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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
王都学院編

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エルリンちゃんの魔法測定

 

 王都学院の門から見える場所に魔法学校の校門があった。

 眼鏡をしていないので、他の生徒からチラチラ見られている。見せもんじゃねえぞー。


「今日は魔法測定を見るだけだと思うから。多分……」

「そうでしたか。測定方法は学院と同じですか?」


「そうね、毎年面白い子が居るから退屈はしないわよ」


 面白い子……エルリンちゃんは面白いに分類されるのだろうか。

 校門をくぐり魔法学校の外観を眺めながら訓練場に到着すると、一年生の生徒たちがわいわいして楽しそうに話している。

 エルリンちゃんは居るかな……あっ、女子達が固まって話している中心辺りで楽しそうに笑って……良かったね友達出来て。羨ましいよ。

 正直地味眼鏡の時のエルリンちゃんって友達出来なさそうだったけれど、あのエルリンちゃんはノーマルエルリンちゃんだから大丈夫か。

 ノーマルエルリンちゃんとは、私が居ない時のエルリンちゃんで、お淑やかな雰囲気の女子の中の女子……と、母が言っていた。


「私の幼馴染が一年生なんですよ」

「……どの子?」


「あの可愛いエルフです」


 クベリアさんが手元の資料を見て、引き攣った顔で私を見た。

 なに? どうしたの?


「……エルリン・マクガレフ。嘘……マクガレフ……エルフィ・マクガレフの……娘?」

「はい、エルフィさんの娘ですよ。エルフィさんって有名なんですか?」


「……えぇ、エリスタに居たのね。精霊魔導士エルフィ・マクガレフは……エルフの国で最高峰の大魔導士の称号を持っていたの。はぁ……これは勧誘合戦が凄いわよ」

「勧誘ってこの年でもあるんですね」


 色々な所がエルリンちゃんを狙うと言う事か。

 でも全部断りそうではある……


「これから魔力測定に入りまーす。それでは三組から」

「「「はーい!」」」


 元気いっぱいな挨拶で、新品の魔法使いのローブを着た一年生が測定器の的に向かって順番に魔法を撃ち始めた。

 懐かしいねこの感じ。

 そういえば去年私が穴を開けた的は、中間測定で王子っぽい奴が魔法を撃って壊れた。逸材みたいな感じでちやほやされていたね。王子っぽい奴は特に興味無いからその様子は完全カットさ。


「ウォーターボール!」

「おー、三百。凄いですねー」


「クベリアさん、私が来た意味あります?」

「まぁ、見ていたら解るわ」


 私達の他にも視察をしている人達は居る。

 他の学校だったり、中等部とか高等部の関係者、魔法研究所とか、商団とか、全部で五十人くらいは居るんじゃないか? 恐らく将来の進路の斡旋とかスカウトとかだろう。


「あら、クベリアじゃないの。最近どう?」

「別に、どうもしないわ」


「ふーん、その子は?」

「教え子」


「へぇー……」


 なんかケバいお姉さんが話し掛けてきて、ジロジロ見られた。

 その後ろに居る中等部っぽい男子は詰まらなさそうに私をチラリと見て、一年生を眺めていた。

 ケバいお姉さんはふふっと笑って戻って行った……なんだったんだ?


「今のケバいお姉さんはなんですか?」

「ケバ……くくっ、あれは中等部時代の同級生でね、何かと私に突っかかって来ているケバいお姉さんよ」


「大人になっても大変なんですねー。あの男子はケバ姉さんの生徒ですか?」

「恐らくそうじゃないかしら? あっ、たまに視察関係者も魔法を見せてという時もあるから、その時は宜しくね」


「……それが狙いですか。まぁクベリアさんの頼みですから良いですがね」

「ありがと」


 ぼーっと眺めていると、そろそろエルリンちゃんの出番が近付いて来た。

 もちろんさっきからエルリンちゃんは私をチラ見しまくっている。我慢して空気を読んでいるから、こっちには来ないと思うけれど……この会話も聞いているのだろうか。


「それでは、エルリン・マクガレフさんお願いします」

「マクガレフ?」「まさか」「この学校にマクガレフがいるのか」


 ざわめきが凄い。

 エルフィさんは有名なんだな。母の親友で、いつも眠そうにペットのドラちゃんの散歩をしているお姉さんというイメージだけれど……ドラちゃんは緑色のドラゴンで、何度か食べられそうになった事がある。


「エルフィ・マクガレフの娘か、楽しみね」

「エルリンちゃんの才能は私より上ですよ」


「そうなの? あなたより上って……」

「エルリーン、見ているからねー」


 エルリンちゃんの頭がグルッと動いて私を見て、ブンブン手を振って嬉しそう。話し掛けるまで我慢していたんだね。私も手を振って、頑張ってーと笑ってあげた。


「クルルさまが私を見ている、クルルさまが私を見ている、クルルさまが私をみている、クルルさまが私を見ている、私だけを……見ている! 精霊召喚・シルフィード!」


 エルリンちゃんが詠唱しながら両手を掲げると……頭上に緑の長い髪のお姉さんが現れた。サラサラロングのナイスバディなお姉さんの登場に、周囲のざわめきが激しくなった。

 大人だから大精霊さんだな。普通の精霊は子供の姿で、大精霊は大人、その上の精霊王と呼ばれるのは、なんか豪華な服を着た大人だったな。例外で幼女の精霊王も居るけれど。

 エルフィさんとお茶していた豪華な服のおっさんとか見た事あるし。


「あれは、なんだ?」「精霊……いや、大精霊……」「あんな、子供が……」


『エルリン、なにも私を呼び出さなくてもいいだろ?』

「クルルさまが私を見ているの! シルフィード、あれ壊して!」


『クルル? あぁ、エルリンのラブな人間か』


 ……なんかちょいちょいってされた。来いって事? 凄く嫌だけれど、大精霊って上位の存在だから断れない。

 仕方が無くシルフィードの元へ行くと、頭を撫でられた。


「初めましてシルフィードさん、エルリンがいつもお世話になっております」

「もうっ、クルルさまったらっ」

『こちらこそエルリンと仲良くしてくれて感謝している。これは礼よ』


 シルフィードが何かくれた。緑色の……石?


「ありがとうございます。じゃあ、私からは……何か無いかな……」

『何か髪留めちょうだい』


「あっ、はい、どうぞ」

『全部欲しい……わぁ可愛い……ごほんっ、で、ではまた会おう』


 シルフィードが消えて、測定器がバラバラに崩れ落ちた。

 ……鞄の中の髪留めとシュシュを全部持っていかれたな。欲しかったんだね。


「クルルさまぁ、なに貰ったんですか?」

「緑の石?」


「あっ、これシルフィードの……友達の証ですよっ」

「今の溜めはなにさ。まぁ貰っておこう」


 エルリンちゃんの頭を撫でて、クベリアさんの所へ戻ると……さっきのケバ姉さんが凄い勢いでこっちに来た。


「あなたあの子と知り合い⁉︎ 紹介しなさい!」

「えっ、嫌です」

「やめなさいよ、みっともない」


「マクガレフの娘よ⁉︎ これは早く手を打たないと……」

「クベリアさん、勧誘が激化してエルリンちゃんが怒って王都に来なくなったら……大精霊を敵に回す事になりそうですね」

「……マズイわね。精霊信仰の人達が城に押し寄せるわ」


「精霊信仰?」

「精霊を神と崇める人達よ。今回の大精霊召喚で騒ぎが起きないと良いけれど……いや風の大精霊だから貴族も騒ぐわね」


「そうですか……風って確かこの国主流の属性ですよね」

「そうなのよ、風の王国と云われるくらいだから……風の大精霊は特別なのよねぇ……」


 エルリンちゃん張り切っちゃったんだね。

 友達に凄い凄いって言われて照れている光景を見ると、欲にまみれた大人がそれを壊す事になる……このケバ姉さんみたいに。


「そ、それでは視察の方もせっかくですから魔法測定をされていきませんか?」

 ……シーンとしている。そりゃ大精霊の後にやるのは気が引けるか。


「クベリアさん、行って来て良いですか?」

「ふふっ、良いわよ」


「はいはーい! 私やりまーす!」


 今ここで大人達を黙らせないと、エルリンちゃんが私みたいに捻くれてしまう。

 可愛い子は、守らないとね。でもどうするかなぁ……


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