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13. エトウの危惧

「事件の主導者が誰かは明らかになりませんでしたが、問題が浮き彫りになったのは確かですよね。後々になって勇者パーティーやその周辺から、私が難癖をつけられないように配慮してほしいです」

「ええ、それは間違いのないようにいたします」

「そうですか。それでは、私が勇者パーティーに所属していた時期については、身の潔白を証明してもらえますか?」

「それは具体的にどういったことでしょうか?」

「私の報酬は誰かが盗んでいたわけですよね。そのような人間たちですから、後になって私がパーティーのお金を使い込んだとか、誰かに暴力を振るったとか言い始めても驚きません。権力や財力があれば証拠をねつ造するのも難しくないでしょう。そういったくだらない訴えに時間と労力を使いたくないんですよ」


 勇者パーティーにいたときの経験から、エトウが目の前の官僚や教会関係者を見る目は自然と厳しいものになった。

 B級クラスの冒険者に覇気をぶつけられた二人は額から汗を流した。


「わ、わかりました。それでは、エトウさんが勇者パーティーに所属していた期間について、犯罪を行っていないという証明書を発行しましょう」

 官僚の男性がエトウの要望に応える姿勢を見せた。

「それではだめですね。実際に犯罪の証拠が出されれば、そんな証明書は紙切れになるかもしれません。そのときの力関係でどうにでもなるような書類は証明書とはいえないでしょう?」

「それではどうすればよろしいでしょうか……」

「これから私のことを再度調べて頂いても構いませんので、私が故郷の村を出て勇者パーティーに所属し、パーティーを脱退するまでの期間、いや大事をとって王都までもどるまでの期間にしましょうかね。その間の犯罪行為をすべてなかったことにしてもらいたい」


「なかったことというのは……。恩赦のようなものでしょうか?」

 話を聞いていた教会関係者が尋ねた。

「その間、私は罪を犯していませんので恩赦は必要ないのですが、要は後から難癖をつけられることは絶対に避けたい訳です。貴族様と裁判をしても勝てそうにありませんから。私の言っている意味、分かって頂けますか?」

「ええ、分かります。しかし、それではエトウさんの名誉が損なわれる可能性がありますが」

「それは仕方がありません。王都にもどって来てからの私の行動については、ギルド職員や依頼主などが証人となってくれると思います。しかし、その前の期間については誰も保証してくれる人がいませんから、私を陥れようとする者がいれば証拠をねつ造しやすいと思うんです」

「なるほど。それではエトウくんが言った期間、村を出てから今日まで、たとえ犯罪行為を行っていたとしても帳消しにすると国王陛下に宣言してもらおう」

 それまで黙って話を聞いていたグランドマスターが新たな提案を出した。


 エトウも国王陛下の名前が出されてはさすがに驚いてしまう。


「そんな要望を出して大丈夫なんですか?」

「エトウくんが受けた被害を考えれば、このくらいのことは問題ないと思うぞ。それに絶対に後から難癖がつかない方法といえば、国王陛下による恩赦を超えるものはないだろう」


 王城から派遣された官僚は、国王陛下の名前が出されたことで難色を示した。

 しかし、グランドマスターはにこやかに笑いながら、有無を言わせぬ迫力で最後にはこちらの要望を認めさせてしまったのだ。


 その官僚は王城で協議する必要があると席を立ったが、結局のところ、グランドマスターの提案に沿った形でエトウの要望は認められることになった。

 後日、国王陛下のサインが入った宣言書がギルドに届けられたのだった。

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