表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
479/1520

459 バロード内戦(4)

【作者註】

 昨日も申し上げましたように、内戦のエピソードと、ウルスラ王女のミッションを交互に進めて行きます。少々ご面倒かもしれませんが、よろしくお願いいたします(^^;;

「おっさんがいなくなったって、どういうこったよ?」

 ロックが、同郷どうきょうの兄貴分であるツイムに不満げにたずねているのは、豪商ごうしょう屋敷跡やしきあと手直てなおしした策戦さくせん本部の二階であった。

 部屋数が多いため、私室ししつとして一人ずつ部屋をあてがわれており、ここはツイムの部屋である。

 聞かれたツイムも、要領ようりょうない顔で答えた。

「おれもくわしくは知らんが、東方魔道師のシャンロウが何か重大な情報を持ち帰ったらしい。それを確かめに行くとだけ、クジュケに言い残したそうだ」

「これから決戦だってのに、大将みずか斥候せっこうに出るなんて、いったいどういうつもりだよ!」

 声をあらげるロックのうしろから、「まったくですよ!」と同調しながら部屋に入って来たのは、魔道師のマントを羽織はおったクジュケであった。

「ガルマニア帝国がひそかに援軍を送っていないか、わたくしが中原ちゅうげんの北側を、シャンロウが南側を手分てわけして調べましたが、全体を統括とうかつするわたくしを差し置いて、直接ゾイア将軍に報告するなんて!」

 どうやら、クジュケのいかりはゾイアではなく、同じ魔道師のシャンロウに向かっているようであった。

 とばっちりで二人に不満をぶつけられ、ツイムが困っているところへ、一階から上がって来たタロスが声を掛けた。

「レウス王子側から回答があった。下で今後の対応を話し合うから、みんな来てくれ」

 ツイムは、なおもブツブツ文句を言うロックとクジュケを説得し、三人で一階にある大広間おおひろまに向かった。


 中に入るなり、長方形のテーブルに一人座って待っているゲルヌ皇子おうじを見て、ロックが顔色を変えた。

「おい、赤毛小僧あかげこぞう! そこはウルスの席だろうが!」

 ロックの言うとおり、いつもの策戦会議ではウルスが座る正面の席に、ゲルヌが座っていたのである。

 しかし、ゲルヌは少しも動揺どうようせず、サラリと説明した。

「ウルスは今、熱を出して寝込んでいる。は、直接本人から代行を頼まれたのだ。さあ、会議を始めようではないか」

 なおも文句を言おうとするロックをツイムがおさえ、席にかせた。

 クジュケもその向かい側に座り、最後にタロスがクジュケの横に座った。

 司会役は、珍しくタロスがつとめるようであった。



 外交交渉がいこうこうしょうなど苦手にがてなわたしですが、ウルス王子、いえ、バローニャ公ウルス殿下でんか名代みょうだいとして、本日、レウス王子の即位無効そくいむこううったえと聖王宮せいおうきゅうの明け渡しを申し入れに行って参りました。

 場合によってはその場でいくさになる可能性もあり、千人隊を同行させ、まずは城門じょうもんの前から呼び掛けたのです。

 すぐに矢が飛んで来るものと覚悟しておりましたが、意外にもあっさり城門がひらかれ、わたしと護衛ごえいの数名のみという条件で、しょうじ入れられました。

 対応したのは、レウス王子の、まあ、向こうはレウス陛下へいかと呼んでいましたが、その外曾祖父がいそうそふに当たるという、レオンという蛮族の老人です。

 当然、わたしは抗議こうぎしました。

 わたしはウルス殿下の名代という公的な立場で来ているのに、如何いかにレウス王子の親戚しんせきであろうが、私人しじんが対応するのは無礼ぶれいであろうと。

 ところが、先代のカルス陛下から正式に摂政レジェンス任命にんめいされたと言って、王家の印璽いんじの入った書面を見せられました。

 どうせ勝手にでっち上げたものでしょうが、それを言いあらそったところで仕方ありませんから、こちらの申し入れをそのレオンに伝えました。

 怒りくるうかと思いきや、きわめて冷静に、ただし、断固だんこたる態度で、こう回答しました。


 レウス王子の即位はカルス陛下の遺言ゆいごんもとづくものであること。

 したがって、聖王国の正統な後継者はレウス王子であり、ウルス王子はその家臣かしんとなるべき立場であること。

 また、ニノフ王子については、その出自しゅつじいささ疑念ぎねんがあり、バロード王家の一員とは認められないこと。

 よって、両王子が現在配下に置いている兵士全員をすみやかに聖王家に返還へんかんし、ウルス王子は王都おうとバロンに上洛じょうらくして聖王レウス陛下に忠誠ちゅうせいちかい、ニノフ王子は王家の名をかたったとがにより入牢にゅうろうすること。

 そのための猶予ゆうよとして、明日より三日間与えるが、これらが四日目の朝までに実行されない場合には、ただちに武力を行使するであろう、と。



 タロスがそこまで言ったところで、ロックが激昂げっこうして立ち上がった。

「ふざけるのも大概たいがいにしやがれってんだ! タロス、あんた、そんなこと言われて、おめおめと帰って来たのかよ!」

 タロスも色をして「わたしとて、はらわたが煮えくり返っている!」と怒鳴どなり返した。

 ツイムが「二人とも落ち着け」となだめている横で、クジュケが「おかしいですね」と首をかしげた。

 ゲルヌ皇子も「そうだな」とうなずいた。

 その二人の態度に、ロックがってかかった。

「また、とんがり耳同士で、内緒話ないしょばなしかよ!」

 ゲルヌが苦笑してこたえた。

「別に内緒にはせぬ。ロックも疑問には思わぬか? 何故なぜ三日待つのかと」

 ロックは、グッと言葉にまった。

「そ、それは、だな。ええと、こっちの準備も色々あるだろうと」

 クジュケがサラサラの銀髪をらして首を振った。

「あり得ません。こちらに温情おんじょうを掛けるような連中ではありませんよ」

「じゃあ、何だってんだよ!」

 それには、ゲルヌが静かに答えた。

「時間かせぎだ。機械魔神デウスエクスマキナがまだ到着していないのか、あるいは、シャンロウが発見したかもしれない援軍を待っているのか、であろうな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ