10. 報酬の分配
「今回の仕事は、四人の誰が欠けていても達成できなかったと思う。命を賭けて大きな成果を上げたみんなには、それ相応の報いがなければ不公平だ。そこで、今回の仕事にかぎり、全報酬額の十%を積み立てに回すことにします」
「おー、すごい!」
コハクが拍手をしながら声をあげる。
「今回の仕事の報酬は一人一千五百万ゴールド。その十%は百五十万ゴールドになる。それをこれまでの貯金額に足すと、コハクとソラノの購入金額を超えるね」
「え?」
エトウが笑いかけると、二人は口を開いたまま固まってしまった。コハクにしても、こんなに早く自分の報酬が購入金額に届くとは思っていなかったようだ。
「ソラノは犯罪奴隷だから契約上すぐに解放することはできないけど、コハクは明日にでも奴隷紋の解除に行こうと思っている。報酬の差額分はそれぞれのお金にしていい。それと事前に話をしていたとおり、宝物庫で選んだお宝はそれぞれに所有権がある。コハクが望むならば、お宝の売却額と先程言った差額分を足して、アモーの積み立てに回すこともできるよ。でも、宝物庫に並んでいたお宝はかなり貴重なものだから、安売りはしない方がいい。その辺りはアモーと相談してくれ。それでこれからのパーティー活動なんだけど――」
「ちょ、ちょっと待って!」
エトウは話を続けようとしたが、コハクがそれをさえぎった。
「えーと、なにから聞けばいいんだろう。奴隷から解放されて、それからお父さんも解放して、それから……」
コハクは頭を抱えてかなり混乱しているようだった。
「エトウがコハクたちを解放した後、このパーティーはどうなる?」
ソラノはいつも通りの無表情な顔つきだったが、エトウには真剣さが伝わってきた。
「そう! それよ!」
コハクもエトウをじっと見つめる。
「うん。俺としては、みんなとパーティーを続けたいと思ってる。奴隷から解放した後は、個別に契約を結んで報酬額を決めたい。今、考えているのは、これまで通り五十%がパーティー用の積み立て、アモーの借金が残っているならば五%はそのための積み立てに回す。そして、残りは借金の返済が終わった者たちで等分に分配する。ソラノは奴隷のままだけど、報酬については等分を考えている」
「等分というのは、エトウの取り分と、ウチら一人一人の取り分が同じということ?」
「そうだ」
パーティーの報酬の決め方にはいろいろあるが、一番もめにくいやり方は同額の山分けだとエトウは思っていた。
その後、それではエトウが損をしすぎるのではないかといった話も出たが、報酬の分配は誰が見ても分かりやすい方がいいとエトウは譲らなかった。
「まだ話があるなら明日聞くから、今晩はこれで休もう」
エトウがそう言うと、コハクとソラノは自分たちの部屋に帰っていった。一晩ゆっくり眠れば、二人の興奮も冷めるだろう。
エトウは濡れタオルで体を拭いてから、ベッドに入ろうと布団に手をかけた。
そこに大きな影がさす。エトウが振り返ると、アモーがベッド脇に立ったままうつむいていた。
「どうした、アモー?」
「エトウ……。俺たちをエトウが買ってくれたのは、これ以上ない幸運だと思っている。ありがとう」
アモーは頭を下げた。
「気にするな。俺だってお前たちのおかげで助かってるんだから、お互い様なんだよ。お前も早く寝ろ」
「ああ、分かった」
エトウはベッドに入って目を閉じる。
奴隷商館でアモーたちと出会ってから半年が過ぎていた。今後、彼らが奴隷から解放されていくにつれて、エトウとの関係も変わっていくのだろうか。
先のことは分からない。女神に選ばれた勇者パーティーですら、いろいろと問題が起きたのだ。
だが、この半年間で築いた信頼関係は大切にしたい。彼らからの信頼を裏切らないようにしていこうと、エトウはあらためて思った。




