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12. 再調査の依頼

 エトウは奴隷商館に使いを頼んだときに、コハクの奴隷解放に加えて、もう一つ依頼があることを手紙に書いておいた。それはソラノが犯罪奴隷になった経緯について再調査したいという要望である。


 ソラノと出会ってから、彼女が自分の利益のために平気で嘘をつくような人間ではないことをエトウは理解していた。それにソラノが理由もなく人を傷つけるはずがない。

 エトウは事件の再調査をすることで、ソラノの身の潔白を証明したいと考えたのだ。


「タマラさん、私はこういったことに不慣れです。調査費用の他に、タマラさんには協力費も払わせて頂くので、どういった手順で物事を進めていけばいいのかご教授願えませんか」


 エトウはタマラに頭を下げた。


「いえいえ、エトウ様、王国の英雄に頭を下げて頂く訳にはまいりません。ソラノさんの経歴については私どもも思うところがあります。しかし、間に入っているのは、有力貴族であるエーベン辺境伯様とその子飼いの奴隷商人です。生半可な気持ちで手を出せば強烈な反発があると予想されますが、それでも再調査を進めたいということでしたら、私にも是非協力させてください」


 タマラは覚悟を決めた目でエトウを見た。


「こちらこそよろしくお願いします」


 エトウはタマラと固い握手を交わした。そして、理不尽な理由でソラノを奴隷にした黒幕を必ず見つけ出すと誓ったのだ。


 再調査の依頼は、タマラの商館が独自に雇っている者たちに加えて、冒険者ギルドと商人ギルドに話を通しておくのが望ましいとのことだった。

 有力ギルドに話を通しておけば、情報がもれる危険は増えるが、力ずくで一気につぶされるような事態は避けられる。

 まして今回はスタンピードを解決した国の英雄の依頼だ。エトウたちをむげに扱う者はあまりいないだろうとの読みだった。


 その後、エトウは冒険者ギルドでギルドマスターのサイドレイクと面会の約束を取り付けた。ソラノの事情を説明して協力をお願いすると、そういった調査に秀でている者を紹介してくれるという。

 二日後にもう一度ギルドに来ることを約束し、その日は宿にもどった。


 宿にはタマラからの伝言が届いていた。彼は商人ギルドのギルドマスターと会って、協力を取り付けることに成功したという。

 味方に引き入れておかなければならない人たちは、幸運にもエトウに協力的だった。これで事態は動き出したとエトウは感じていた。


 二日後、冒険者ギルドの会議室には、エトウたちと奴隷商人タマラ、ギルドマスターのサイドレイクがそろっていた。

 タマラとサイドレイクの二人は、今回の再調査についてすでに話し合っているようだ。

 エトウは想定されるリスクやこれからの流れ、調査費用などを二人と確認していく。

 すべての合意がとれた段階でサイドレイクは一旦会議室を出て行き、二人の男女を連れてもどってきた。


 サイドレイクは彼らが今回仕事を引き受ける調査員だと紹介する。

 男性がナル、女性がニーと名乗ったが偽名だろう。それを隠すつもりもないようだった。調査に進展があり次第連絡するということですぐに解散となった。


「なんだか大事になってしまった……」

 宿まで帰る道すがら、ソラノがつぶやいた。柄にもなく申し訳なさそうな表情をしている。

「当たり前だよ。ソラノのことだもん。ちゃんと調べてもらって、本当のことが分かればいいね」

 コハクがそう言うと、エトウとアモーもうなずいた。

「すまない。いや、みんなありがとう」

 ソラノは足を止めてエトウたちに向き直ると、感謝の言葉を述べたのだった。


 その夜、ソラノは事情を詳しく説明した故郷への手紙を書きあげた。

 これまでは奴隷身分のまま故郷へ連絡しても仕方がないと思い、一枚の手紙すら出していなかった。

 しかしタマラやサイドレイクから、事態が動いたときに、当時のことを覚えている第三者の意見が必要だと言われたのだ。

 ソラノがエルフの里を出てから初めて出す手紙は、エトウたちとの近況を交えた長文になった。

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[一言] ちょっと泣きました。感動をありがとうございます
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