26話 鉱石泥棒
「では安全第一でよろしくお願いします!!」
「メェ!!」
「くま!!」
ノアはぽむとこおりに号令をかけて採掘を始めたが、最初は張り切っていたぽむとこおりは地味な採掘作業にの飽きてしまって、いまでは洞窟内を追いかけっこしていた。
「ダメだよ、他の人の邪魔になるから」
ノアは注意するもののバカップルはイチャイチャして作業をほとんどしておらず、もう1人の青年も体力がないのかへばって座り込んでいる。
「ガハハハ、まぁそんなもんだろうよ。少し早いが切り上げてもいいぞい」
班員たちはお互いの顔を見てガイエンの提案に乗った。
早くは切り上げたものの3人での作業だったので、ノアとしては悪くはない成果であった。
元々、ぽむとこおりが興味があると参加した程度なので期待値も低かった。
バカップルも満足している。
しかし、隣の青年はなんとも浮かない顔をして成果の鉱石を眺めていた。
「どうしたんですか?」
ノアは何となく声をかけてみた。
青年の名前はクライスといい、鉱山都市『シャマラカ』で生まれ育った。
父親が鉱夫でクライスもその道を用意されていたが、それを無視して別の道を目指すことにしたのだ。
鉱石加工職人への道は鉱夫以上に倍率が高い。
鉱夫はどうしても力仕事の部分があるため男性が多い。
それに比べて鉱石職人は女性の職人も少なくない。
むしろ、女性の方が美的センスがあり人気が出る加工を施すことがある。
クライスはそんな険しい道でライバルたちに差をつけられていた。
それに追い討ちをかけるようにとある事件が起きる。
弟子入りしている工房の鉱石が盗まれたのだ。
数の少なくなった鉱石はライバルには渡されるが、クライスには一切回ってこなくなった。
犯人は未だに見つかっていない。
仕方なく自分で加工する鉱石を採掘することになったが、経験もないし、体力にも自信のなかったクライスは観光採掘に参加したが、結果はご覧の有り様。
クライスからすればゴミ同然のような鉱石しか取れていない。
当然といえば当然なのだが現実を見せられては落ち込むしかなかった。
「犯人は見つからないのか?」
「分からないです。冒険者ギルドにも依頼して探してもらってるらしいですが、難航しているらしいです」
警備の厳重な鉱石を盗めるのかと不思議に思われたが、警備の薄いそこそこの鉱石が狙われた。
シャマラカでもいくつかの工房が被害にあっていて厳重態勢だった。
「父親を頼るのはどうだ?」
「難しいですね。ほとんど家出のような形なので今更頼るのは……」
そうでもなければ、わざわざ効率の悪い観光採掘などはしないだろう。
「気にしないでください。話を聞いてもらっただけでもなんだか気持ちが楽になりました」
そういってクライスは去っていった。
少し気にはなっていても家庭の事情に首を突っ込むのもお門違いだろうとノアは自分たちの用事を済ませにいく。
工房に入ると様々な色の加工された鉱石が置いてある。
しかし、どれもが一次加工でここから鍛治師によってアイテムへと変わっていく。
ノアの求めているアイテムはなかった。
その後もいくつかの工房を回って手に入れたのが数個のアイテム。
それでも全く納得はいっていない。
赤の鉱石は爆発鉱石。
投げて相手を爆破することができるが、この鉱石はかなり威力が低い。
使い捨ての上に威力が低く、その割に値段は高い。
これなら下手な魔法使いの魔法の方が有用だし、あまりにもコスパが悪すぎる。
何人かの職人に聞いたところそんな狂った仕事をしている人はいないらしい。
ノアはβテストで割と活用していたアイテムだが、そういえば作っていたのは1人の錬金術師だけで、よくよく思い出せばたしかに狂っていた。
彼女は正真正銘の爆弾狂なのだ。
研究によってできるアイテムはどれも爆発する。
しょっちゅう街で爆破事件を起こしていて、とうとう国から指名手配がかかるほどには狂っていた。
残念ながら彼女は王国を選択したと噂だったし、さらに今回は錬金術師ではなく、鍛治師を選択していた。
彼女はどこにいても事件を起こすのでそれなりに噂が広がるというわけだ。
そんなわけで彼女に頼ることは難しい。
せっかく来たというのに完全なる無駄足だったのかもしれない。
仕方なく冒険者ギルドで仕事でも軽くこなして、帝都へ帰ろうかと思っていたところ、ギルドが慌ただしくなる。
「南のB区画で大爆発が起こったらしいぞ」
「鉱夫数十人が生き埋めになってる可能性がある。すぐに人を集めろ!!」
「あの辺はオールの住処があったはずだ。地上に出てくるぞ」
オールは130センチほどの二足歩行のモグラ型モンスター。
鋭い爪が特徴でその爪を使って穴を掘って地底に暮らしている。
鉱山付近に巣があり鉱石が必要なのだ。
爪を鉱石で研ぐことによって、爪の硬度が上がり、色が変化する。
より質の高い鉱石を求めて鉱山付近に住んでいるのだが、オールは獰猛で人間を襲う。
どれほどの鉱夫がその爪で引き裂かれたか分からない。
熟練の魔法使いが土の魔法でトンネルを固めオールが人の領域に入ってこれないようにしていたが、それが大爆発で崩れたのだ。




