教壇にだけは立ちたくなかった僕は 人生って何があるか分からないよねという話度★★★★★
「将来の夢」
授業で将来の夢を考える時間が何度かあった。
僕はその度、教壇に立つ先生を見ながら内心で。
「先生にはなりたくないなぁ」
そう思っていた。
僕は内気だし、誰かに教えることもあまり得意じゃない。
それに、先生はお仕事の中で、特にすごく大変そうだなぁって思って。
たくさんいる生徒ひとりひとりの名前を覚えないとだし、苦手な子がいても仲良く?しなきゃいけないし。
先生たちは僕たちより朝早く学校に来て、帰るのは夜遅くみたいだし。
夜遅くにお母さんと車で学校の前から何度か通ったことがあるけど、職員室や教室にまだ明かりがついていた。
そういうのを見ていると、先生にはなりたくないなぁって思ってた。
あれから10年後。
僕はスーツを着て、教壇に立っていた。
あんなに先生にはなりたくないなって思っていたのに。
僕は教師となり、教壇に立っていた。
なりたくなかった先生。
でも、ある先生との出会いで、先生になりたいなって思って。
気づいたら、先生になるために勉強して。
そして。
僕は現在、教壇に立っている。
なりたくなかったもの。
いつしか、そのなりたくなかったものは夢となり。
その夢が叶おうとしていた。
「初めまして─です。今日から君たちの担任をすることになりました。よろしくお願いします」
生徒たちが見つめるなか。
僕の夢が、叶った。




