11. 蹂躙
エトウは鍵を使って子供たちとガイオスを解放した。そして、これから自分がやるべきことを確認していく。
子供たちを連れて逃げるのはリスクが大きい。鍵の置いてあった部屋に隠れていてもらい、古城内の戦力を減らした方がよさそうだ。
「ガイオスさん、あなたの冒険者ランクは?」
「C級だ」
「ガイオスさんが、手こずりそうだなと思った敵はいますか?」
「一人いるな。兄貴と呼ばれていた男だ。おそらくナイフ使いで、かなりの腕だと思う」
「俺はB級冒険者のエトウといいます。これから子供たちを一旦この部屋に待機させて、城内の掃除をしてこようかと思っているのですが、ガイオスさんはどうしますか?」
「分かった。じゃあ、俺はここで子供たちの護衛につく」
「それでいいんですか? 俺が騒ぎを起こしている間に、逃げることもできると思いますけど」
「ふん! それじゃあ、格好がつくまいよ。せめて子供くらいは守らせてくれ。それよりも、そっちは大丈夫なんだろうな、エトウさんよ」
「いざとなれば、加減なしでこの古城ごと吹き飛ばします」
「……あんた本当に何者なんだ」
ガイオスは呆れたような顔でエトウを見た。それに対して、エトウは自分の言葉をガイオスがすんなり信じたことに驚く。
「俺の言ったこと、信じたんですか?」
「その魔力の量と質。さっき見せた魔力制御と雷魔法。俺の危険信号がビリビリしてる」
ガイオスは鼻から長く伸びたヒゲを指差した。
「へぇー、獣人にはそんな便利な機能があるんですね。ところで、この地下室には他に出入口がありますよね。スレイプニルの体ではあの階段は使えないでしょう?」
「ああ。階段を挟んで向こう側の通路に、外へと通じる搬入口がある。城内の掃除がある程度済んだら、階段を使えなくしておいて、搬入口から出るのもいいかもな。外に出た後、城壁に沿っていけば、すぐに城門だ」
エトウたちが奥の部屋で話をしているとき、通路で声があがった。なかなかもどらないエトウたちを迎えに来た者がいるようだ。
エトウは掃除用のブラシやモップの先端を折って、木の棒を数本作った。その一本を自分が持ち、残りはガイオスや年上の子供たちに持たせる。
「敵を減らしてきます。大丈夫。見ていれば分かります」
エトウはそう言って部屋を出ていく。
エトウは長い通路を走って一気に距離を詰めると、雷魔法を付与した木の棒をなぎ払った。
棒の先から飛び出した雷撃が男たちの体を襲う。次の瞬間、彼らの動きが止まり、バタバタと地面に倒れていった。
その中にはチュール商館の奉公人もいた。この際、区別はしていられない。全員を近くの牢に入れて、ガイオスに鍵をかけてもらう。
「それじゃ、行ってきます」
「おう。気をつけろよ!」
子供たちも期待をこめた目でエトウを見つめている。彼らにしっかりとうなずいたエトウは、階段を上がっていった。
エトウが一階に到着すると、死角から矢が飛んできた。補助魔法のプロテクトが矢を弾く。
どうやら地下の騒ぎに気がついて、待ち伏せしていたようである。
次々に矢が飛んでくるが、どれも力のない矢ばかりだった。
本職の弓士はいないと判断したエトウは、矢をプロテクトで弾きながら部屋の中央に走り出た。
そして雷魔法を付与した木の棒を頭上で回転させる。するとエトウを起点にして、雷の渦が周囲の者たちに襲いかかった。
誰も鎧などはつけていない。防御力のない服では雷のえじきになるしかなかった。
それからのエトウは、さながら台風のように辺りを荒らし回った。
雨風の代わりに雷と魔力の嵐が、古城内を吹き荒れる。
エトウと戦闘になった者すらいない。近づいただけで雷の衝撃を受けて、誰もが意識を失ってしまった。
ものの数十分で、エトウの視界に動く者はいなくなった。
廊下にデントが倒れていた。ケガはないようで、ただ気絶しているだけだ。
命を助けて情がわいたのだろうか。
エトウは少しほっとしたのだった。




