33話 地竜
「落ち着いてください。我々はあなた方の救出に来たのですから」
流暢に喋るオールを筆頭に緑爪のオールたちが土魔法を使って器用に瓦礫を撤去していく。
冒険者たちはその光景に唖然としつつも警戒は解かない。
何が目的かが理解できないからだ。
「俺らを助けてどうするつもりだ?」
「今、そちらのお偉方とこちらの王で停戦協定が結ばれた。我々はもはや敵ではない」
「はっ!?」
なぜかモンスターに助けられた冒険者一行はオールについていく。
ここで下手なことをしても勝ち目がない上に停戦を結ぶに至るまでの経緯を聞き、信憑性が高いと判断した。
案内されたのは広々とした坑道だ。
しかし、こんな場所は誰も知らず、普段採掘する場所よりも地下に位置している。
つまりはここはオールのテリトリーだということだ。
思いのほか、整備された道に目を見張っていると、目の前に3メートルは優に超えるモンスターが五体前方より歩いてきた。
四足歩行のそれはオールたちとはまた別の巨大なモグラ型モンスターだった。
オールは冒険者たちが戦闘態勢に入るのを手で止める。
「これに乗りなさい」
「えっ、あっ、あぁ」
全員を乗せたモグラはすごいスピードで走り出した。
「この者らはオルクロツという種族でしてな、移動に重宝しますよ」
「そういえば名前を聞いていなかったが、あなたは緑爪のゼジルという名前か?」
「その通りですな」
「なるほどな、どうりで……」
ゼジルの土魔法や立ち振る舞いを見ていれば実力がどれほどのものかが分かるというもの。
地底の旅はわずか数時間で終わるが、これには冒険者や鉱夫も驚きを隠せない。
なんせ自分たちはシャマラカから数日かけて鉱山まで行っていたのだ。
それを数時間なのだから驚くのも無理はない。
穴から出ると夕日が目に染みる。
眩しさに目を覆うが、明るさに慣れて目を開けるとシャマラカの街があって、ゼジルの言う通り戦闘は終わっていた。
多くのオールが穴の付近で待機している。
オールと一緒に街に入るのも不思議なものだが、少なくとも助けてもらったのは事実である。
「あぁ、よかった皆さん無事だったんですね!!」
門番の青年が一行を見て表情を明るくする。
「すまんが、今の状況を知りたいんだが」
ゼジルから粗方の話は聞いていても詳細までは分かっていない。
そもそもゼジルも数時間の情報がなかったのだ。
鉱山付近どころか、街中でさえも通話ができない状態になっている。
通話は魔法技術の一つで魔力が通っていれば基本的には誰でも使える技術だ。
しかし、大きな魔力が近くにあれば阻害されてしまう。
地竜が地上近くまで来ている影響なのだろう。
休みたいところではあるが、冒険者たちは怪我人以外の動ける者はそのままの足で地竜討伐の作戦が練られている場所へ向かう。
それは街の外に簡易的に作られていた。
いくら、停戦が結ばれたからといって街中を急にモンスターが歩き出せばパニックになること間違いない。
特にオールに対して恨みを持つ人間もこの街では少なくない。
「おぉ、よく戻ってきてくれた。心配していたんだぞ」
支部長が開口一番に口を開いた。
それに続けて他の人間からも安堵の声が漏れる。
「とりあえずは全員が帰ってこれました。まぁ、こちらにいるゼジルがいなければ危なかったかもしれないですが……」
なんとも異様な光景が広がっている。
人間とオールが一緒に座って話をしているのだ。
冒険者はオールたちの中央に堂々と座する一体を見てそう伝える。
爪が虹色に光っている。
話で聞く限りではこのオールが王なのだろうとお辞儀をした。
「ギギ殿、ありがとうございます」
支部長も感謝の意を示した。
「気にするな、今では地竜に敵対するもの同士ではないか。それに少しでも戦力は多い方がいいからな」
すぐに冒険者たちも作戦会議に加わった。
真面目な作戦会議をする横で場違いな光景も見受けられる。
小さなひつじとしろくまがギーゼロッテと一緒に土で砂遊びをしている。
なんとこのためだけにオールに砂を作ってもらうという始末にノアは頭を抱えていた。
ギギは特に気にする様子もなく地竜について説明している。
王が気にしていないのだから周りのオールも何も言わない。
地竜はいえば、巨大なワームだ。
その体長はおよそ20メートルにも及ぶらしい。
手足はあるが、その巨体からは想像ができないほどに小さく、退化してほとんど意味を成していない。
攻撃方法、というか地竜からすれば捕食になるのだがシンプルに巨大な口で飲み込むというものだ。
問題は地面の中から突如現れる。
これにはオールなら対策があるらしく、地面の揺れからどこにいるかを把握できるらしい。
作戦はこうだ。
囮を使ってワームを地上におびき出して一斉攻撃で仕留める。
知能はあまり高くないらしく、罠なんかにも普通に引っかかるらしい。
囮なのだが、冒険者とオールがチームを組んで派手な音を鳴らす。
地竜は振動で獲物の位置を把握し、最も数が多いと思われるところから狙ってくる。
結構は明朝と決まった。




