あらすじ(401 聖王奪還(15) ~ 450 ゲティスベルクの誓い)
拉致されたカルス王とその実行犯であるバドリヌを共に救うべく、バロード西北端の廃村に近づいたゾイアとハンゼだったが、ドーラの罠に嵌り、ゾイアの身体を乗っ取らてしまう。
ゾイアの身体を手に入れたドーラは、カルス王の姿に変身して飛び去った。
物陰からそれを見ていたハンゼは、抜け殻のようなドーラの本体を連れ、幽閉中のカルス王の許へ向かった。
白髪の老婆となったドーラは、息子のカルスを見ても最初は相手が誰かもわからぬようであったが、息子と教えられて涙した。
カルスは優しい母の姿に感激する。
同じ頃、暁の女神の砦では、圧力を強めるバロードへの対応策を話し合っている席上、突如様子がおかしくなったタロスが、自分はゾイアだと名乗った。
マーサ姫はタロスの正気を疑ったが、副将のペテオが間違いなくゾイアだと主張し、ニノフとボローも同意した。
そこへクジュケ、ウルスラ王女、ギータの三人が到着したため、ニノフは自分の部屋でタロスとウルスラだけと話すことにした。
ウルスラは、相手がゾイアであることを見抜き、自分がウルスと人格交代して見せることによって、隠れているタロスの人格を表面に出すことに成功する。
再びゾイアに戻り、ヤナンでニノフの異父妹のピリカと出会ったこと、その患者であるハンゼからカルス王の誘拐を聞き、罠かもしれないと思いつつも救出に向かったことを説明した。
結果として罠に嵌ってしまい、ドーラに身体を奪われる寸前、ゾイアの心だけが逃れ、気がつくとタロスの身体に移動していたという。
ウルスラが、それは『識閾下の回廊』を使ったのだと教え、同時に、たった今サンジェルマヌスが死んだと告げると、涙を零した。
その死によって、記憶の封印が解けたのである。
ウルスラから、サンジェルマヌスによって聖剣が識閾下の回廊に隠されたのだと聞いたニノフは、ドーラに乗っ取られたゾイアの身体にそれが繋がっているなら、危険だと指摘する。
聖剣を奪われる前に、その力でゾイアの回廊を塞いだ方がいいだろうということになり、ウルスラが聖剣を呼び出そうとした。
すると、同時にドーラもそれに気づき、ウルスラの許へ跳躍して来た。
聖剣を奪い取られる寸前、タロスの身体を借りているゾイアがそれを掴み取り、咄嗟にニノフに投げ渡した。
それを受け取ったニノフは、ドーラを元の場所に戻し、その回廊を閉じるよう、聖剣に命じた。
ところが、ドーラは、近くに居たウルスラを一緒に攫って行ってしまった。
ニノフは聖剣に命じ、ゾイアと共にその後を追った。
王宮のカルス王の部屋に戻ったドーラは、変身してウルスラを脅していたが、そこへ秘書官のラクトスがやって来る。
相手をカルス王と信じているラクトスは、王妃ウィナの死に、ドーラが関わっていたことを報告した。
その直後、ラクトスは縛り上げられているウルスラの姿を見つけて異変に気づいた
ドーラは、口封じのためラクトスの首を絞めようとする。
そこへ、ニノフとゾイアがリープして来た。
ニノフは、聖剣の力で襲い掛かるドーラを止め、ゾイアの身体からアルゴドラス共々出て行くように命じた。
ドーラが出た後、ゾイアの身体が光り始め、林檎ほどの光の球体となった。
その瞬間、幽閉中のカルス王の傍にいた老婆のドーラが、突然、美熟女の姿に戻った。
激昂して当たり散らすドーラを往なしながら、カルスは密かに妹カンナに人格交代し、魔道を使える態勢となって、ドーラを国外に追い出した。
一方、光る球体となった自分の身体を前にして、タロスの身体に間借りしているゾイアは、意を決してそれに触れた。
忽ち合体し、二人に分離したが、今度は、ゾイアとタロスの心と身体が入れ替わってしまっていた。
焦ったニノフは、聖剣の力で元に戻そうとしたが、二人が苦悶するため、ウルスラが止めた。
ニノフはニーナと交代し、その癒しの力で、ドーラに殺されかけたラクトスを治療する。
更に、ニーナは聖剣の力によってラクトスを父カルスの許へ転送し、救出に当たらせることにした。
その後、バロードを追放されたドーラはガルマニアに戻り、舞姫ドランの姿となって、皇帝ゲルカッツェを唆して報復しようと企む。
ところがそこへ宰相チャドスが現れ、ドランの正体をドーラと見抜いた上で、手を組まないかと持ち掛けた。
マオール本国から独立し、ガルマニアを自分のものにしたいというチャドスに、ドーラは交換条件としてバロードを攻め滅ぼして欲しいと告げる。
チャドスは、過去に二度もバロード遠征が失敗していることを指摘し、断ろうとするが、ドーラはバロードさえ征服すれば、三種の利器が手に入るのだと教える。
聖剣、機械魔神、有翼獣神の三つを使うことができれば、中原はおろか、マオールをも含めた全世界を支配できるとの甘言に乗せられ、チャドスはバロードへ軍を送ることを承知する。
一方、廃都ヤナンでは、約束した五日目になってもゾイアが戻らないことにツイムが気を揉んでいた。
そこへ戻って来たゾイアが、タロスと入れ替わっていることに、ロックだけが気づく。
複雑な事情を説明したゾイアは、ドーラがガルマニア軍を動かすことを見越し、義勇軍を連れてサイカへ戻り、更に兵を募って、『自由都市同盟』東端のリベラを護るつもりだと告げた。
皆も一緒に行こうと誘うと、ロックだけは行かないと言う。
一方的にピリカが自分を好きになっていると思い込んでいたらしく、そうでないことがわかると、ショックを受けてしまう。
その頃、暁の女神では、忙しく働く大人たちから孤立しているウルス王子のために、クジュケが友だちとしてハンゼを紹介した。
しかし、ハンゼは、カルス王の件で仲間から母バドリヌが責められ、火炙りになりそうだと怒っていた。
ウルスは、一緒にバドリヌを救けようと提案し、クジュケにも協力を依頼する。
ところが、バドリヌがスカンポ河の畔で火炙りになる寸前、河の底を歩いて多数の腐死者が上がって来た。
ンザビになるより、いっそ早く焼いてくれと告げるバドリヌを、クジュケに連れられて来たハンゼが止めた。
一緒に来たウルスと交代したウルスラがバドリヌを移動させたところへ、ンザビたちを操っているらしいタンリンが現れた。
が、そのタンリンは最早人間ではなく、口から突き出た鉄の筒から、小さな金属の玉を撃って来た。
クジュケは、身を挺してウルスラを庇う。
しかし、タンリンはウルスラに向け第二弾を撃とうとしていた。
同じ頃、ヤナンからの出発準備をしていたゾイアのところへ、ツイムが駆け込んで来た。
巡回中に蛮族と小競り合いとなり、タロスが獣人化してしまったために、「ケルビムよ、鎮まれ!」と言ったところ、初期化が始まってしまったという。
ところが、ゾイアが駆け付けると、初期化ではなく、タロスはウルスラの姿に変わってしまった。
同時に河原でも、ウルスラとタロスが人格交代してしまい、ウルスラを狙おうとしていたタンリンは、目標を達成したと勘違いして去って行った。
後に残されたンザビが迫る中、ウルスの肉体に宿っているタロスは、無謀な反撃を試みようとする。
が、倒れていたクジュケがその足首を掴み、ウルスの肉体を危険に晒すべきではないと止めた。
タロスがその制止を振り切ろうとするしているところへ、魔道を身につけたゲルヌが駆けつけて来た。
その隙に闘い始めてしまったタロスを、ガイ族が援護し、ンザビと少し距離ができたところで、ゲルヌが魔道の発火によって一気に焼いた。
ところが、倒れていたクジュケが息をしていないことにタロスが気づき、ゲルヌに戻るって来るよう頼んだ。
クジュケの容態を診たゲルヌは、苦痛に耐えられず仮死の術を使っているだけだと説明した。
術が解ければまた苦しむため、早急に治療ができる場所に連れて行くこととなり、ヤナンのピリカの施療院へ跳躍した。
そのヤナンでは、ゾイアたちがピリカの作ったシチューを食べようとしていた。
尤も、ゾイアの身体はタロスのものであり、ウルスの身体はゾイアのものである。
そこへ、仮死状態のクジュケを連れたゲルヌたちがリープして来た。
ウルスは、その中に自分と同じ姿の人間がいることに驚くが、それはタロスであった。
一先ずクジュケを寝かせると、そのタロスが経緯を話した。
最後に、ハンゼからウルスへの伝言として、二人はもう友だちだ、と告げると感激したウルスが泣き出し、自然にウルスラに交代した。
ところが、ゾイアの身体が持っている変身能力のため、髪型や体型も少女らしくなる。
ちょうど意識を取り戻したクジュケの部屋へ皆で訪れ、ゲルヌが代表して、心と身体が縺れてしまった三人(人格は四人)を解きほぐす智慧を貸して欲しいと頼む。
翌朝、一晩眠って多少回復したクジュケのところへ、ゲルヌ、ゾイア、ウルスラ、タロスの四人が来た。
クジュケは、茹で卵が立てられたエッグスタンド、黒パンが載ったパン皿、殻つきの落花生が入った小皿を用意させ、入れ替わった三人の関係を解説した。
因みに、茹で卵とエッグスタンドをゾイア、黒パンとパン皿をタロス、ピーナッツと小皿をウルス・ウルスラの両性族と見立てている。
現在は、エッグスタンドにピーナッツが、パン皿に茹で卵が、小皿に黒パンが、それぞれ載っており、エッグスタンドとパン皿の間には手帳を置いて、この両者は遮断されているとする。
よって、最初にパン皿の茹で卵と小皿の黒パンを入れ替え、次に、小皿に載った茹で卵とエッグスタンドのピーナッツを交換すれば、元どおりになるという。
そのためには、三人が眠って夢を見ればよい、というのが、クジュケの案であった。
その施術のため、この三人にクジュケ、ゲルヌ、ピリカも加わり、六人が王室用続き部屋へ籠った。
ところが、市街を巡回していたツイムとロックのところへ、バロード正規軍からの伝令が駆け寄り、蛮族の叛乱によってカルス王が重傷を負ったと知らせる。
伝令は、蛮族軍と戦うためには、ゾイアが将軍となってバロード軍を率いて欲しいのだと言う。
筋違いだと怒るロックと違い、ツイムは伝令をピリカの家に案内した。
だが、大事な施術中だからとピリカの祖父トニトルスが拒否する。
敢えてそれを圧し切り、ゾイアを呼んでもらったが、まだ途中であったため、ウルスの肉体に入った状態であった。
ゾイアは、現時点で元に戻ったのはタロスだけであり、これから自分とウルスラが眠らねばならないと説明した。
しかし、事情がわからぬまま、ツイムたちがカルス王のことを大声で告げたため、ウルスラとタロスも起きて来てしまった。
父の悲劇に動揺するウルスラが、どんどん大人の女性に変身してしまうため、ピリカが別室に連れて行った。
伝令から詳細を聞いたゲルヌは、いっそ、ウルスの姿をしたゾイアが全軍を率い、それをタロスとツイムが補佐すればいいと提案する。
一方、別室でウルスラに服を着替えさせているピリカのところへ、ハンゼが怪我をした王さまを治して欲しいと言いに来た。
二人はハンゼに案内され、ヤナンの地下神殿の跡地へ降りた。
赤目族がこの場所を放棄して以来、同じく日光に弱いガイ族の恰好の隠れ家になっているという。
辛うじて王宮を脱出したカルスは、バドリヌに匿われていたが、既に瀕死の状態であった。
ピリカはその治療に当たりながら、自分がニノフの異父妹であることを告白する。
自分の母リリルを捨てたことを恨むピリカに詫びながらも、カルスは、非業の死を遂げた王妃ウィナに一目逢いたかったと涙する。
偶々大人の姿となっていたウルスラは、母ウィナのフリをして、父の最期を気丈に看取った。
その時、バドリヌが激しく慟哭した。
母に続き、父をも失ったウルスラも嘆き悲しむが、ピリカに慰められ、また励まされ、この国難に立ち向かうことを決意する。
バロード軍を率いることを決意したゾイアたちも、カルスの崩御を聞き、国民を鼓舞するためにも、まず葬儀を行うべきだと話し合っていた。
まだ危険な状況にあることを鑑み、蛮族軍に焼き払われたゲティスベルクに、正規軍の一部だけを集めて行うこととなった。
そこでの演説は、ウルスの姿をしたゾイアが代役を務めるものとして準備が進められたが、当日、演台に上がったのはウルス本人であった。
ウルスは、訥々とこれまでの経緯を説明し、全ての原因は祖母ドーラこと、アルゴドラスの野心にあり、父も蛮族も利用されていたのだと告げる。
しかしながら、蛮族による異民族支配と圧政は最早許されるべきではないと断じ、バロード人の、バロード人による、バロード人のための政府を樹立することを誓ったのである。




