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15. 宝珠の運用と新魔法

 エトウたちのパーティーは通常運転にもどっていた。朝食後、冒険者ギルドに向かい、王都近辺の討伐・採取依頼を受けていく。


 ゴブリン・スタンピードでは王都東側に大きな被害が出た。村々は荒らされ、薬草やキノコ、動物などの森の資源についても壊滅的な状態だという。

 現在、王国軍の部隊が被害を他の地域に及ぼさないように大規模なゴブリン掃討作戦を行っている。

 冒険者ギルドにおいても、C級以下の冒険者を対象にゴブリン討伐依頼を一斉に出した。通常よりも高めの報酬を提示することで、ゴブリンの数を減らしていく方針だ。


 エトウたちは王都西側の森に入り、各種の薬草を採取して進んでいた。

 ここまでにゴブリンを数匹倒したが、森の状態を見るとそれほど影響が出ている様子はなかった。ゴブリンは魔石だけを抜き取り、あとは焼却処分をしてその場を立ち去る。


 前方の偵察に出ていたソラノがもどってきて、フォレストウルフ三匹とそれを追うオーク二匹がいると報告した。

 エトウはパーティーメンバーを近くに集めると、補助魔法の効果を広範囲にする宝珠を握り込み、ストレングス、ヘイスト、プロテクトのバフを四人に重ねがけした。


 プロテクトはシールドとともにエトウが最近試している補助魔法である。プロテクトは物理防御の盾、シールドは魔法防御と弱い物理防御の盾を、体の周囲に展開することができた。


「俺とアモーがオークを足止めするから、ソラノとコハクはフォレストウルフを追いかけて仕留めてくれ。自分の分担が片付けば、もう片方の応援な。作戦開始!」


 ソラノとコハクは木々の間を縫うように走りながら加速していく。

 エトウとアモーの前には、右手に無骨な棍棒を携えた二匹のオークが迫っていた。アモーは木々をうまく使って、右側のオークのみを離れた場所に誘導していく。


 エトウは一匹だけ取り残されたオークの前に木の陰から飛び出した。オークは慌てたように棍棒を横に振るう。

 腰の入っていない弱い打撃だと見極めたエトウは、プロテクトの実験を行うことに決めた。あえて棍棒の一撃を避けずに体で受け止めたのだ。

 棍棒はプロテクトの透明な壁にはじき返され、エトウにはなんの衝撃もなかった。


「よし、十分に使えるな」


 そのオークは自分の攻撃がまったく効かなかったことに面食らった様子だったが、今度は頭の上まで持ち上げた棍棒を体重を乗せて振り下ろしてくる。

 エトウは一歩踏み込んで間合いを外し、棍棒の根本を左肩で受けた。再びプロテクトが効果をあらわして、オークの両手がはじかれる。

 これで実験は十分だと思ったエトウは、すぐさまダークとスロウのデバフをオークに重ねがけした。そして、ゆっくりとしか動けなくなったオークの首をエンチャント・ウィンドソードで切り落とした。


 オークの死体をその場所に置いてアモーの元へ向かうと、近い距離にいたアモーの足元には首を失ったオークが倒れていた。だが、アモーは倒れたオークではなくて木の上を見ている。

 

 それにつられるようにエトウも見上げると、三メートルほど上の枝にオークの頭が引っかかっていた。アモーが一刀の下に頭を切り飛ばしたらこうなってしまったらしい。

 これまでよりも多くの魔力が使えるようになったアモーは、力の加減が難しいのかもしれない。


 オークの頭と体は一旦放置して、ソラノとコハクの応援に向かうことにした。

 そこに藪の中から大きな袋を抱えた二人が出てきた。フォレストウルフ三匹の狩りを終えたという。

 ソラノは戻ってくるなりするすると木に登っていくと、オークの頭を下に落とした。


「ソラノ、すごいじゃないか。さすがエルフ!」

「ふふん、こんなもん」


 ソラノは枝の上で器用に胸を張った。驚くべきバランス感覚である。ソラノの木登りスキルやバランス感覚はいつか戦闘で使えそうだ。

 エトウたちは剥ぎ取りを済ませ、今日の仕事をここまでにした。


「体がバキバキだよ。久しぶりの仕事はきついね」

 コハクが十三歳とは思えないことを言う。

「ウチも肩が張ってる。訓練と実戦は違う」

 ソラノも同意していた。


 成長期のコハクは筋肉痛で、そうでないソラノは慢性疲労だろうなとエトウは思ったが、女性に年齢の話題を振るような愚かな男ではなかった。

 

「なに?」

 勘のいいソラノがエトウに問いかける。

「うん? なんでもないぞ」

 エトウは当然ながら白を切った。


 ギルドで依頼完了の報告と素材の売却を済ませると、エトウたちは宿に帰って身支度を整えた。

 今晩はラナとの食事の約束が入っている。店はコハクおすすめの煮込み料理がおいしいレストランになった。

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