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日清戦争-03 嘘の国1

 1894年 6月11日昼 朝鮮 漢城(現ソウル) 日本国大使館 大使 大鳥 圭介

「伊地知少佐。君の隊はどうだ?陸軍の体面だけを考えて新兵ばかり20名押し付けられた」

 先遣隊を一時的に任されたのは先月末朝鮮南部への偵察を実施した伊地知 幸介砲兵少佐だった。任期は混成旅団到着まで。到着次第、20名は元の部隊に戻される。

「一人。一番若いのにいろいろ気が付くという若造がいます。」

 伊地知は答える。

「田中義三一等卒か。」

 どうやら知っているようだ。それもそのはず…大島は元は幕府側の軍人。その時対立した人間とのつながりがある。

「まともに教育を受けておれば十分士官として使えると考えます。しかも若い…戦死はさせられない部下ですね。」

 伊地知は評価するが大島は苦い顔をしている。

「情は移すなよ…死ぬときは誰でも死ぬ…幕末ではその年で戦死する者など大勢いた。」

 幕末を生き抜いた男…幕府側として戦い多くの仲間を死なせた男の言葉だ…重苦しい空気が漂う

「至急電報を送りたいです。『ケンニチカンジヨウキガシヨウバイノケツカヒドシ』です。」

 その空気に耐えられないのか本題を出す。

「なるほどな…田中一等卒の意見か。本国が理解できるか?」

 彼の特徴として独自の単語(未来の単語)を使用する。聞きなれない言葉…音だけで文字が想像しにくい場合があると聞く。先ごろ山本権兵衛の過去を「黒歴史」と表現したことには笑ったものも多い。

「はい。そのことのちの田中一等卒に問いましたところ、『防穀令の1件もあります。理解できぬものは無能です。』とのことです。」

 防穀令とは1889年,朝鮮で凶作を理由に実施された穀物輸出禁止令のことだ。日本人穀物商による米や大豆の買い占めと,その年の不作により朝鮮の農村は食糧危機に陥ったために発令された。この時、予告期間が不足したために結果として日本商人が大打撃を受けた。その損害賠償請求について外交問題となったが全額の回収はできなかった。

「歯に着せぬ口の悪さだな。陸奥外相(後世に腹黒・口の悪さで知られる。)を思い出す。最小の電文で裏の意味を与えるとは。文に美しさはないが、実務上問題はない。わかった。」

 その場で伊地知は笑い出す。

「田中は防穀令を亡国令といっておりました。商売には信用第一それがなくなった場合、その国では取引に際して障害が出る…とのことです。確かに口が悪いですね。」

 その時大鳥が考え事をする。

「信用を人質にするとは…似ているな。先日の千島艦裁判についての攻め手に…」

「海軍からの情報では田中という水兵の意見が発端だそうです。気になってカマかけしましたところ、海軍に志願している実の兄がいるそうです。多分同一人物でしょう。」

「海軍からの情報?」

「我々は呉から『和泉』で来たのです。」

「そうか…兄弟そろって優秀か…だが優秀なのに水兵とは訳アリか…もったいないな。」

「そうですね。2人分の推薦状を書くのであれば私も署名する気です。話が来たらご連絡ください。」

「わかった。話はそれだけか?」

「田中が言うにはこの動きには何者かの策動があると読んでいます。なんでも情報は伝える側の利益が含まれている。それを読んで判断しなければならないとのことです。」

 その言葉もその場を考える姿勢に変える。

「つまり日本人への反感によって利益を得る人間がいるということか。」

「おそらくです。」

「もう手遅れだな。だが、今後に生かすべきだな。ますます奴をこのまま死なせるわけにはいかなくなったな…」

「それで…朝鮮政府はなんと?」

「反乱は終わった…よって早急に帰国されたし…とのことです。」

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