第33話:研究所にて、2つの人影が企む(Side:???)
騎士団の宿舎でコーリとリゼリアが眠りに就いた、ちょうどその頃。
王立魔法研究所の奥にある所長室では、2つの人影――椅子に座した者と、立った者――が静かに何事かを相談していた。
片方の声は所長のジルだ。
「……という次第で、コーリは現在騎士団の宿舎におります。いかがなさいましょうか。お望みとあらば、直ちに同胞に襲撃させてコーリを殺させますが……」
立位の人影が話すと、座位の人影は強い怒りを滲ませた。
「騎士団の根城の中で襲撃をかけるだと? ……貴様は愚者か?」
「い、いえ、申し訳ございません」
「愚者なのか? と聞いている」
会話が途切れ、重い沈黙と重圧が室内を支配する。
耐えかねたように、立ったままの人影が口を開いた。
「……私は愚者でございます」
「我らの同胞は騎士団の奥深くまで根付いているが、全体数としては組織に属さぬ騎士が多いだろう。コーリの抹殺と引き換えに、我らは正体を明かすことになる。ここまで進んだ計画を水泡に帰すつもりか? ……貴様、組織を裏切ったわけではあるまいな?」
「め、滅相もございません!」
座位の人影に重く言われ、立位の人影は慌てて弁明する。
組織の最高権力者である“彼”の命令は絶対だ。
もし仮に死を宣告されたら、この場で殺されてもおかしくはなかった。
立位の人影が押し黙る中、座位の人影は淡々と告げる。
「策は用意してある。貴様はただ言われた通りに行動すればよいのだ。間違っても、独断で行動はするなよ? もし組織に損害が発生したら、そのときは貴様を八つ裂きにせねばなるまい」
「しょ、承知いたしました。必ずや、導師の仰せのままに行動致します」
立位の人影が震えるように頭を下げると、ようやく退室を命じられた。
室内に残った座位の人影は、薄らと微笑みを浮かべる。
(魔物らしからぬ魔物……コーリ。ずいぶんと邪魔をしてくれたな。だが、それもここまでだ。この王都が貴様の墓場となる)




