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精霊の友として  作者: 北杜
五章 伯爵家騎士編
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3 最前線の治療

「何が怪我人の治療だ!子供なんかの手などいらん!」


怒鳴られた。オレってこの砦に来てから嫌われてない?何かした?


「この病院は私の縄張りだ!騎士様であろうが貴族様であろうと勝手な事はしないでほしい!」


このセリフはどこかで聞いた事ある気が……、伯爵家の元料理長の言葉に似ているな。

どんな場所にも縄張りはあるんだな。この世界の職業意識は地位すらも上回るのか?それともオレが子供だから舐められているのか?


「ですがアーノルド様から言われて……」

「アーノルド様からの許可は得ている。砦の為に!怪我人の為なら私の言葉を優先すると!」


でもね、そのアーノルド様から言われてオレはこの病院で怪我人を治療するんだけど……。


「全く、子供が回復魔法の使い手?冗談に付き合っている暇はない!」


確かに信じる事は難しいよね。目の前で回復魔法を使おうか?


「ここには何百人もの怪我人が居るんだ!人手が足りないのだぞ!」


オレは人手要員なんだけど……。人手が欲しければ担当者に言えよ!


「子供が騎爵位のマントを着て怪我人の治療?騎士なら最前線に行ってこい!」


つばを飛ばしながら喋るなよ!キタネーな!医者ならもっと怪我人の事を考えろよ!汚い病院だな、衛生管理はしているのか?


「貴族の世間知らずのガキが遊びに来るところじゃないんだぞ!」


あ!ケビンさんの右手が剣を持とうとしている。顔を見ると凄く真っ赤にして怒っている。

そんな事を気にせず顔を真っ赤にして喋る医者。もっと周りを見ろよ。隣の人が怒っているぞ!


「この砦にはお前の様な子供など代わりはいくらでもいる!騎士なら城壁に行って敵でも倒せばいいだろう!」


……代わりはいる?騎士だったら敵を倒せと?お前はオレに何を言っている?


「行っても震えて邪魔になるだけだろう。早く家に帰って遊んでろ!」


……邪魔?家に帰れ?遊んでいろ?


「貴様!トルク隊長に……」

「うるさいぞ!忙しいのだ!お前達なんかに付き合ってられん!早く城壁に行ってこい!邪魔だ!」


剣を抜きかけるケビンさんの手を止めて、何も言わずに病院を出る。


「トルク殿!アーノルド様の所に行き、病院の責任者を罰してもらいましょう!爵位を持つ者に言うべき言葉ではありません!」

「ケビン!全隊員を呼べ!今すぐだ!」


ケビンさんがオレの言葉を聞いて驚き、即座に行動を開始する。

家に帰れだと?帰る家は何処だ?焼かれた辺境の村の家か?それとも母親とオレを捨てたクソ親父の家か?

代わりはいる?砦に数少ない回復魔法の使い手の代わりがいるのか?

世間知らずのガキ?遊びではない?騎士なら城壁に行けだと?

そうかよ!城壁に行ってやるよ!


「トルク隊長!全隊員そろいました!」


城壁の方が騒がしくなったな。戦闘が開始したようだ。


「オレのやる事は怪我人の治療だ。お前達にはオレの補佐をしてもらうぞ!」


最前線に行ってやる!


「最前線で怪我人を回復するからその間は無防備になる。その為に矢から守る為に盾になってもらうぞ!」

「病院で治療するのではないのですか?」

「騎士として前線に立ち、怪我人を治療する。武器庫から大盾も装備してオレと怪我人を守れ!」


全員の顔がこわばる。普通なら怪我人を後方に移動させて安全な所で怪我の治療をするのだが、矢の降り注ぐ場所で怪我の治療をするのだからな。


「危険です!怪我人を後方に移動してから」

「オレは騎士として最前線で戦うぞ!準備に取り掛かれ!解散!」


ケビンさん以外は全員武器庫に盾を取りに行った。ケビンさんはオレの近くで護衛をする。


「トルク隊長、怪我人のために包帯とか怪我を洗う水が必要ではありませんか?」


頭に血が上ってすっかり忘れていた。

包帯は……怪我を回復させるから必要ないな。

怪我を洗う水は……水魔法があるから大丈夫だが桶を持って行こう。

ケビンさんに桶を頼むと近くの兵に頼んで手配をしている。

あの病院の責任者め!なにが子供の遊びだ!こっちは親や男爵様達と別れて来ているのに!

あームカつく!代わりはいくらでも居るだと?だったら呼んで来い!代わってくれよ!そしたらオレも王都に行けたのに!


「隊長!準備が整いました」


ケビンさんの声に反応して隊員達を見る。みんな大盾を用意している。なかにはドアみたいな板を持っている隊員もいる。矢が当たる心配はないだろう。

ろう。


「よし!戦場に行くぞ!みんなは怪我人とオレを守ってくれ」

「了解しました!」


全員の声を合図にオレ達は城壁へ向かう。

あれ?なんか忘れている様な事が……。そのうち思い出すかな。

子供を先頭に大盾や板を持っている兵達。広場で待機している兵達から異様に思われながらオレ達は最前線に向かった。

城壁の上では矢合戦で怪我人が増え続ける。

兵達はオレを守る為に盾と板を広げて矢から守っている。


「怪我人はここに来い!治療するぞ!」


ケビンさんの大声に近くの負傷した兵が来る。矢が刺さっているな。矢を抜くのはケビンさんに手伝ってもらおう。


「矢を抜くぞ!その後治療するからな!」


ケビンさんに矢を抜いてもらいオレは直ぐに回復魔法をかける。十数秒で怪我を癒し怪我とオレを見て感謝した。


「ありがとうございます。魔法使い様!」

「怪我したらすぐに来い!他の者達にも伝えるんだ!」

「はい!」


怪我が治った兵は礼を言って前線に向かった様だ。


「トルク隊長!次の怪我人です!」

「よし!かすり傷は後回しだ!重体の者を優先して連れて来い!」

「了解しました!」


次に足に矢が刺さっている兵が来たので回復魔法で治す。

その次は腕に矢が刺さった兵が来たので回復魔法で治す。

次に来たのは体に矢が刺さった兵が来たので回復魔法で治す。

次々と来た怪我人を治した。

体に矢が刺さっている重体患者が来たときは他の兵達と協力して治す。

なかには死んでいる兵を持ってくる者が来る。死亡した兵には治療は無理だ!回復魔法は生きている人間の再生領力を促進させ健康な状態に戻す魔法だから死人には効かない。


「頼む!治してくれ!同郷の者なんだ!村には待っている両親と彼女がいるんだ!」


無理なものは無理だ!説得する時間が無駄だから他の人間に頼んだ。

……どのくらいの怪我人を治療しただろうか。どのくらい時間がたったのか?いつの間には怒声や悲鳴は勝利の雄叫びに代わっていた。

今日ほど回復魔法を使い続けた日はない。

体がキツイ。めまいがする。気分が悪い。

ケビンさん、後は頼んだ!

オレは体調不良で宿舎で休むから。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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