5. ダンジョンの発生
ようやくギルドマスターの部屋にたどり着いたエトウたちはそのまま中に通された。
そこにはギルドマスターのサイドレイクに加えて、以前、勇者パーティーの報告に同席していたグランドマスターのトライエもいた。
「お久しぶりです、トライエ様。サイドレイク様だけでなくグランドマスターもご一緒ということは、なにか大きな事件が起こったのですか?」
エトウが単刀直入に尋ねると、トライエは深くうなずく。
「王都の東、アツサ村の近くにダンジョンが発生した」
そこはB級試験の最中、街道にホブゴブリンが出てきたすぐ近くであり、ソラノが殺気混じりの視線を、アモーが気味の悪い感覚を得た場所だった。
エトウから報告があってすぐに、ギルドではC級の冒険者パーティー二組を調査に向かわせたという。そのうちの一組しかもどって来なかったが、アツサ村の近くにダンジョンの入口を発見したそうだ。
その周辺にはかなりの数のゴブリンが集まっており、アツサ村は壊滅状態。ゴブリンの数が多すぎて、生存者の確認もできない状態だったようだ。
「それはスタンピードではないのか?」
ソラノはいつもパーティーメンバーに話すような口調でトライエに尋ねた。
相手はグランドマスターなんだけどと、この非常時にも身分や立場のことを心配してしまう自分の小物ぶりに呆れながら、ソラノの言葉づかいにトライエが怒り出さないことを願うエトウだった。
「ええ、状況的にはスタンピードの兆候が見られます。しかし、大きく育ったダンジョンならばともかく、できて間もないダンジョンを中心に魔物たちが集まるなどという話は聞いたことがありません。現場で一体なにが起きているのか、過去の事例が役に立たない状況なんです」
ギルドマスターのサイドレイクが代わりに答えた。
「新しいダンジョン、大量のゴブリン種、スタンピードの兆候」
ソラノは今起きている状況について、キーワードを出しながら考えているようだった。
「いずれにしても魔物の群れの第一陣はすでに王都の壁に迫っていたんだ。それは大した数ではなかったから、騎士団と守備兵によって撃退された。現在は魔法士団も臨時召集を行い、城壁の守りについている」
「トライエ様、すでに第一陣が王都を攻めているのですか?」
エトウは驚いて聞き返した。
「そうだ。そして、君たちを呼んだのは、魔法士団の団長がエトウくんに協力を求めているからだ。面識があるのだろう? 夢幻のピュークだよ」
エトウが勇者パーティーに加わった直後、ピュークに魔法の指導を受けたことがあった。
ピュークはエトウの補助魔法を高く評価してくれた。
周囲の話を聞くと、なにを考えているのか分からないとか、変人奇人の類いだとか散々な評判だったが、固定観念にとらわれずに魔法研究に熱中するピュークのことをエトウは好ましく感じていた。
「ええ、ピューク様には魔法の指導を受けたことがあります。そうですか、ピューク様が私のことを。分かりました、自分はどこに向かえばよいでしょうか?」
「そうか! 行ってくれるか! 東の壁と南の壁がぶつかるところに建っている尖塔にピュークはいる。そこまではギルド職員に案内させよう。どうかよろしく頼む」
エトウはパーティーメンバーを見渡して、自分がピュークに恩があることや、自分にとって好ましい人物であることを告げた。そして、ピュークが助けを求めているならば、自分はそれに応えたいと言った。
「エトウがそう言うなら私も行く」
「このまま宿に帰っても眠れない。城壁で防御を固めるなら、ウチの弓は役に立つはず」
「自分にできることがあれば命じてくれ」
三人はそれぞれエトウについていくことを伝えたのだった。




