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第38話:氷ゴーレム、組織のボスの正体を見抜く

「スタニック! ようやく来たか! コーリ殿が我が輩の病気を治し、オーロラを探し出してくれたぞ! 今、ちょうど重要参考人のジルと研究員たちを捕らえたところだ! お主は研究所で薬を作っていると聞いたが、ジルの嘘か?」

「ええ、全てジルの虚言です。私はずっと宮殿の地下で秘薬の調合を進めておりました。研究所にはない薬ですからね。この者の企みを見抜けず申し訳ありません、国王陛下。おそらく何かしらの方法で国王陛下に毒を盛り、混乱に乗じてオーロラ様を誘拐したのです」


 淡々と述べられた言葉を受け、ジル所長の顔は青ざめる。


「そんな……スタニック閣下……がっ!」


 スタニック閣下が手を翳した瞬間、金属の縄が生み出されジル所長や研究員たちの口は猿ぐつわを嵌められた。

 もはや、ジル所長一同は呻き声しか上げられない状況となり、スタニック閣下は国王陛下を促す。


「さあ、国王陛下にオーロラ様、一度宮殿に帰りましょう。その様子ではお元気だと思いますが、もうお休みになられた方がいいです。コーリ殿、本当にありがとう。君のおかげで、この国の危機は救われた。後できちんと礼をさせてほしい。では……」

「ちょっと待ってくれ。スタニック閣下に聞きたいことがあります」

「……なんだい、コーリ殿」


 振り向いたスタニック閣下の目は、夕陽に不気味に光る。

 どこか、獲物を射貫く獰猛な動物を思わせる視線だった。


「ジル所長が俺とリゼリアを捕まえるため騎士団を大規模に動かしたのだが、あなたはいつ知ったんですか?」

「ついさっきだよ。国王陛下が病床に臥した後、私はすぐ宮殿の地下に行って秘薬の調合をしていたからね。まさか、ジル所長が勝手に騎士団を動かすとは、さすがの私も予想できなかった。今回の事例は大いに反省したい」

「王立魔法研究所の所長には、騎士団を動かせる権限があるのでしょうか?」


 そう尋ねると、スタニックは固まる。

 完全に俺の方を振り向き、あくまでも笑顔で説明した。


「コーリ殿、君もわかっている通り、今回は緊急事態だった。国王陛下の暗殺未遂にオーロ様の誘拐ともなれば、研究所所長のジルでも騎士団を動かせてしまったんだよ。この命令系統についても再考の必要があるね」

「どうして、騎士団長の命令じゃなかったんですか? スタニック閣下の次席なのに」


 王都で観光をしているとき、モンセラートが騎士団の組織形態について教えてくれた。

 大騎士団長――スタニック閣下を頂点としたピラミッド構造で、彼の下には部隊毎の騎士団長が控え、さらに副団長、部隊長、一般騎士と続くのだ。

 その組織構図に王立魔法研究所の所長は入っていない。

 モンセラートは部隊長で、部下はみな公爵家に仕える信頼の厚い騎士だとも話していた。

 俺は警戒しつつ、隣に立つ彼女にそっと尋ねる。


「モンセラート、騎士団が研究所所長の命令で動く緊急の事例は今まであったか?」

「……いや、ないな。言われてみれば奇妙な話だ。なぜ、騎士団長ではなくジル所長がコーリを捕まえに来たんだ?」


 あの逮捕劇は最初から仕組まれていたとしたら。

 自分の息がかかったジル所長に、俺の拘束を命じたとしたら。

 俺は迅速かつ注意深く、国王陛下の周りにいる騎士を見る。

 昼間、俺とリゼリアを捕まえにきた人間が多数混ざっているのを確認して、確証を得たような気分だった。


「国王陛下、オーロラ様を連れてこちらに来てください。モンセラートの部隊は安全です」

「コ、コーリ殿? いったい何を言っておるのだ? 安全というのは……っ!」

「《氷壁》!」


 咄嗟に、国王陛下とオーロラ様を氷の防壁で守る。

 金属の剣が深く食い込んでおり、一瞬でも遅れていれば2人の首は飛んでいたかもしれない。

 俺はすかさず国王陛下とオーロラ様を摑んで、数mほど後退する。

 剣を握る人間が"彼"だとわかった国王陛下は、信じられないような声を上げた。


「な、何をやっている! 錯乱したのか……スタニック!」

 

 剣を生み出した人間は、宰相のスタニック閣下だった。

 凍てついたような冷たい目で国王陛下とオーロラ様を見る。

 そのまま、静かに呟いた。


「皆の者、今ここに幕は上がった。もう我慢することはない。己を解き放て」


 スタニックの言葉を合図にしたかのように、彼の周囲にいる騎士が剣を引き抜いた。

 一直線に国王陛下とオーロラ様に襲い掛かる。

 すかさず、俺は大規模な氷の弾丸を放った。


「《氷弾時雨》!」


 直径30cmほどの氷の塊を放ち、騎士たちを吹き飛ばす。

 これだけでも異常事態なのに、また別の一角で騒ぎが起きた。

 ジル所長を捕まえていた騎士たちが捕縛を解除し、一団となって周囲の騎士を襲っているのだ。

 仲間だったはずの騎士同士が戦うという、極めて歪な乱闘が始まった。


「コーリちゃん、何がどうなっているの!」

「なぜ、王国騎士団が戦い合っているのだ!」

「怖い……怖いよ……」

 

 リゼリアも国王陛下もオーロラ様も狼狽える。

 答えは1つしかない。


「スタニック、お前こそが"黒葬の翼"のボス……導師だな?」


 乱闘の中心には、俺の問いにゆっくりと頷くスタニックがいた。

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