48:望まぬ再会
◆ ◆ ◆
その日、エルダークの国民たちは――特に前線で戦っていた軍隊や魔女たちは――奇跡を目の当たりにした。
エルダークの各地を襲っていた魔獣は一斉に、まるで強烈な電撃を喰らったかのように一瞬にして炭化したのである。
魔獣と至近距離で交戦中の者がいて、そのままだと巻き添えになりそうな場合は、見えない手で薙ぎ払われたかのように魔獣だけが遠くへと吹き飛んだ。
呆気に取られている人々の前で、その魔獣は他の魔獣たちと同じ運命を辿った。
たとえ魔獣がどんな姿かたちをしていようと、小さな山ほどもある巨大な魔獣も指先ほどの小さな魔獣も分け隔てなく、電撃魔法は一匹残らず焼き尽くした。
「……な、なんだこれは……」
「まるで神の御業だ……」
「《国守りの魔女》様か?」
「そうだ、きっと《国守りの魔女》様だ! 《国守りの魔女》様が我らを守ってくださったのだ!!」
魔獣と命懸けで戦っていた人々は、口々に《国守りの魔女》の偉業を讃えたのだった。
◆ ◆ ◆
(――よし。全部死んだわ! お仕事終わりっ!!)
結界魔法を通して国中の様子を見て回ったルーシェが次に目を開いたとき、陽は完全に落ちて夜が訪れていた。
場所は変わらず、王宮の庭である。
(げ)
場所は変わらないが、ルーシェを取り囲む人間の数が倍増していた。
ルーシェを迎えるために王城から出てきたらしく、デルニスと護衛の騎士たちがいた。
リチャードとリナリーも展開中の騎士たちに混ざって立っている。
「おお、目が覚めたかルーシェ! 久しぶりだな」
「他人同士の会話には適切な距離があるでしょう、デルニス様。必要以上にルーシェに近づかないでください」
デルニスが近づこうとしてきたため、ジオはルーシェを下がらせて一歩前に出た。
「なんだ貴様。この私を誰だと思って――」
「ジオ。わたしは大丈夫だから。デルニス様と話をさせてちょうだい」
ルーシェはぽんとジオの腕を叩き、ジオの身体の陰から出た。
「お久しぶりですね、デルニス様。お元気そうで何よりです。ところで、パトリシアは国外へ追放されたと聞きましたが、彼女はいまどこにいるのですか?」
《人形姫》だった頃の自分なら優雅にスカートを摘まんで一礼していたところだが、いまとなっては彼に下げる頭など持っていないし、無駄話に付き合いたくもない。
だから、挨拶は最低限にして聞きたいことをそのまま彼にぶつけた。
「安心したまえ、あの悪女は《黒の森》に送られた。《黒の森》は魔獣の巣窟だからな、今頃は魔獣に喰われていることだろう。良い気味だ。この私を謀り、真の《国守りの魔女》を他国へと追いやった罪は重い」
笑うデルニスを見て、ルーシェはますます嫌悪感を募らせた。
「……パトリシアは仮にもあなたの恋人だった女性でしょう。それなのに、あなたはパトリシアの不幸を笑うのですか」
「? パトリシアが私の恋人だったのは昔の話だ。私を騙した悪女の末路など知ったことではない」
デルニスは不思議そうだ。
彼は情け容赦なくパトリシアを切り捨て、そのことに毛ほどの罪悪感も抱いていない。
(自ら望んでパトリシアを《国守りの魔女》にしたくせに、いざパトリシアがその器ではないと知ったら全責任をパトリシアに押しつけて逃げたのね……)
奥歯を噛み締め、硬く拳を握る。
(こいつと結婚しなくて良かった。本当に良かった。パトリシアには感謝しないといけないわね)




