27話 地底に住むもの
地底深くで一つの文明があるといっても過言ではない街が作られていた。
穴が掘られた部屋は決して無作為に作られたわけではなく、それぞれの部屋には用途があり、動線や広さも計算され尽くしている。
最も奥深く警備も万端な部屋でオールを統べる王は自慢の爪を磨かせている。
一族で最も巨大で硬い爪は片手に3本ずつの計6本。
光を反射させ虹色に輝く爪はこれまで様々な鉱石を砕いてきた証でもある。
「王よ、侵入者ですが捕らえることに成功しました。どうやら鉱石が狙いだったようです」
「そうか、使い道があるなら使え。ないなら殺してしまえ」
オールの王であるギギは徹底した効率主義であった。
その手腕はこれまでで最もオール一族が繁栄していることからも想像がつく。
「それと地上への侵攻はどうなっている?」
現在鉱石都市『シャマラカ』に隣接する鉱山の地下に都市を築き上げているわけだが、ギギは満足していない。
さらなる領地拡大を目指し種族の繁栄こそがギギの目標でもある。
しかし、忌々しいことに人種の魔法によってその領地拡大という名の侵略は進んでいなかった。
「ガザル様が突貫に向かっております」
「うむ、そろそろ成果を見せて欲しいものだな」
ギギの冷酷な表情に報告を行なっていたオールも緊張を隠せない。
徹底した効率は部下にも適用される。
能無しなどすぐに処分される。
王直属の命令となれば失敗は許されない。
しかし、そんな状況でも笑っていられるのが侵攻を命じられたガザルという男だ。
傲岸不遜で自信家な彼は王から命令を受けた際も「ハッハッハ、俺に任せておけば楽なもんさ」とふざけたことを抜かしても許されるほど信頼がある。
§
ガザルは部下数人を連れて牢屋へと向かっていた。
体格はオールの中では大きく成人男性ほど。
爪は真っ赤に輝いていた。
「おう、テメェはどうやら何か隠し持ってるらしいな」
ガザルは牢の中にいる小さな小動物に話しかけた。
「キュイ」
小動物はガザルを睨みつける。
「やれ!!」
部下によって小動物は蹴飛ばされ持っていたアイテムを奪われる。
アイテムは真っ赤に輝く鉱石だ。
「いいもん持ってるじゃねぇか」
ガザルは自分の爪と似たように輝く鉱石を見てご満悦だった。
さらに部下の報告で笑みを溢す。
「ガザル様、こいつかなりのアイテムを隠し持っています」
小動物の毛の中から大量のアイテムが出てくる。
スキルの中に、アイテムを小さくして持ち運ぶというものがある。
アイテムボックスとどちらがいいかというと一長一短である。
アイテムボックスは小さくなったアイテムすら持つ必要がない。
しかし、出し入れにタイムラグがあって戦闘中は迂闊には使えない。
一方、小動物の使っていたスキル『フラスコの中の研究室』ならば出し入れにタイムラグはない。
だが、現在のように相手に奪われる可能性がある。
ガザルの部下のオールによって床に散らばった全ての鉱石が回収された。
全てが真っ赤な鉱石で合計10個以上にもなる。
地下に住むオールならば鉱石を入手する術がある。
しかし、モルモットの小動物にはそんなことはできない。
なのに大量の鉱石を持っていた。
何を隠そう鉱山都市『シャマラカ』で頻発している鉱石盗難の犯人はモルモットであったのだ。
まさかモルモットが犯人だとは思わず、精々人が出入りできそうな経路をチェックする程度で入念に調べられていなかった。
それがなくても、このモルモットは悪知恵が働くので証拠隠滅もお手の物だ。
フラスコの中の液体をささっと巻き散らすだけで自分のいた痕跡が消せる。
オールに捕まったの不幸としかいいようがなかった。
とある工房にいつものように盗みに入った帰りで落とし穴のようなものがあってそれに落ちてしまった。
身体能力が低く、戦闘用のスキルも持ち合わせていないため、見つかってしまえば一瞬で拘束された。
その穴はオールが地上侵攻計画のために人に見つからないように掘った最重要な侵攻ルートであり、その穴を使って一気に都市を落とそうとしていたのだ。
モルモットが落ちてきたことでバレたのかと焦ったオール達だったが、そうではないと知って安堵した。
しかし、今回のようにバレる可能性が浮上したのだから、作戦決行を早めるしかなかった。
王に仕える6人の将軍が最終確認として作戦会議を行う。
「俺に任せていれば、問題ない」
ガザルは席につく5人のオールに宣言した。
中には侵攻計画に乗り気ではない将軍もいる。
それは人の強さを知っていて、戦うのが得策ではないと思っているオールや人の営みに興味を持ち共存したいと思う者など。
しかし、今回の侵攻を任せられているガザルが侵攻をするといえば、いくら他の5人が同じ将軍職でも文句は言えない。
それはガザルを選んだ王に対する反逆になってしまう。
かくして、オールによる鉱山都市侵攻計画が開始を告げた。




