」
「セリアに会えるかもしれない日は王都に来るよ。他の日はエリスタに引きこもりだねー」
「嬉しいんだけれど、別に無理して私に会わなくても良いのよ?」
「無理はしていないよ。まぁ無理して毎日学院に行っていたから、週一回王都に来るくらいが丁度良いかな」
「そっか、エリスタで引きこもりって何をするの?」
「普通に迷宮に籠るよ」
「……危なくない?」
「いや、もう何回も攻略しているから、慣れたもんだよ」
「……ルナードって、攻略者、なの?」
攻略者は迷宮攻略をした人の事を指すけれど、王都には居ないのかな?
エリスタには結構いるらしいけれど……いやあんまり居ないか。ご近所さんのエルフ親子が攻略者なのは確か。
「うん、一応エリスタ一族だからね。今度攻略しに行く?」
「いや……私は、難しいかな」
「そう。いつか行ける日があれば、ね」
「そう、だね」
「ところで、話は戻るけれど依頼の情報ってどんな話?」
「あぁ、貴族の子に奇病が発生したの。なんでも声が出なくなったみたいで」
セリアの耳まで届いているって事は、結構な騒ぎになっているんだな。
どうするかなぁ……呪いを勝手に解いたら解いたで母とエルリンちゃんに怒られそうだし……
「ふーん、何か罰でも当たったんじゃない?」
「そう言う人も中には居るの……だって、奇病は二年生に集中しているし、ルナードの噂の人も中には居るみたいだし……もしかしたら何か知っているかなって思ったんだけれど、ね」
「……奇病は、実際に見れば解ると思う。運が良ければ治せるし」
「本当? 実はさ、知り合いの妹が奇病にかかっちゃって……見てくれたら、嬉しいなって、思ったんだけれど……」
「……誰?」
「えっと、セイラン・オレイドスって解るよね?」
セイラン……やっぱり大丈夫じゃなかったな……シルフィードは、最低って言っていたのを拾ったのかもしれないって心のどこかで感じていた。
セイランは、治してあげたい。
「解るよ。見ても良いけれど、セイランは私を本気で嫌っている。だから会う事は難しいと思う」
「えっ……そうなの? えー……どうしても、駄目?」
「うん、ルナードは嫌われ者だからね。まぁ私の知り合いに頼むよ。その人なら治せると思うし……セイランは何処に居る?」
「多分、家……かな。じゃ、じゃあその知り合いに後で学院に来て貰えるように出来る? 私の知り合いを向かわせるから」
「出来るよ。場所は、学院前にしようか」
「ありがとう……無理言って……」
「貸しって事で……あっ、私からもお願いがあるんだ」
「なに? なんでも言って」
「あのおまじない……もう、使わないで欲しいんだ」
「どうして?」
「……あんまり、好きじゃないから」
「そうは、言っても……辛い時に楽になるし……」
「いや、良いや……忘れて。じゃあ……私は知り合いに頼んでくる」
「う、うん……お願い……」
セリアと別れ、学院へ。
鞄の幼女が何か言いたげだったけれど、見なかった事にして零組へ行き……眼鏡を外して幼女本体の部屋を覗くと……誰か来客中みたいなので、そのまま出て来た。
学院前で待っていると、走ってくる黒髪の男子……やっぱりカサンドラか。
「ルナ……クルルっ、来てたのか! あのさっ、昨日セイランが!」
「あー、事情は解っているので、セイランの所に行きましょうか」
「えっ、もしかして……クルルが、知り合いの知り合い?」
「きっとそうですね。私も知り合いの知り合いの知り合いの妹を見てやってと言われただけですので……」
「は、はは……なんというか、世間は狭いというか……ありがとう、俺じゃわかんなくてさ。案内するよ!」
「あの、ゆっくり行きません? 心の準備って必要なので」
まだ私のメンタルは復活していないのだよ。まじで、最低が時折顔を出してくるんだ。
「そんな事言ってる場合じゃないんだ。頼むよ……」
「はぁ……わかりました」
カサンドラの案内で、貴族街の奥……城の近くにある豪邸に到着した。
でけー。
すげー。
豪華ー。
「お帰りなさいませ、御坊ちゃま」
「ただいまっ、セイランは?」
「お庭にいらっしゃいます」
「ありがとっ、クルルこっちだ」
大きな庭だなぁ……手入れも良くされていて、きっと専属の庭師がいるんだろうなぁ。
木がウサギさんの形だぁ……良いなぁ……
綺麗な庭を歩いた先、青い花が沢山咲いている所に、セイランが居た。
この花は、スカイウィッシュ…かな。
「……」
セイランがカサンドラと私に気が付き、私に何かを言おうとして……声が出ずに下唇を噛んで俯いてしまった。
巻き込んで、ごめんね。
「セイラン、知り合いの知り合い? がクルルに頼んでくれたって! クルル、見てやってくれないか?」
「はい……セイラン、少し、良いかな」
「……」
本当に、喋られないのか。
これ、かなり強力な呪いだぞ……さすがは大精霊と天才エルフの力。普通の方法じゃ難しい。
シルフィードの石は手の平で隠しておけば、バレないかな……まぁバレても構わないんだけれど、ね。
セイランの喉に、触れると……何かが解けた感覚。簡単、だな。
「セイラン、何かが解けたのが解るかい? 急に喋ったら喉を痛めるから……一度水を飲んでから一言ずつ喋ってごらん」
「……」
セイランはこくんと頷いて、水を飲みに家に走って行った。
「じゃあ、帰ります」
「えっ、もう終わり? 治ったの?」
「はい、泣きそうなのを我慢しているので失礼します」
「あっ、おいっ! クルル!」
もう、用は無い。
セイランを治せたから……帰ろう。
「にい、さん、く、ルル、は?」
「……帰ったよ」
「……お、れい、言え、なかっ、た……ぅっ、ぅぅ……」
「俺が言っておくから、セイランは休んでいてくれ」
「いやぁ、わだじ、クルルに、あい、たい」
「……わかったよ。はぁ……追い付けっかな……」




