7. 希少種
「問題は、ゴブリンの正確な数が分からないことなんです」
王国魔法士団の団長であるピュークは現状の説明を始めた。
「我々はこれから王都で籠城戦を行うことになります。戦える者たちの体力や魔力、ポーションなどの回復薬、備蓄食糧などにはかぎりがあり、王国上層部としてはどの程度の期間戦いが続くのかを知っておきたい訳です。しかしながら、鳥の魔物を使役しているテイマーに上空から調べてもらっても、ゴブリンの正確な数は分かりませんでした。奴らは夜の森に潜んでいるため、数万から数十万といった大雑把な数字しか出てこないのは仕方がありませんが、これでは作戦を立てるにしても情報が少なすぎるのです」
「ゴブリンは隊列を組んでいるという話ですが、奴らを率いる者の存在は確認されているのですか?」
「さすがエトウくん、鋭い指摘ですね」
ピュークは会話を楽しんでいるように笑顔になった。
「ダンジョン発生の第一報をもたらした冒険者たちは、ダンジョンの入り口付近で、これまで見たこともないゴブリンを目撃したそうです。サイズは普通のゴブリン程度ですが、肌は白く、目玉が赤く、周囲にいたホブゴブリンたちに命令をくだしていたといいます。最初は魔法を使うメイジタイプかと思いましたけど、肌が白いゴブリンなんて聞いたことがありません」
ピュークは両手の平を上に向けて降参のポーズをとった。
「瞳の赤いゴブリン……。まさか」
ソラノが自分に言い聞かせるようにつぶやいた。眉間にはしわがより、その目には不安の影がある。
エトウは見たことのないソラノの反応が気になった。
「ソラノ、そのゴブリンについてなにか聞いたことがあるのか?」
「エルフの里の伝承に瞳が血のように赤いゴブリンの話がある。数百年前、そのゴブリンの希少種は大群を引き連れて人間の国を襲ったらしい。ゴブリンたちがどうなったのか伝わっていない。その希少種は強力な魔法を使ったと言われている」
ソラノは思い出すようにしながら、赤い瞳をしたゴブリンについてエトウたちに説明した。
「強力な魔法を使うゴブリンの希少種ですか。寿命の短い人間族に比べて、エルフたちはきちんと伝承を残しているのですね。残念ながら王都にはそのような記録は残されていません」
ピュークは感心したように吐息をもらし、興味深そうにソラノを見つめた。
「ところで、彼らがエトウくんのお仲間なんですね。私は魔法士団の団長を務めているピュークといいます。以後よろしく」
ピュークは突然自己紹介を始めた。
この唐突なところが彼らしいとエトウは思い、パーティーメンバーの紹介を始めるのだった。




