表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
441/1520

423 逆転(11)

 かつての魔道師のみやこエイサは、ガルマニア帝国に焼きちされ、新帝都しんていとゲルポリスとなるはずであった。

 しかし、軍師ブロシウスの謀叛むほんによって皇帝ゲール諸共もろともに倒され、イサニアン帝国の首都エイサとなった。

 ところが、イサニアン帝国はわずか十三日でほろぼされ、エイサは再びガルマニア帝国支配下の植民都市となったのである。

 新皇帝ゲルカッツェの弟ゲルヌは、そのエイサの地下にとらわれていたが、ゾイアやウルスたちの活躍と、地下神殿にひそんでいた赤目族にも助けられ、自由のとなった。

 ゲルヌはそこで『神聖ガルマニア帝国』を宣言したものの、兄ゲルカッツェによって再びエイサが戦禍せんかさらされることをけるため、忠誠ちゅうせいちかった兵士たちと共に、何処いずこかへ逃亡したものと思われていた。

 しかし、それは兄をあざむくためであり、実際には、エイサの地下神殿にとどまっていたのである。

 ガルマニア帝国が大規模なバロード遠征軍えんせいぐんもよおし、暗黒帝国マオールの援軍を受け入れようとしていると知ったゲルヌは、自分が地上に戻るべき時期が来たと考えた。


 おりよく、赤目族の側もゲルヌに相談したいことがあるとのことで、食事をりながら話し合うこととなった。

 そこは、地下神殿内にある食堂で、大きな長方形のテーブルには、すでに食事が用意されていた。

「ささ、このようなものですが、どうぞし上がってください」

 空腹だというゲルヌのために赤目族が用意してくれたのは、野菜と豆を使った料理であった。

 肉や魚は一切いっさい入っていない。

馳走ちそうになる」

 ゲルヌは感謝して食べ始めたが、横で相伴しょうばんしている元東方魔道師のシャンロウは、「またこの料理だかあ」と思わず不満をらしてしまい、あわてて口をつぐんで黙々もくもくと食べた。

 同じテーブルについている赤目族たちは、その同じ料理をホンの少量だけ、それも、一口ずつ感謝のいのりをささげながら食べている。

 皆が一とおり食事を終え、食後の薬草茶ハーブティーきょうされたところで、赤目族の仲間から第一発言者と呼ばれている者が、時々薄い板のようなものを見ながら、ゲルヌに話をした。



 さて、皇子おうじも耳にされたかと思いますが、地上は今、大きく動こうとしております。

 このまま事態じたい推移すいいすれば、東西両勢力の激突が、われらの未来予測より随分早く起こることになります。

 そのこと自体は、まあ、むをぬものと考えております。

 中原ちゅうげん恒久的こうきゅうてきな平和をもたらすためには統一するしかなく、その過程かてい大規模だいきぼな東西戦は避けられぬからです。

 ですが、それには条件があります。

 一つは、非位相者ストレンジャーが完全に中和ちゅうわされていること。

 そして、もう一つは、中原以外の勢力の干渉かんしょう排除はいじょすること。

 遺憾いかんながら、現在は、そのどちらも当てまっておりません。

 すると、統一と平和のための東西戦が、泥沼どろぬまのような長期戦となり、救いようのない混乱が全中原に広がることになります。

 つまり、戦乱の世が終息しゅうそくせず、それどころか、永遠に続くことになってしまうのです。


 では、そうならぬためには、どうすればよいのか。

 東西戦が始まる前に、二つの条件をととのえるしかありませぬ。

 そして、その両方に関与かんよできるのは、皇子、いや、み使い、あなただけなのです。

 あなたは、干渉機オムニポテンテオルガノン、一般的には『アルゴドラスの聖剣』として知られるものを持つウルス王子の親友であり、中原外の勢力と結託けったくしようとしている皇帝ゲルカッツェの弟でもあります。

 今こそ地上に出て、中原をお救いください。

 お願い申し上げます。



 第一発言者の「お願い申し上げます」に合わせ、その場の赤目族全員が同じ言葉を唱和しょうわした。

 ゲルヌは、その父親譲ちちおやゆずりの秀麗しゅうれいな横顔に、何の表情も見せずに傾聴けいちょうしていたが、「うむ」とうなずいてハーブティーを一口飲んだ。

「わかった。にはの重過ぎる役目だが、やらねばならぬ。一先ひとまず、ウルスに会いに行こう」

 静かな口調くちょうではあったが、ゲルヌのひたいには、クッキリと赤い第三の目があらわれていた。



 そのウルスは、ゲルヌにえないさみしさをまぎらわすため、クジュケにすすめられて、ガイ族の少年ハンゼをたずねて来た。

 たが、いきなり刀子とうすを投げられ、それをふせぐためにウルスラに変身したのである。

「何するの! 危ないじゃない!」

「おれ、悪く、ない。おまえの、父のせいで、母者ははじゃ、大変な、ことに、なってる」

 そうこたえるハンゼは、泣いているようであった。

 だが、ウルスと違って気の強いウルスラは、同情よりも怒りの方を優先した。

「何を馬鹿ばかなこと言ってるの! 父上は、あなたたちに助けられたことを忘れず、ガイ族全員にバロード領内の居住権きゅじゅうけんを与えたのよ! 感謝こそされても、そんなことを言われる筋合すじあいはないわ! 何を逆恨さかうらみしてるのよ!」

 ハンゼは、泣きながらかぶりを振った。

「違う。恨んでいるの、おれ、じゃない。仲間、たち。母者が、王妃おうひの地位、ねらって、一族を、バロードに、売り渡した、とめ、ている。そして、母者を、火炙ひあぶりに、しようと、してる」

 ウルスラは「なんて馬鹿なの」とくちびるんでうつむいたが、顔をげた時には、瞳の色がコバルトブルーに戻っていた。

「ハンゼ、ぼくらできみのお母さんをたすけようよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ