4 初戦争後日談
百話突破!
お久しぶりです、トルクです。
やっと体調が良くなりました。体がだるくて三日間体調を崩しており、やっと治りました。
自分に回復魔法を使おうと思ったが、見舞いに来たヴィッツさんに止められた。
オレが体調不良の原因は魔力の枯渇。回復魔法を使い続けた結果、魔力が少なくなり体調を崩したのだ。
魔力の枯渇は初めてだったから知らなかったよ。
四日目にして動けるようになり副隊長のケビンさんと一緒にアーノルド様に会いに行く。
「ご迷惑をおかけしました」
「うむ、先日の戦争では怪我人を治してくれ感謝するぞ。お前が治した騎士や兵達が礼を言っていたぞ」
「仕事なので当然の事です」
「砦が作られて初めての被害数だ。戦死者が二人しか出なかった。よくやってくれた!」
そうか死人が二人も出たのか。一人は知らないがもう一人は故郷に親や恋人がいたと言っていた人だろう。もう少し早くオレの所に来てくれたら、死んでいなければ生きていたかもしれないのに。
「どうした、騎士トルク?顔色が悪いな?お前は戦死者を二人しか出さなかったのだ。もっと誇れ!」
ここら辺は認識の違いか。二人も死なせたと、二人しか戦死者が出ていない。
これがこの世界では常識なのだろうか?それとも戦争中だから価値観や考え方が違うのだろうか?
……常識なのだろうな。平和な国で生活していた前世のオレと戦争中の砦の責任者とは価値観も生き様も違うのは当たり前だろう。
常識とはいえ慣れたくないな。
「それでトルクよ、ヴィッツとアルーネの件だが」
ヴィッツさんとアルさんの事?なんだろう?
そういえばアルさんは戦争中に居なかったな?どこで何をしていたのかな?父親のヴィッツさんの所で仕事をしていたのかな?
「アルーネは罪を犯し、その父親のヴィッツも責任を取ると言っている」
アルさんが罪を犯したのか?何をしたんだ?
それにヴィッツさんも親だから責任を取るってなにをしでかしたんだ!
「騎士トルクの従者としてのあるまじき行動。従者の仕事の放棄。騎士に対して名誉を傷つけた罪。そして上官侮辱罪だ」
従者としての仕事の放棄?名誉を傷つけた?上官侮辱罪?
仕事の放棄くらいしか思い当たる点がないのだけど……。名誉を傷つけたとか上官侮辱罪ってなんだよ?
「アルーネも父親であるヴィッツも責任を負い、アルーネは放逐、そしてヴィッツは次の戦争で最前線に赴き戦死すると言っている」
重い!重すぎる!子供が文句を言った程度だよ。放逐とか戦死とか重すぎる。判決に異議も申し立てます!
「重すぎます。軽くて良いです!というか罪はありません!」
「罪は確定しているし、二人が罰を願い出ている。罰の軽減ならトルクが二人を説得すればいい」
アーノルド様がベルを鳴らすと部屋にヴィッツさんとアルさんが入る。
「騎士トルク、娘のアルーネは職務を放棄し、騎士であり私の恩人でもある貴方を侮辱したのだ。子供だから酌量の余地があるとしても放逐で良いだろう。万が一の事を考えてアルーネには自決用の毒物も用意する」
いや重過ぎるでしょう。それに自決用の毒物ってなんだよ!アルさんも自分がした事を思い返して恐怖なのか顔が青い。
「私も親として責任を取る。娘の教育を間違い騎士トルクに恩を仇で返した罪は死罪が妥当だろう。しかし私は騎士として名誉ある戦死を希望する。騎士トルクよ!私の願いを聞いてくれ!」
「聞けるか!放逐とか戦死とか罪が重すぎる!」
「しかし!」
「しかし、じゃねー!せっかく回復したのに勝手に死ぬな!罪を犯したなら生きて償え!それに子供を放逐なんてするな!ガキなんだからケツ叩いて説教して終わりだ!」
「アルーネは従者としてあるまじき行動とったのだ。父親として……」
「だったらあるまじき行動をとった訳を聞いたのか?聞いてからケツ叩いて説教して終わり!」
ハアハアハア、病み上がりなのに大声を出させないでくれ、疲れた、ベッドで休みたい。
その後、アルさんはどうしてオレを嫌っているのか少しずつ喋った。
なんでもオレの顔が王都の学校で姉に危害を加えようとした馬鹿貴族に似ていて、砦では従者達から嫌がらせを受けていた。襲われそうになった騎士のせいで知らない者の従者になる事が嫌になり、そして子供が騎爵位持ちの騎士でコネを使って爵位を貰ったとの噂で怒りを感じたらしい。
……うん、オレは特に関係ないな。八つ当たりと勘違いだね。
父親のヴィッツさんがキチンと説明をしておけば問題なかったのに。
そしてアーノルド様が従者達を見ていなかったのも問題だね。
「……病院の医師からは変な目で見られるし、無駄に体を触ってくるし」
……他にも嫌なことがあったんだね。変態から付きまとわれたり、セクハラされたり大変だったんだね。
なんかごめん、同情するよ。
あ!ヴィッツさんが怒っているな。アーノルド様も怒っている。
「その変な目で見られた医師は誰だ?」
「父上の怪我を見ていた医師です」
「分かった」
子供に、それも子爵家の御息女にセクハラするとは。その医者の命は長くないな。ヴィッツさんの怒り具合から考えて死罪か放逐だろうか?
「次にトルクよ。今回どうして城壁で怪我人を治療していたのだ?」
あれ?ケビンさんから聞いていないのか?ケビンさんを見るが首を縦にふり頷くだけで何も言わない。
「アーノルド様に言われて病院に行ったのですが、「何が怪我人の治療だ!子供なんかの手などいらん」から始まり「この病院は私の縄張りだ!」と。それから「それに子供が回復魔法の使い手?冗談に付き合っている暇はない!」と言われ信じてもらえず。そして「子供が騎爵位のマントを着て怪我人の治療?騎士なら最前線に行ってこい!」と言われたくらいです」
「それから「この砦にはお前などの代わりはいくらでもいる。騎士なら城壁に行って敵でも倒せばいいだろう!」と言っていました」
ケビンさん補足ありがとう。
「その医師には罰を与えるとしてどうして城壁で怪我人の治療をしたのだ?その医師に言われたからか?」
売られた言葉を買ってムキになりました。
「騎士として城壁で怪我人を治しました」
「馬鹿者!」
怒られた。普通そんな所で怪我人を治療しないからな。
「爵位を持った騎士が!ただの医者に言われてその通りに行動するとは何事か!騎爵位を持つ者として心構えが足りん!」
数日前まで平民だったので、と口に出そうになるが出さない。
「騎士として前線に出た心構えは良しとしよう!だがお前のとった行動は爵位を持つ者に言わせれば心構えも配慮も足りん!」
配慮も足りないの?ケビンさん達の事?確かに危ない目に合わせたな。
「お前はバルム領主サムデイル伯爵に仕える騎士だろう!その騎士が平民の言いなりになるとは情けない!お前のとった行動は他の騎士達をも愚弄するものだ!」
……そんな事ないと思うけど。
「お前には騎士としての心構えを説く必要がある。騎士とは…………」
「そして騎爵位を持つ者として…………」
「砦での騎士として…………」
「バルム領内においての騎士の在り方は…………」
「婦女子の為に我々は…………」
「領民の安全の為に取る行動として…………」
「アルーネ!お前も聞いておけ!貴族として子爵家の女子として…………」
「騎士としての在り方は…………」
「爵位を持つ者として…………」
……どのくらい話すの?同じような話が続くんだけど……。途中からアルさんにまで説教しているし。立っているのが辛くなってきた。そろそろ限界なんだけど……。
「…………それが騎士として、貴族としての在り方だ。トルク!アルーネ!分かったか!」
「ハイ!」
オレとアルさんはそろって返事をする。これで説教は終わりか?
「うむ!良い返事だ。貴族として…………」
「王都の騎士の者達ときたら…………」
「前に来た王都の使者などときたら…………」
「騎士にとしての在り方は…………」
いつになったら終わるの?立っているのがキツイ。あ、回復魔法で回復すれば良いのでは?駄目だ、魔法を使うと光でバレそうだ。
「…………という訳だ。二人とも貴族としての心構えを忘れないように」
「ハイ!」
再度二人そろって返事をする。もう説教は終わりだよな!
「おや?もう夜か。少し話しすぎたな」
少しじゃねえ!何時間話したと思っている?アルさんもフラフラだぞ!
「ではトルク、今日はもう休んで良いぞ。病み上がりに無理させてすまなかったな」
そう思うなら長時間説教しないでくれ。
「アルーネは心を入れ替えトルクの従者の仕事をするように。ヴィッツ、ケビンご苦労だった」
「では私達は失礼します」
そういって部屋を出てオレ達は倒れるように座ろうとするが……駄目だ!騎士としてこのような場所に腰を下ろす事は出来ん!
最後の力を振り絞って館を出る。
外に出て回復魔法を使う。自分に回復魔法を使って体を癒した。
「騎士トルク、私にも回復魔法を頼んでも良いか?」
「隊長!出来れば私もお願いします」
「騎士トルク、従者の身分ではありますが私にも治療をお願いできればと存じます」
三人を治療して体を癒す。
「騎士トルク、アルーネの事だが……」
体を癒したヴィッツさんがアルさんの事を言う。そのアルさんがビクッとする。なんだ?
「ご恩情により放逐は止め、後で説教をする。その後のことをお願いしたいのだが」
その後のこと?なんのことでしょう?
「アルの尻を叩くことだ。罰としては私よりも騎士トルクがした方がより反省すると思うのだか頼んでも良いだろうか?」
「それは父親である貴方の仕事でしょう」
「いやいや従者を躾けるのは主である騎士トルクの役目だ!」
「いやいや婦女子に手を挙げるのは騎士としていかがなものかと。それは父親である貴方が」
「いやいや父親だから情けをかけるかもしれん。やはり騎士トルクが心を鬼にして」
「いやいや私はまだ子供で歳下だから情けをかけるかもしれない。父として厳しい態度をとって」
「いやいや…………」
「いやいや…………」
「いやいや…………」
「いやいや…………」
「では二人で叩いたらどうでしょうか?」
ケビンさんが折衷案を出すが、オレ達の会話に加わったのが運の尽き!
「では代表でケビンさんに叩いてもらうのはどうでしょうか?」
「なるほど!では私達は正しく打てるかどうかを見定めよう!」
「どうしてそうなるのですか!子供を叩くなんて大人として出来ません」
「これは罰だ。子供の為には仕方がない!」
「ではその父親である騎士ヴィッツが叩くべきです!」
「なにを言うか!それなら主である騎士トルクが……」
「それを言うなら大人の二人が……」
……アルさんを無視して体罰を押し付ける三人。
最終的にアルさんの尻を叩く者はアルさん自身で決めてもらい、叩く人は父親の役目になった。
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。




