7. 冒険の幕開け
エトウたちが装備を整えてギルドの入り口に姿をあらわすと、冒険者やギルド職員の注目を浴びることになった。
エトウはワイバーンを単独撃破した猛者だと噂になっている。その男が奴隷をそろえてパーティーを結成したとなれば注目する人は多かった。
前回、彼らがギルドに姿を見せたときには、装備品をほとんど身に着けておらず、訓練場に入って行ったこともあって、本格的な仕事に取りかかるのはまだ先なのだろうと思われていた。
だが、今回は全員がフル装備で、顔つきまでもが違っている。エトウを先頭に依頼書が張ってある掲示板に進むと、自然と人が避けて道ができていった。
エトウは自分が英雄にでもなったかのように感じたが、本物の英雄である勇者の裏の顔を思い出して嫌な気持ちになった。エトウにとって勇者ロナウドの存在は、自分が傲慢にならないためのストッパー役を果たしているようだ。
エトウは静かに息を吐き出すと、依頼書を一つ一つ慎重に確認していった。
冒険者ギルドでは、パーティーにC級冒険者が一人でもいればCランクの依頼を受けることができる。
ただし、それ以外の冒険者がE級やF級といった初心者・見習いレベルの場合、C級冒険者が彼らの安全上の全責任を負っていると見なされるのだ。
依頼中に低ランクの冒険者が大ケガを負ったり、命を落としたりしたときには、そのC級冒険者が他の冒険者から責められることになる。
また、亡くなった冒険者の遺族に対してなんらかの保証を求められるという慣習もある。
このように冒険者ギルドではランク制度と冒険者同士の慣習によって、新人が無謀な冒険で命を落とすことを防いでいるのだ。
エトウのパーティーメンバーはC級のエトウが最高ランクとなっているが、奴隷になる前のアモーは戦闘力ならばA級にも届くと言われたB級冒険者だった。コハクもD級よりも下ということはあり得ない。ソラノは冒険者ギルドに所属していなかったが、その実力はB級以上だろう。
エトウのパーティーはかなり高レベルのメンバーが集められていた。
エトウは王都の近場で受けられる依頼を数件、ギルド受付まで持って行った。
ゴブリンの小集落の討伐依頼、オークが群れているという情報の調査依頼、薬草や毒消し、各種ポーション素材の収集、明後日隣町に出発する商隊の護衛依頼を次々に受注していった。この程度の依頼であれば、パーティーメンバーが危険になることはないと判断したためだ。
自分たちはあくまで新参者である。まずは依頼をこなすことに慣れるのが肝心だとエトウは考えていた。
エトウたちはその日のうちにゴブリンの集落を壊滅させて、薬草各種の収集依頼を終わらせた。次の日にはオークの調査と、すでに半ばできあがっていたオーク集落の殲滅を行った。
エトウ、アモー、コハクでオークの剥ぎ取りを行い、ソラノは冒険者ギルドへの報告に加えて、剥ぎ取りと運搬の応援要請をした。
オークの数は二十匹を超えており、エトウたちは想像以上の利益を得ることになった。
その翌日には疲れも見せずに護衛依頼をこなした。隣町に一泊し、王都に向かう商隊の護衛を引き受けて帰ってくる。
あまりにも順調な滑り出しに、エトウは気を引き締めなければならないとパーティーメンバーに言っていたが、本当になんの問題もなく新しい冒険者パーティーの幕開けを迎えることができた。
王都に帰ってきた翌日は完全オフにした。
報酬の分配を行い、アモーたちはそれぞれ報酬の五%を奴隷解放のために積み立てた。
報酬の五十%はパーティー費用として装備品の整備や新調、ポーションなどの消耗品の購入費用、宿屋代や食費などの生活費用に充てることになった。残りの三十五%がエトウの取り分となる。
装備品についてパーティーメンバーに尋ねたところ、コハクが投擲用のナイフがほしいと言い、アモーとソラノは剥ぎ取り用の短刀が必要だと言った。ソラノの矢の補充もしておかなければならない。
結局、休日も四人一緒にガルム武具店に行き、買物をすることになった。
午後からは休日用の食費を多めに渡して別行動にした。
三人はこれまで奴隷として窮屈な生活を余儀なくされていただろう。小遣い程度でも自由に使えるお金があるのはうれしいはずだ。
それぞれが久しぶりにリラックスした時間を過ごすことができたようだ。
パーティーメンバーにはギルドの仕事をきちんと達成できたという満足感があった。そして、このパーティーはなかなか有望だという強い手応えを感じていたのだ。




