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同居することになった美少女は俺が告白して撃沈された初恋の女の子でした~まずは家族からってどういう意味だよ~  作者: 滝藤秀一


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☆そして関係性は天敵に

 そんなことがあっての翌日、朝の教室にあたしの声が響き渡る。


「これほとんど間違ってるじゃない。あなた宿題を適当にやってるでしょ?」

「おまっ、少ない時間で真面目に埋めた俺の苦労を……」

「あー、そんなのに意味は無いわ。はいやり直し。わからないところは教えてあげるから……ちょっと、欠伸してないでさっさとやる。そもそも授業中にちゃんと話を聞いてないから理解が追い付かないのよ」

「……ほんとにがんがん言いやがる」

「当然でしょ。いい加減なあなたは学校生活に色々と手を抜いていそうだし、そういうところも気に入らないの」

「……別に、美浜に気に入られようとも思ってない」


 入間樹はぶすっとした顔で頭を抱えながら、それでも数学の問題に取り組み始めた。

 この男、なんだかんだで宿題は授業前にはちゃんと終わらせている。


「なんかあの2人、雰囲気ちょっと変わってない?」

「入間君に対して美涼は前より厳しくはなってるね」

「樹の野郎、また注意されてやがる……」

「あれだけ樹に言う人はいないからね」


 この男の歯切れの悪いところは改善を見せた。

 そのためか、素の部分が漏れ出てきたように思う。

 こちらも見られたくないところを見られてしまったけど。


 それにしても、なんだかこっちを見る回数が増えた様な気さえする。


「妹さんががっかりするようなことは、あなた出来ないでしょ。真面目にやらないと今度の中間試験で成績落とすわよ」

「っ! なんて性格のわるいやつだ」


 あたしの方は彼のことを少し知れたので、その分言いやすくもなり遠慮はしなくなった。


 この男、基本的に無駄が多く効率が悪い。

 そこがなんとももどかしく腹が立っていた。

 朝もそんな感じだから遅刻するんだ。


 その日の放課後のこと。

 今日も入間を何度注意したかは数えきれない、

 あたしは風紀委員の雑用を済ませ、学校の図書室で居残って試験の勉強をしてから忘れ物を取りに教室に戻った。

 そこには珍しいことに入間樹が1人残っていた。


 こっちに気づくとぶすっとした顔になる。


「なに、昼間言ったことが応えてるわけ?」

「……そんなんじゃない」

「でも、それ明日の課題でしょ……ちょっと見てあげよっか?」

「……中間前で部活はないはずだろ、どこでなにしてたんだよ?」

「なにって雑用片付けて、図書館で勉強だけど。あたし、この時間まで残ってること多いわよ」

「通りで成績がいいわけだ……美浜に1つ言っときたいことがある」

「なによ、改まって?」


 真っ直ぐに視線を合わせると、入間樹は言った。


「昨日のあいつらと俺を一緒にするなよな」

「そんなの、よくわかってるわよ!」

「……美浜?」

「~~~~っ! なんでもないわ!」

「いてっ! ふ、踏むなあ!」


 樹のそのガキみたいな態度にこっちも当てられたのか、予期せぬ言葉が出てこっちもムッとしてしまう。

 そんな感じだったから、帰り道はこれでもかと文句を言いあう。


 この日を境に入間樹との関係性は天敵になったんだ。




 ☆☆☆




「高前高、俺も受ける」

「……はああああ!」


 夏休み明けに樹の志望校を聞いたときは驚いた。

 今のままじゃ確実に失敗すると言っても、彼は頑として受験校を変えない。

 だから、その日から毎日放課後は図書館で勉強する毎日。


 そんな中、あたしはお母さんから再婚の話を聞かされ、相手の人と会うことに。

 どんな人でもお母さんが決めた人なら再婚を反対する気はなかった。


「は、初めまして。入間博です」

「はじめまして。美浜美涼です」


 優しそうで感じのいい人だ。


「博さんにも美涼と同い年の子がいるんですって」

「……へ、へえ、そうなんですか」


 お母さんのその情報を聞いて、心臓が跳ね上がる。

 入間って苗字そんなに多いかな……?


「本当は今日一緒に連れてこようとしたんだけど、息子はいま受験勉強の真っ最中で、どうしても志望校に受かりたいらしくてね。邪魔するのもちょっと気が引けて、少し落ち着いてからの方がいいかなって」

「……そ、それは構いません。あの小さなお子さんも、もしかして……?」

「います。まだ保育園に通っててね。広美さんとは何度か会ってもらったんだけど、お兄ちゃんと一緒に改めて顔合わせした方がいいと思って」

「そ、そうですか。お兄ちゃんっていうのは、入間樹くんですよね? あたしたちクラスメイトです」

「えっ、そうなの! もしかして樹と仲悪い?」

「いえ、そんなことは、仲良くさせてもらっています……」


 あいつと家族。再婚とはそういうことだ。

 酷く動揺してしまって、この時何の話をしたのかはあまり覚えてない。

 あいつは再婚のこと知ってるのかな?

 あたしが家族になるってことを……?


(あー、もう~)


 再婚には賛成だけど、凄くモヤモヤしだしてしまって、気分転換もかねて樹のお父さんに会った翌日にあたしは髪を切った。



 ☆☆☆



(夢か……)


 布団も掛けずにいつのまにか寝てしまっていたらしい。

 また風邪でもひいたらあいつに何言われるか。

 夢のせいか、なんだか少しドキドキしてしまっている。

 腹が立つこともあるけど、なんだかんだで樹とのやり取りは楽しい。

 だから家族になっても上手くやれると思ってた。


 でも、実際は……。


 いつも樹に乱される。

 今回だって感情的になってしまった。

 いつも助けられてばっかりだ。

 謝らなきゃいけないのはあたしの方……。


(上手く謝れるかな……)

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分の好意をはっきり自覚してないとしても、既に一度告白された身で相手の気持ちはよく知ってる。 知っててフォローも説明もしてない、それは親友がたまたま会って代弁くれたという都合の良い状況。 そ…
[良い点]  やっぱり髪切ったのはそういう理由か。 [一言]  美涼の方はまだはっきりと気持ちが固まっている訳では無いと。  ただ、変に好意を抱いていないから(むしろマイナス気味?)過大評価せずフラッ…
[一言] 謝るって言葉にこだわってるみたいだけどそのあたりのボタンの掛け違いでもう一荒れ来そうな予感。 真に謝罪すべきは受験勉強程度を理由に顔合わせをさせないで再婚という非常識なことをした両親なんだ…
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