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閑話 ロナウドの失望

 ロナウドは、エトウの作戦に耳を傾けたことをよかったと思っていた。

 事前にラナが提案してくれたおかげだ。それがなければ、エトウの顔を見たいとも思わなかっただろう。


 エトウの作戦は、砦の攻略よりも人質の安全を優先するというもので、攻略戦の作戦会議には必ず議論されていた問題だ。

 しかし、エトウほど明確に人質を最優先にした案は、これまで誰も提案していなかった。


 停戦協定や敵に食糧を渡すといった思いきった提案は、司令官の意向で廃案となった。

 だが、ロナウドは、自分がいかに思考の柔軟性を失っていたかを気づかされた思いだった。


 人質を盾に時間稼ぎをしている敵の戦略があまりに腹立たしくて、できるだけ早く砦を攻略するという目的のみに、頭も心も支配されていたのだ。

 そして、それはロナウドだけでなく、現場の指揮官たちも同じだった。

 ロナウドは、エトウの冷静な分析力や判断力を評価したのだ。


 さらに、エトウの連れてきたエルフ弓兵隊の攻撃力は驚くべきものだった。

 エルフなど信用できないと反対していた司令官も、その有用性にすぐに気がついて、手の平を返したような歓迎ぶりだった。


 エルフたちは、エトウへの恩義のために参戦したと聞いている。

 個人的な結びつきを強めることで、地域勢力と連携した戦い方をするというのは、このところ勇者一行が目指しているやり方だった。


 だが、エトウへの評価が一変したのは攻城戦が始まってからである。

 ロナウドとミレイにかけた補助魔法は、とんでもない効果を発揮したのだ。


 ミレイの極大魔法ヘルフレイムは、単発で第一の門の守備兵を殲滅できるだけの攻撃力がある。

 しかし、エトウの補助魔法によって増幅された力は、守備兵も門もすべてを破壊したのだ。それは魔法を放ったミレイ自身が驚いていたくらいだ。


 エトウの補助魔法は、ロナウドの攻撃力にも大きく影響を与えていた。

 ヘルフレイムでくずれてきた城壁を吹き飛ばそうと聖剣を振るったとき、土台を失って不安定になっていた付近の城壁が軒並み吹き飛んで、湖の中に沈んでいったのである。


 自らが意図したものよりも、攻撃力が格段に増していたのだ。

 補助魔法とはここまでのものだったのかと、しばらく身動きできないほどの衝撃を受けた。


 これならば、一対一の模擬戦で手も足も出なかったはずである。

 模擬剣で発揮できるのは、しょせん自分自身の力のみ。複数の補助魔法で底上げされたエトウには、百回やっても勝てないだろう。

 聖剣を持ったとしても、どこまで通用するのか分からなかった。


「これが現実とはな……」


 攻城戦は続いていたため、その場所に留まっていることは許されなかった。

 ロナウドはまとわりついてくる負の感情を無理やり振り払うようにして、第二の門へと駆けた。


 それからの展開はあっけなかった。

 エトウの作戦がはまって、第二の門はこちらの掌握するところとなり、砦内の制圧戦においては大した抵抗もなく、前領主代理であるリーゼンボルトを捕らえることができた。


 砦の機能が徐々に回復し、付近の魔物討伐なども始められた頃、エトウは救出した人質を連れてベールへもどることになった。

 律儀にも別れのあいさつに来たエトウに、ロナウドはどう接していいのか分からなかった。


 すぐに謝罪すべきなのだろう。

 補助魔法を禁じたこと、それ以降の見下した態度のこと、そして訓練場での行い、それらすべてが不当なものであった。

 エトウの補助魔法の真価を目の当たりにしたロナウドは、そのことを十分に理解したのだ。


 しかし、ロナウドができたことは、混乱した内心をごまかすように発した「またな」の一言だけだった。

 自らがこれほど小さな人間だったとは、ロナウドは自分自身に失望していた。

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