18. 謁見と褒美
王城での謁見はつつがなく行われた。
決死隊のメンバーには国王からお褒めの言葉と報酬が与えられ、王都を守るために尽力したことが公に認められた。
これから冒険者稼業を続けていく上で、ギルドや顧客からの信用に大いにつながっていくだろう。
特にエトウはパーティーメンバーが奴隷身分となるため、彼らの手柄もエトウの成果となる。
ソラノは赤目の転移先を探知してとどめを刺した。エトウ、アモー、コハクはゴブリンの群れに三人で立ち向かい、足止めと討伐を成功させた。
今回の作戦において、もっともすぐれた功績を上げたのは誰かと問われれば、間違いなくエトウの名前が挙げられるだろう。
むしろあまりに功績が大きすぎて、国として対応に困るといえるかもしれない。小心者のエトウは、そういった空気をかなり感じていた。
謁見の式典が終わった後、エトウたちだけが呼び出しを受けたときには、偉い人に嫌味でも言われるのじゃないかとびくびくしていた。
案内されるまま王城の一室に足を踏み入れると、そこは応接セットが置いてあるだけのこぢんまりとした部屋だった。
エトウは少し安心した。高位の貴族などが使うような部屋ではなかったのだ。呼び出された理由は分からなかったが、それだけで気持ちが軽くなるようだった。
エトウたちが紅茶と茶菓子を楽しんでいると、奥の扉が開いて人が入ってきた。
最初に入室したのは近衛筆頭、国王の身辺警護を取り仕切っているシーボルトである。エトウたちは慌てて立ち上がり、シーボルトに頭を下げた。
だが、驚くのはまだ早かった。次に部屋へと入って来たのは、カーマイン王国の国王フレデリーク・カーマインその人だったのだ。
エトウは立ったまま固まってしまった。アモーたち三人も、国王が突然あらわれたのだからさすがに驚いていた。
あまりに非現実的すぎて、コハクなどは開いた口を閉じるのを忘れていたくらいだ。
「エトウ、楽にせよ」
国王の言葉でエトウは我に返る。その場でひざをつこうとしゃがみ込もうとしたが、別の声に止められた。そこには、いつの間にか部屋に入ってきていた宰相のビスマルクがいた。
「エトウ、今回は陛下たっての希望でこのような席を用意した。あらたまる必要はない」
「はっ」
エトウはそれまで座っていたソファに恐る恐る腰を落ち着けた。身の置き所がないような気持ちで、エトウは国王の話に耳を傾ける。
「さて、今回の決死隊についてじゃが、大きな功績を上げたお主たちには、特別な褒美を与えたいと思う」
その後、国王はエトウたちにねぎらいの言葉をかけて、パーティーメンバーの一人一人と固い握手を交わした。
国王が部屋を出ていくと、エトウは力がすっかり抜けてしまった。いまだ宰相のビスマルクが目の前にいることも忘れていたのだ。
「おほん。エトウよ、よいかな」
宰相は注意を引いた後で話し始めた。
「申し訳ありません、宰相閣下。陛下と直接お会いしてお話ができるとは、これほどの栄誉はありません。本日はありがとうございました」
「うむ。それはよいのじゃ。陛下たっての希望だったからのう。お主は陛下に気に入られているようじゃ」
苦笑いした宰相は、目を細めてエトウを見つめた。
「お主らへの褒美の話じゃ。陛下は宝物庫の中から、お主たちが気に入った物を一つずつ与えるとおっしゃられた。これから案内の者が宝物庫まで連れて行くゆえ、じっくりと選ぶがよい」
宰相はそう言うと、両手を二回叩いた。すると、白いひげを胸元まで生やした高齢の男性が部屋の中に入ってくる。
「ビスマルク様、この者たちですな」
宰相はうなずいた。一年を王城で過ごしたエトウだったが、その老人を見たことはなかった。
老人はさっさと部屋を出て行ってしまった。エトウたちはどうしていいか分からず、その場に留まっていた。
「なぜついて来ないのだ!」
しばらくすると老人が再び扉のところにやって来て、怒ったように言った。
またすぐに部屋の外へ歩いて行ってしまう気配だったので、エトウたちは宰相に礼を言い、慌てて老人の後を追いかけた。




