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日清戦争 -48 襲撃艦隊

 清国艦隊 旗艦『済遠』 方伯謙

 清国北洋艦隊は残存している船を総動員して通商破壊に打って出ていた。

主力は『済遠』『平遠』『広丙』『福靖(広丙の同型)』

他砲艦4隻。

 戦闘能力の低い砲艦を連れているのは捕獲した船を回航するための船を必要としたため。この時点ですべての砲艦が各1隻の輸送船を連れて母港に引き返している。ただ速力が遅いので戦闘では役に立たないのだが。

「煤煙の数からして輸送船団。多いですね。目標の船団…噂の船団でしょうか?」

 通商破壊艦隊はもともと、4隻の砲艦を含んでいたが、拿捕した船を本国に回航するために分離している。その中で、上海から極秘出航した給炭船より石炭を補給した際、本国からの命令を受けた。

「日本は直隷決戦のために広島港に陸軍を集結させている。とのうわさがある。この輸送船団を捕捉、撃破セヨ」というものだった

 当然反発した。李鴻章は天津に上陸させたければさせたらよい。その上陸軍の補給線の襲撃を命じていた。しかし、李鴻章以外はその戦略を理解できていなかったようだ。

 その結果、方伯謙は本意ではない任務に出るしかなかった。そして勝たねば李鴻章の立場が危うい。

「敵には護衛がいるかもしれん。意図的か知らんが、護衛の情報が出てこぬ。」

 この輸送船団襲撃は命令によるものだ。上海から出航した給炭船による石炭補充の際に受けた命令だ。通商破壊ではない。

「艦長はどう思われますか?」

 方伯謙は本意ではないといった表情だ。そして彼の芽は冷静だった。

「ここで行っても上陸を防げるわけがない。護衛もいるだろう。議論すべきはこの艦隊がどれだけの護衛を引き連れていて我々は敵艦隊を撃破できるか否かだ。まあ無理だろうけどな。」

 副官が肩をすくめる。

「これはまた悲観的ですね。まあ、閣下からの命令を加味すれば我々は接敵できませんでしたというのが一番楽ですな。」

 しかしそれに異を唱える人間が…監視役がいる。上海から来た給炭船に乗っていた士官だ。階級こそ下だが、北洋艦隊の士官ではないうえに、主戦派の犬だ。

「それは敵艦隊を撃破セヨという陛下の意に反する行為です。報告させていただきますよ。」

 剣に手を伸ばしながら叫ぶ。

「君がそれをできる能力を有すならその剣で私の首をはね、君が艦隊の指揮をとればいいだけのことだ。私はそれを否定せん。」

 方伯謙の嫌味だ。犬は柄から手を放してすぐに責任を方伯謙に押し付ける発言をする。周りはそれを見てしらけ、方は無視して命じる。

「接近せよ。そして…敵勢力を確認次第、交戦を判断する。逃げ支度はしておけよ。無駄死には許さん。見張り台に向かう。」


 護衛艦隊 旗艦『松島』

「煤煙確認いたしました。第1遊撃隊第2分隊に確認の進路をとらせるように命令を出します。」

 伊東は首を縦に振るだけでそれに同意を示す。

「通商破壊されているという報告は受けている。4隻が定刻過ぎても未着となれば明らかだ。」

「敵艦隊の編制からして通商破壊の主力は『済遠』『平遠』『広丙』他砲艦4隻でしょうからそろそろ戦果十分でするだろうに…」

「それにしても伊東長官。アレをもって来るとは大胆なことされますね。」

「敵に敗北を植え付ける必要があるのだ。それにはアレが必要なのだ。」


 第1遊撃隊第2分隊旗艦 『浪速』

「『松島』より信号、『進路左舷前方の煤煙を確認せよ』とのことです。」

 通信兵が駆け込んでくる。

「回頭180度 増速。輸送船団後方から左舷に進出、敵艦隊追撃のために速力をためるぞ。『千代田』『和泉』に続行を命じろ。」

「早急に迎撃するには前に出る方がよいのでは?」

「高速艦がいないように偽装しないと、逃げられる。」


 『済遠』

 見張りの水兵が驚いている。艦長の方伯謙自らが前部マスト見張り台に上り、敵を見ている。

「敵艦見える範囲で巡洋艦3隻でかい主砲塔が3隻ともに見えるから有力なのは松島級3隻…」

 輸送船団左舷側で護衛している船が真っ先に見える。右舷側にいた第1遊撃隊第2分隊は隠れている。

「艦長!!中央 輸送船団中央付近!!見慣れた艦影があります!!」

 隣の副官が叫ぶ。犬は声を上げる余裕もない。

「定遠級…」

 方伯謙がその艦影を見てつぶやくしかなかった。


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