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忘却 せつない詩度★★★★★
※これはとある物語の断片詩です。
最近、目が覚めると一瞬
なにかを忘れてる
何故か、そんな気がして
『なにか』というより
『だれか』か
しょぼしょぼした目を擦りながら
スマホに触れる
画面に浮かぶ、一件のメッセージ
誰かの名前
…?
あれ?
この人…だれだっけ?
知らない人…
いや、知ってる人?
だけど、わからない
間違いメッセージかもしれない
いや─────…
とにかく、その人のメッセージに触れる
するとそこには、昨日私とデートしたこと
「楽しかったね」とか「ご飯が美味しかったね」
とか、書いてあって
その文字を追ううちに、思い出す
昨日のことを
彼との記憶を
彼の記憶を
私には、大切な恋人がいるということを
「…また、だ」
時々、何故か記憶から彼のことが抜け落ちる
他の人のことは覚えてるのに
彼のとのことや
彼の存在そのものを綺麗さっぱり忘れてしまう
「また忘れちゃってた…ごめんね」
画面の彼の文字に謝る
泣きながら
彼にはまだ、このことは話していない
話せずにいる
一番愛する人の記憶だけが消える
なんて……




