表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊の友として  作者: 北杜
四章 男爵家使用人編
69/276

2 領地巡回

2/3 サブタイトル修正

自分の身だしなみに気を付けるこの頃。髪がだいぶ伸びたので今度母親に切って貰おうかと思っていた矢先、エリーさんから男爵様が呼んでいるから執務室に来てくれと言われた。

男爵様が居る執務室に行くと部屋の中は男爵様とレオナルド様がいる。なんの用かな?


「レオナルドと一緒に兵を連れて男爵領の見回りをする。その際、帝国に襲われた村々を回る予定だ。今回、レオナルドの補佐としてトルクも同行するように」


オレは使用人ですよね?それも使用人の仕事なの?


「今日までは伯爵家から来た兵達が領地や国境の見回りをしていたが帝国兵は発見されていない。おそらく男爵領から他の領地に行ったようだ。だが男爵領の壊滅した村々の状況を調べないといけない。そこで計算が得意なトルクにも同行してもらう事にした。税の計算や男爵領の人口の把握、領地内の収入・支出の書類の作成の手伝い。それから兵達に美味い食事を頼む」


絶対に使用人の仕事じゃないよ。文官でも料理はしないよ?それ以前に子供の仕事じゃないと思う。


「出発は明日の朝だ。準備は着替えだけで良い」


それも急ぎだし、早いよ。仕方ないから急いで準備を整える為に部屋に戻った。ちなみに現在の時刻は夕食を終えてまったりしていた夜です。仕方ないから母親とマリーに用件を言って支度をする。と言っても着替えだけだからそんなに時間はかからない。

しかし本当に着替えだけでいいのか?他に持って行く物はないかな?

母親曰く。


「そうね、念のために護身用の武器は持って行った方が良いわね。あと体を拭く布も持って行きなさい」


確かに体を拭く布は用意してなかった。サンキュー母親。あと護身用の武器はレオナルド様に借りよう。

マリー曰く。


「お土産忘れないでね」


マリーよ。オレは仕事で滅んだ村々を回る予定だ。お土産は無いぞ。




朝、朝食を済ませて玄関先に行くと子供と大人が言い争っている。


「レオナルド、オレも行くぞ。トルクも行くし大丈夫だ」

「ダメです。エイルド様は留守番です」

「何を言っている。せっかく旅の用意をしたのに無駄になるじゃないか」

「遊びではないのですよ」

「もちろん遊びで行くつもりはない。トルクも行くのだからオレも行ってもいいだろう」


……エイルド様も行く気満々ですか。もしかしてオレに前日に言った理由はエイルド様を連れて行かないためかな?


「どうしてトルクが行くと知っているのですか?言ったのは昨日の夜ですよ」

「トルクと遊ぼうと思って後を付いて行き執務室で聞いた。大変だったぞ。ポアラやドイルに内緒で旅の用意をするのは」


ハァと頭を抱えるレオナルド様。本当にどうしたもんやら。

あ、男爵様達が来た。騒ぎを聞きつけた様だ。アンジェ様もいる。


「エイルドに見つかったようだな。それも準備は万全のようだ。仕方がない、レオナルドよ。エイルドも領地の見回りに行かせてやれ」

「貴方」

「少し早いが領地の見回りをしても良いだろう。それに時間が過ぎると見回りの予定がずれる」

「今回は壊滅した村々の見回りです。よろしいのですか?」

「今回の見回りでエイルドが何か得る物があるならそれで良い」

「分かりました」

「エイルド。勝手な事をしない様に。レオナルドの命令を聞いて絶対に一人で行動するな。お前は将来、爵位を継がなければならないのだ。その事をしっかりと心に刻め。そして何を思ったか帰ったら父に教えろ。お前が今回の見回りで見た事・感じた事を私に伝えなさい。分かったな」

「はい、父上」


エイルド様は笑顔で、レオナルド様とアンジェ様は諦めたようだ。オレは頭を抱えたよ。絶対にオレが世話をしないといけないからな。しかし男爵様は言った。


「トルクはレオナルドの仕事を手伝うから。お前の世話は出来ん。仕事中はトルクに話しかけるな。エイルドには兵を十人付けて、目を離さないようにする。いいな、絶対に兵達から逃げるな。常に兵達の側にいろ。勝手な事をするな。分かったなエイルド」

「わかりました」


笑顔で答える。絶対に分かってないな。兵達から逃げるだろう。エイルド様はそんなお子さまだ。


「それから見回りから帰ったら夕食後も勉強をする事。見回りに行って勉強をおろそかには出来ないからな」

「わかりました」


悲しそうに答えるエイルド様がオレを見た。その目はオレも夕食後の勉強会に参加させるつもりだ。


「トルク。エイルドが何か言ってきても拒否しても良い。お前が命令を聞くのはレオナルドであってエイルドではない。兵達の命令も嫌なら拒否しても良い。だがエイルドに何かあったら助けてくれ。頼むぞ」

「わかりました」


よっしゃ!拒否権を貰ったぞ。これで不当な命令を聞かなくて済む。やったぜ。


「レオナルドも頼むぞ」

「わかりました。それでは出発します」

「うむ、気をつけてな」

「ハッ」


レオナルド様が屋敷を出ると三十人ほど兵士が玄関先で待機していた。そして急遽決まったエイルド様の世話役に十人補充して屋敷を出た。

屋敷を出たら馬と馬車が待機してた。馬車には食料が入っている。これが今回の旅の食料か。

先頭のレオナルド様は馬に乗りオレはレオナルド様の隣を歩いた。


「今回は私が管理していた村を回る。お前が住んでいた村も調べる予定だ。しっかり頼むぞ」

「はい、ですがエイルド様はどうしましょうか?今は大丈夫と思いますが後で我儘を言ってきますよ」

「クレイン様からも言われているから大丈夫だろう。兵達もいるから心配ないと思いたい」

「その兵達から逃げると思います」

「……その場合は兵達に罰が下るな」

「そしたらエイルド様が兵達から嫌われますよ。男爵家のご子息が兵達から嫌われるのはいかがなものかと」

「……なにか良い方法はないか?」

「……あったら苦労しません。相談もしていないでしょう」

「出来れば今回の件でエイルド様が成長してくれたら良いのだが」

「エイルド様を信じましょう」

「……そうだな。何か策を思いつくお前を信じよう」


オレに投げないでくれ。嫌と言えない性格が悲しい。伯爵家の元料理長の様な奴ならケンカを売るように嫌と言えるがレオナルド様や男爵様達には言いづらい。

はぁ~、子供の教育は大変だからな。それも主の子供だ。甘やかしてはダメ、厳しすぎてもダメ、暴力もダメ。拒否権は有るが大変な旅になりそうだ。願わくば何事も無い事を願う。




オレ達の見回りは順調に進んだ。

最初の村に着いたのは男爵家を出てから二日後。男爵家から近いこの村は賊の被害には遭ってない。レオナルド様が村長と村を回りながら畑の出来具合を聞いたり、賊の事を聞いたり、他の村々の事を聞いたりしている。オレもレオナルド様の隣で聞いて今年の税の計算を算出して二人に話したり、村人と雑談したり、畑を耕している人に今年の出来を聞いて農園で培った経験で作物の出来具合を予想したり、畑作業を手伝ったり。

あれ?どうして畑作業を手伝っているんだ?


「坊主、手慣れているな」

「男爵家の農園で少し働いていたので」

「広い畑らしいな。それにいろんな種類の野菜を作っているとか」

「麦は勿論、野菜や果物も作ってますよ」

「あと酒も造っているとか」

「それは知りません。子供に酒の事を聞かないで下さい」

「ガハハ、確かにそうだな。それであっちにいる子供は誰だ?」


あっちの子供?エイルド様かな?だがエイルド様には兵達が側にいるはずだが?

振り向くとやっぱりエイルド様だ。それも兵達と追いかけっこをしている。エイルド様が逃げ出して兵達が追いかけている様だな。なにをしているのやら。

村長たちと話が終わりオレ達は次の村に向かった。その途中の道で死体を見つける。どうやら男爵家に行く途中に力尽きた人のようだ。

オレは土魔法で地面に穴を掘って死体を土葬した。兵達も手伝ってくれたのでそんなに時間はかからないが。だが道端で亡くなっている人が多い。オレはレオナルド様に許可を貰って兵達に埋葬を手伝ってもらった。

エイルド様は死体を見たら気持ちが悪くなったらしく休憩をしている。オレも腐っている死体は気持ち悪いが自分が許可を貰って埋葬をお願いしたのだから我慢をして頑張った。手伝ってもらった兵達は平気みたいだ。理由を聞いたら前に戦争に参加しているとの事。多少は慣れているそうだ。それを聞いて良い人材を派遣してくださった男爵様に感謝した。帰ったら男爵様に伝えて褒美を貰えるように言わないとね。

途中で死体を食べている魔獣に出会い、襲ってきたので兵達が倒した。魔獣に食べられていた死体も土葬してついでに魔獣も穴に埋めたよ。

道を進みオレ達は賊に襲われた村に着いた。畑は焼かれて、家は壊され、死体が放置されている。人間はここまで酷い事が出来るかと思い周りを見渡す。エイルド様は近くの木に向かい吐いた。レオナルド様や兵達は怒りで震えている。

その後オレ達はこの村の状況を確認するべく手分けして作業に当たった。死体を集めて埋葬して、村の状況を確認した。畑を見て回ったり、村の周辺を調べたりした。辛うじて破壊されていない家の中を掃除して休めるようにした。

エイルド様は気分が悪くなり、掃除した家の中で休んでいる。兵達が一緒だから大丈夫だろう。

水を使おうと井戸を見たら井戸の中に村人らしき死体がある。兵達と一緒に井戸から死体を上げると水死体みたいで体が膨れて気持ち悪かった。口を押え吐きそうだったが何とか我慢した。流石に戦争経験者も気持ち悪かったらしく顔が青くなっていた。

死体を埋葬して花を供えてオレ達はこの村で休みを取った。食欲も無く死体がある所で休めるかと思っていたが疲れていたので直に寝れた。朝になりオレ達は朝食を作って次の村に向かった。

次の村も賊に襲われた村だ。オレ達は前の村同様に死体を埋葬して村を確認した。その次の村も、その次の村も。

そしてオレが昔住んでいた村に着いた。母親やマリーが生まれた村だ。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ