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8. アモーの夢

 エトウたちが王城からもどって来て数日がたっていた。

 冒険者活動は始めていたが、ゴブリン・スタンピードで心身ともに消耗したこともあって仕事量は抑えている。


 宿の部屋でエトウはメモを片手に書き込みをしており、アモーは褒美にもらった結界の魔道具をいじっていた。

 エトウたちは四人部屋が空いていれば節約のために一部屋を借りるのだが、大部屋が空いていないときには男女に別れて二部屋をとることが多い。

 エトウとアモーは男だけの気楽さで思い思いの時間を過ごしていた。


「アモーは魔道具とか好きだったのか?」


 エトウは宝物庫でのアモーの反応を思い出していた。アモーはずいぶんと熱心に魔道具を見ていたのだ。

 

「ああ。親類が温水の出る魔道具を持っていて、なぜか昔から気になっていた。子供の頃は魔道具を作る職人になりたいと思ったな」

「へぇー、そうなんだ。魔道具職人ってのは、どんな技量が必要なんだ?」

「まず魔力だ。エトウのようにエンチャントができなければ話にならん。魔道具の設計だけして、製作はエンチャンターに任せる者もいるようだが、それは魔道具の仕組みに精通しているからできることだ。俺が魔道具職人をあきらめたのは、勉強できる環境がなかったせいもあるが、人よりも魔力が少なかったこともある」


 よほど魔道具に愛着があるのだろう。アモーはいつもよりもずいぶん饒舌だった。


 アモーの魔力はオーガ族の中でも少ない方だという。オーガ族と人間族の魔力にそれほど違いはないことから、同じ基準で魔力量を判定することができるそうだ。

 魔道具職人になるような者は、少なくとも標準以上の魔力量がないと厳しいらしい。


「そういえば、アモーに魔法攻撃を強化するマジックフォースをかけたことはなかったな。マジックフォースは体内魔力を活性化させるから、それまで使っていなかった魔力も制御できるようになるんだ。まぁ、あくまで多少の魔力だけどな。ちょっとやってみるか?」

「エトウ。それは俺が魔道具職人の話をしたから言っているのか? そうならば、あまり意味がないと思うが」


 アモーは遠慮がちに答えた。確かに補助魔法一つで魔道具職人の道が開かれるならば、誰も苦労はしない。


「いや、まぁ、そうなんだけど。ものは試しだろ? 別に体に悪いことじゃないから、ほら、やってみよう!」


 エトウは少し強引にアモーを自分の前に立たせて、マジックフォースの補助魔法をかけ始める。

 アモーが自分の魔力は少ないと言ったときに、エトウは不思議に思ったのだ。少ない魔力であんな大剣を振り回せるのだろうかと。

 オーガ族の筋力が人間族とは違っているとしても、それだけではちょっと説明がつかないのではないだろうか。


 エトウは補助魔法を制御しながら、アモーの体内魔力を感じることができた。アモーの体の隅々から魔力を中心に集めるイメージで、エトウは魔力を流し込んでいく。

 するとアモーの額から生えている二本の黒角が光り始めたのが分かった。


「アモー。角がぼんやり光ってるけど、これ大丈夫なの? このまま続けていいの?」

 エトウは焦ってアモーに確認した。

「体の中心に魔力が集まっているのが分かる。自分に異常はない。このまま続けてくれ。俺も自分の魔力を操作して、エトウの作っている魔力の流れに乗せてみる」

「わかった」


 エトウはさらにバフの力を強めていった。

 次の瞬間、重い荷物が棚から落ちるように、アモーの腹に向かって魔力の塊が下がってくる感覚があった。アモーは目を見開いて驚いている。

 すぐにもう一度、同じ感覚が繰り返された。エトウは慎重に魔力を操作しながら、アモーの顔を見つめた。


「さっきのがなんだか分からないが、体に不具合はないみたいだ。続けてくれ」


 アモーがそう言うので、エトウは作業を継続する。アモーの黒角はすでに光を失っていた。

 そのときソラノとコハクが突然部屋に飛び込んできた。


「どうしたの! 二人とも大丈夫?!」

 コハクが小走りで近くまでやって来る。

「ソラノがこの部屋で魔力の高まりを感じたの。襲撃かなにかだと思って急いでやって来たんだけど……。二人ともなにしてるの?」


 アモーとエトウに異常がないと理解したコハクは、人騒がせな男たちを非難するように事情説明を求めた。

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