第十話
「異論……異論……僕に異論はございませぇん! やっぱりあんな平凡な男嫌だったんだね! 俺の所に来てくれたんだ……何度でも言うよ……異論ござ……」「やかましぃっ!」
「ひぃっ」
「祝儀が足りねぇんだよ! あれっぽっちの金が祝儀だぁ? 私とボーへさんの結婚祝えないって事かぁ? あぁあん?」
「……い、いや、し、しかしですね……あのご祝儀には給料の三ヶ月分は入れましたよ? ……自慢じゃないんですけど、この学園の先生の給料三ヶ月分って言ったら、多分一般市民の平均年収より高いですよ? ……しかも結婚式に呼ばれてもないのにですよ……」
ぷっ……結婚式呼ばれてないのかよ。さすがのトモスも噴き出してるぞ
「……とうだ……い……とう」
「え? なんですか?」
「せめてエンシェントドラゴン一頭は狩ってこい!」
「え? エンシェントさんですか? ……あのーカラミさん? ドラゴンって言ったら世界最強種ですよ? それのエンシェントさんって言ったら、モンスター界の最強ですよ? 魔王レベルですよ? 全世界のSランク冒険者を集めても多分数分で殺されちゃうほどやばい奴なんですよ?」
「んなぁこたぁ知ってんだよ! お前は世界最強なんだろ? いつも酒飲みながらグダグダ息巻いてよな? 倒せねぇのか? あぁあん?」
「いや……もちろん僕は正真正銘世界最強なんで、楽勝です。ワンパンすら要らない程楽勝なんですけど……エンシェントさんをご祝儀に出すって、世界中の王族でもどうか?ってレベルだと思います……仮にですけど、運よく剝がれ落ちていた鱗を見つけて献上するだけでも国宝扱いされて、大騒ぎになるような事態ですよ……いくらなんでも……」
「んじゃあなにか? 私の結婚は世界の王族の結婚に劣るって言いたいのか? あぁあん? いつも世界最強世界最強、最イケメン最先生って言ってたくせに給料三ヶ月分で済ませる気か? あぁあん?」
お前はどこでもそのフレーズ言ってのか……ダセェ
そしてカラミさん怖すぎ、あぁあんの巻き舌怖い……
「……いえ、そんな事ありません……次の休日に狩に行ってきます」
「あぁあん? 次の休日だぁ? 今から行けよ今から! お前みたいなもんでも有給位あんだろ?」
「……でも、終業のホームルームがあって……」
「私がやってやるか、行って来いよ」
「……はい……お願いします……んじゃ皆、先生ちょっとエンシェントさんを……」「おい! さっさと行け!」
「ひぃ! 転移!」
マジでこえぇ……
「ゴホンッ……さてと、生徒の皆さん、あのバカは適度に利用して、適度な距離感でいるようにしましょうね? あんなバカでも世界最強ですから利用価値は腐るほどあるんですよ? ……それではごきげんよう」
カラミさんは飛び切りの笑顔で教室を後にした。
ちなみにあのバカは一週間程帰って来なかった。何でもサイズが気に入らなかったカラミさんにダメ出しをされて何度も狩に出たらしい。
その際に余ったエンシェントさんは、カラミさんが世界中の孤児院や福祉の為に寄付した。
そのことによりカラミさんは後世にまで聖母カラミとして名を残す事になる。勇者様カッコ笑の名前は出てこないけどね。
――
旅行当日、めっちゃ色々考えてたけど
「異議あり……やっぱり寝るときは、全員で雑魚寝とします……それ以外は自由にしてもいいです……解散……」
なんて、生気の欠片もない声で言った一言によって夜は皆で雑魚寝となった。まあ正直安心した面もあるからいいんだけどね……
トモスの落胆具合、っていうか男子達の落ち込み具合は凄かったけどね
だけど、尊敬する小説家の先生にも会えたし。夜は皆でくだらない事を話して、先生の自慢話に付き合ったり色んな話をできて、これはこれですごく楽しかった。
友達と夜更かしして話すって楽しいんだな、人生って楽しいんだって思えた。
色々あったけどこの旅行にこれて良かった……この学園に入学して良かった……
一度目、二度目の人生を振り返って少しだけ浸っていると、当たり前のようにトモスは隣に座ってくる
「ずっとこうしていたいね。みんなと一緒にずっと馬鹿をしていたい……もちろん無理なのはわかっているけど……」
「……」
「でもさ……だからこそ今は全力で楽しもうよ! ミラー一緒に行こう?」
「ええ……行きましょう」
――
最高の旅行はあっという間に終わって、その後は慌ただしく日々が過ぎいつの間にか護衛最終日になっていた……つまり明日は卒業
モトラ様の意向により、卒業式当日は護衛の必要はないという事になったため、今日が三年続いた護衛最終日となった
……本当に早かったなぁ、こんなに早く終わるもんかね?
最後の業務報告をして明日に備えよう――
「……以上になります、モトラ様」
「うむ、ご苦労であった。全てやり遂げたな、さすがだ。儂はミラーを誇りに思うぞ」
「ありがたき幸せ」
「うむ……これにてトモス第二王子の護衛の任を解く! 大儀であった!」
「……はっ!」
あぁ……終わった……これでトモスとの線は……明日で切れるんだ……
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遅くなりました。
次か、その次で完結させます。




