19. いつの日か
自分のパーティーメンバーを誇らしげに見つめていたエトウは自信にあふれていた。ラナはエトウと会って話を聞いたことで気持ちが少し楽になった。
これではっきりと道が別れてしまったという寂しさはあった。また、エトウが苦しかったとき、支えてあげられなかった悔しさや申し訳ない気持ちもある。
だが、それよりもエトウが信頼できる仲間たちを得て、自分の冒険を始めたことがうれしかったのだ。
その一方で、自分たちのパーティーに目を移すと、まだぼろぼろの状態だと言っていい。ロナウドは魔物討伐の旅へ出ることを決めたが、本調子でないのは明らかだった。
エトウに対して冷静でいられない気持ちをいまだに抱えているようで、出発直後に一悶着あったのだ。
きっかけは、若い騎士がエトウを詐欺師のように言ったことだった。
「スタンピードのときのエトウの功績を聞かなかったのか?」
ロナウドは静かに尋ねた。
「聞きましたけど、あんなのデマですよね。あんな役に立たない男に、そんなことができる訳が――」
「おい、貴様、名前はなんという?」
「は、はい。第二騎士団所属タール・コーネリアスです」
「タールよ、貴様はここから帰れ」
「はい?」
「ここから帰れと言ったのだ」
「はは、勇者様、ご冗談を」
ロナウドは黙って聖剣を抜くと、騎士の首元に押し当てた。騎士の首からは少量の血が流れ落ちた。
「ひっ」
「冗談ではない。エトウは女神様に選ばれた賢者だ。騎士である貴様は、そもそも護衛のために帯同していたのではないのか?」
「は、はい。ですが」
「ですが、なんだ? お前がエトウを見下しているのは、連絡係の嘘に踊らされたからだろう? 連絡係が流したエトウの悪評が嘘だったことは、公に認められた事実だ。こちらは解決済み。あとは当時、魔物と戦う力が十分ではなかったからか? 王都を救ったことで力があることは証明されたな? それを認めないならば、国王陛下のお褒めの言葉も否定することになる。それなのに、お前はエトウに対する見方をあらためないと言うのだな」
「それは勇者様も……」
「なんだ?」
「勇者様もあの男を認められないから、模擬戦を挑んだのではありませんか?」
「……」
上官が無言でその騎士を殴りつけた。まだなにか言おうとしたところを、騎士が気を失うまで殴り続けた。周りの者は誰も止めようとしなかった。
「勇者様、大変失礼しました。この者は勇者様のご命令どおり王都に帰らせます。もう二度と顔を見せないように取り計らいますので、どうかお許しください」
「後々まで恨みを残そうとは思わない」
「はっ、ありがとうございます」
これ以降、エトウの名前は勇者一行において禁句になったのだ。
自分たちはあまりに未熟だとラナは思った。
だが、いつまでも成長できなければ、エトウたちとの差は広がるばかりだ。これから自分たちは、いろいろなことを学んでいかなければならない。
「そして、いつの日か……」
ラナは、いつの日かエトウたちと胸を張って協力できる日がくればいいと思っていた。




