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5. 決着

「エトウ、卑怯だぞ!」


 ロナウドの声が、エトウへの歓声をかき消すように訓練場に響いた。エトウがそちらに視線を向けると、ロナウドは剣を握ったまま自分をにらんでいる。


「ロナウド様、卑怯とはどういうことですか?」


 エトウは自分の模擬剣をさりげなく右手に握る。ロナウドがなにを言い出しても今さら驚きはしない。用心だけは怠らずに、彼の話を聞いてみる気になった。


「魔法付与した剣を使うなど卑怯だと言っている! それではお前の剣を受けることもできないではないか。この模擬戦は無効だ!」

「私の専門は剣でも攻撃魔法でもなく補助魔法ですよ。補助魔法使いがエンチャントを使って、なにが問題なのですか?」


 エトウが疑問を呈すると、ロナウドは分が悪いことに気づいたのだろう。歯を食いしばって沈黙していた。


 模擬戦は後味の悪い結果になってしまったが、エトウはロナウド相手にそれを言っても始まらないと思った。訓練場を一刻も早く立ち去るために片付けを始めた。


「認めない。認めないぞ、エトウ! もう一度勝負しろ!」


 突然ロナウドは叫び声を上げると、訓練場の隅に置いてあった聖剣を手に取り、その切っ先をエトウに向けた。

 ロナウドの顔は上気して呼吸も荒く、冷静な判断ができているようには見えない。


 エトウは心底面倒だと思った。

 自分は王城観光を楽しんで宿に帰るつもりだったのに、なぜこんなことになっているのだろうとため息が出た。


「貴様! 私を愚弄するか!」


 エトウのため息を自分への侮辱と受け取ったのか、ロナウドは叫び声を上げながら魔力を込めた聖剣をなぎ払った。


 聖剣から魔力の波動が飛び出してエトウに迫る。後ろには騎士たちがおり、エトウがその波動を避けると彼らが被害を受けそうだった。


 エトウは素早くエンチャント・ファイヤーソードを立ち上げると、魔力を込めながら振り切った。

 エトウの剣から飛び出した炎の刃は聖剣の波動に衝突し、訓練場全体をまばゆい光で満たす。

 光が消え去った後、ケガをした者は誰もいなかった。エトウの攻撃は、聖剣の波動をすべて消し去ったのである。


「おのれ! どこまでも私の邪魔をしおって!」


 もはやエトウには、ロナウドがなにを言っているのか理解できなかった。自分が勇者パーティーで役割を果たすのを邪魔したのは、ロナウドだろうという気持ちもある。


「かつてはこんな人に憧れていたなんて、嫌になるな……」


 エトウは素早く距離を詰めて、補助魔法のデバフをロナウドに放った。


「スロウ! ダーク! グラヴィティ!」


 剣での斬撃を予想して身構えていたロナウドは意表をつかれた。立て続けに放たれたデバフが体の自由を奪っていく。


 スロウによりロナウドの体はうまく動かなくなり、ダークは視界を奪った。そしてグラヴィティによって、地面に縫いつけられたように身動きがとれなくなる。


「ロナウド様、これが私の補助魔法です。私はこの力を使って、自分の冒険をしていくことに決めました。もう邪魔しないでください」

「うー、エトウ、貴様は――」


 ロナウドの動きを完全に封じたエトウは、模擬剣にエンチャント・サンダーソードを立ち上げる。そして地面に倒れ伏すロナウドめがけて剣を振り下ろした。

 剣から放たれた雷に全身を貫かれたロナウドはそのまま気を失ったのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 壁を作っていたとは言え、誰よりも主人公の誠実な性格を知っているであろう幼馴染が勇者の嘘をすぐ信じ、主人公のパーティーでの酷い扱いや受ける言動、雑用みたいな戦闘をさせる勇者達を正しいとし…
[良い点] ラナと和解して、本心が聞けてその上でラナは勇者と歩む道を選んだ。 とても良い回です。 ・下手に謝罪を拒否ると、ラナから自己満足を満たすために粘着されそうなんで、  表面上和解して、さ…
[一言] 小説のタイトルが「勇者パーティーを追い出された補助魔法使いは自分の冒険を始める」なんだから、主人公は過去にこだわらずに前向きに進んでいく物語なんだと思っていました。 今までのざまぁを目的とし…
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