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17. ラナが戦う理由

 楽しい時間は早く過ぎ去り、また一緒に食事に行くことを約束して今晩は解散となった。レストランの裏手にはラナを王城に送るための馬車が用意されていた。


「エトウ、今日はごちそうさま。コハクちゃん、ソラノさん、アモーさん、皆さんと話せて本当に楽しかったわ。今度は私がおごるから、またおいしいものを食べに行きましょう」


 ラナは馬車の方に歩きかけたが、すぐに足を止めると振り返ってエトウを見た。


「エトウ、この前の話なんだけど、私の方であれから少し調べてみたの」

「ああ。俺の方でも情報を持っていそうな人から話を聞いたよ」


 エトウは自分に報酬を渡さなかったのがロナウドなのか、それともラナの話のとおりに王城と教会の連絡係なのか調べてみようと思った。

 どこかすっきりしない思いを抱えているよりは、調べて分かることならば真実を突き止めてしまおうと思ったからだ。


 エトウが面会を求めた人物は、冒険者ギルドのグランドマスター、トライエである。

 勇者に関する情報は、立場が下の者に話を聞いても意味がなさそうだった。真実を知る者は、王国上層部にしかいないと判断したのだ。


「やっぱり私には勇者様が事件を主導したとは思えなかった。勇者様本人にも話を聞いたのよ。そしたら勇者様は、女神様の名にかけてやっていないと誓ってくれたわ。エトウにとっては、今さらかもしれないけど……」

「そんなことないよ。それにラナが俺に話してくれたことは、こちらの調査でも同じ結果が出た。勇者様は本当になにも知らなかったみたいだな」


 トライエがエトウに話したのも、勇者はなにも知らず、エトウへの理不尽な行為を主導したのは王城と教会の連絡係ということだった。

 エトウはトライエにそれを信じることができるのかを尋ねた。

 トライエはしばらく考えた後で、ロナウドは身の丈に合わない力を持った子供だと自らの見解を披露した。エトウを追い出したかったのなら、裏で報酬をかすめ取ったり、いじめみたいな方法を用いず、直接追い出したのではないかと答えた。


 その面会の後、トライエは連絡係の調書を取り寄せて確認してくれた。そこには勇者の関わりを示すような証言は一切なかったという。

 トライエとともに調書を読んだギルドマスターのサイドレイクも、「不審な点はなかったです」とはっきり告げた。


 エトウはこの二人の言葉を信じようと思った。どこまでも嘘を疑っていてはきりがない。この辺りが潮時だと見極めたのだ。


「ラナ、これで少しはすっきりしたよ。だけど、今の俺には勇者様が報酬の件に関わっていても、あまり関係がないみたいだ。俺は勇者パーティーが息苦しくて耐えられなかった。それに比べて今は、頼りになる仲間とともに、補助魔法を自由に使って自分たちの冒険ができている。これこそが自分の求めていたものだったんだと、気がつくことができたんだ」


 エトウはそう言ってパーティーメンバーを見た。彼らが自分の仲間たちだと誇らしい気持ちで言うことができた。


「そう……私がエトウの話をもっとちゃんと聞いていればと思ってた。でも、エトウは本当の仲間に出会えたんだね」


 そう言ったラナの目から涙がこぼれた。ラナはすぐに手でぬぐうと、涙をごまかすように笑った。


「ラナはこれからどうするつもりなんだ?」

「これまでどおりよ。魔物の被害に困っている地域に赴いて、役に立ちたいと思ってるわ。私たちは王国内で魔物の討伐を行ってきたけど、エトウが王都のスタンピードを止めたことに比べれば、大きな成果を上げているとは言えない。女神様がせっかく私たちを選んでくださったのだから、お飾りのような勇者パーティーでは申し訳ないわ」

「そうか」

「エトウは勇者様やミレイ様にいい印象はないだろうけど、王都なんかで偉そうなことばかり言っている貴族に比べれば、最前線で魔物と戦っているお二人はご立派だと思う。私の剣聖としての力は、お二人の元で使いたいの」

「うん。分かるよ。俺だって勇者パーティーの一員として行動していたんだから、ラナの言っていることは分かる。俺は一緒には行けないけど、ラナは自分が信じるとおりに進んでいけばいいよ」

「ありがとう」


 ラナとはその後も食事をする機会があった。そして、彼女はその言葉のとおり、勇者パーティーの一員として魔物討伐の旅に出かけていった。

 エトウたちは見送ることはできなかったが、最後の食事会で再会を約束して別れた。

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