日清戦争 閑話-1 空と玉
野戦病院
「田中一等卒 何をしておる」
聞いてきたのは二宮衛生卒。田中一等卒はあおむけの状態で手にもてるほどの薄い木の板…のちの世にバインダーと呼ばれるような代物に相当するものに挟んだ和紙に鉛筆で絵をかいていた。
「衛生卒殿…えーと」
田中は衛生兵のほうを向く。
「そういえば名乗ってはいなかった。二宮忠八衛生卒だ。田中義三一等卒。」
その名前に驚きの顔を見せる。その名前は世界初の有人飛行機を飛ばしたかもしれない日本人の名前だったからだ。
「で何を書いておる。」
本題に移る。
「自分が襲われた様子…であります。私の目線ではいけません。新聞に載せてもらうために書いております。」
田中は答えるが、二宮はそれを取り上げる。
「おぬし!!死にかけたんだぞ!!しっかり休め!!」
そのままバインダーで軽く頭をたたく。
「返してください!!」
二宮は離れながらバインダーを見る。
「なんか見たことのある画風だな。」
頭をかく。リアルさを求めたというよりかは抽象化されている絵。独特な絵。
「『桜花』…」
つぶやいた言葉に二宮は記憶を思い出す。
「そうだ。『桜花』だ。あの絵に似ているな。」
「そりゃそうです…あれを書いたのは私と兄なのです。」
「そうじゃ…その時代を信じる。」
「そんな時代になればどうなるかな…」
のちにその様子を見た周りの人間は大きな子供2人が目を輝かしていたと語ったという
京都
「あれを再び作って戦場に送ってほしいと?」
「はい。川上参謀次長殿とは話をつけています。問題は操縦士ですが…」
「負傷兵には無理だ。製造現場の見学ぐらいはさせてやる…儂が行くしかあるまい」
「しかし…軍属では」
「話をつけるのは君だろ?」
「わかりました交渉します。」




