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第26話:二人の衛兵、画策する

 大スタンピードが発生したアストラ=メーアの街で、コーリが名有りの赤サイクロプス――アルゴノスを倒したちょうどその頃。

 近くにある森の高台で、街の様子を窺う2つの人影があった。

 ともに単眼鏡でコーリの戦闘を静かに見ており、住民たちが喜びにあふれる光景を確認すると目から離した。


「……おい、赤サイクロプスが倒されちまったぞ。どうすんだ」

「う~ん、困った。ちょっと想定外だったね。あの氷クラゲ……いや、今は氷ミミックか。これだけの規模のスタンピードなら、あいつを確実に葬れるはずだったんだけどなぁ」


 2つの人影は、ライアンとパウロ。

 ダリオスに【魔物封印の書】を破壊するよう唆したアストラ=メーアの衛兵だった。

 もう一度単眼鏡で確認すると、コーリが街の住民に感謝されている様子がわかる。

 ライアンは乱暴に目から外すと、憎々しげに呟いた。


「チッ、あの魔物もどきめ。生意気に人間世界に入り込んできやがって。魔物なら魔物らしく討伐されてろってんだ」

「人語を介するだけでも珍しいのに進化までしちゃうのか。報告を聞いたら導師はどんな反応をするかな。逆に実験材料として喜ぶかも」

「んなわけねえだろ。俺たちに届いた命令を忘れたのか? コーリの"抹殺"だ。任務失敗と聞いたら、俺とお前が代わりに抹殺されるかもしれねえな」


 ライアンの雑な物言いに、パウロは苦笑いを浮かべる。

 

「まぁ、そこは水蛇の実験成果で相殺してほしいところだね。僕たちが頑張って管理したから、なかなかの実験記録が入手できたんだ。"紫呪の源"は投与条件が極めて厳しい。個体ごとに投与量や投与間隔を厳密に設定しないといけない。そもそも、コーリ抹殺は追加任務だったのだから、僕たちの本来の仕事ではないんだよ」

「おう、頼むから導師に直接言ってくれよな。俺は怖くて言えねえけど」


 2人は王国騎士団所属の衛兵でありながら、"黒葬の翼"のメンバーだった。

 導師から重要な実験――魔物の人工強化を依頼され、"ベドー霧森"の洞窟で水蛇を育てていたのだ。

 人工強化の方法は、"黒葬の翼"が開発した"紫呪の源"と呼ばれる薬物を投与すること。

 ライアンの軽口を聞いたパウロは、さらに苦笑いを浮かべる。


「直接はさすがに無理だよ。でも、水蛇の実験が好調だと知ったら、導師は案外許してくれるかも……。ほら聞いただろ、ネリファ村の計画がぽしゃった話」

「ああ、"紫呪の源"を人間に投与して病気にさせる実験な。コーリに妨害されて、導師はずいぶんとお怒りらしい」

「特に、対処方法を確立されたのがまずかったのだろうね。導師の目的達成をサポートするサブプランが潰されたのだから。薬が作られてしまったら、いくら病気にしても意味がないもの。……さて、もし導師が許してくれなかったら、そのときはそのときだ。甘んじて死を受け入れよう」

「ああ、しょうがねえか。いい暮らしさせてもらってんだもんな。まずは組織に合流しようや。とりあえず、北に行ってみるか。仲間がいるはずだぜ」

「そうだね、いつまでもここにいても良いことはない。……さようなら、アストラ=メーア。僕たちはここで死んだことにしておいてくれ」


 ライアンとパウロは荷を担ぎ、人知れず森の中に消えていく――。

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