あらすじ(201 弱者の同盟 ~ 250 サイカ包囲戦(18))
ガルマニア帝国の第三皇子ゲルヌを、商人の都サイカで匿って欲しいという魔道師カノンの申し出に、小人族の情報屋ギータは、意外な回答をする。
ガルマニアと新生バロードの東西両勢力に挟まれ、各個に潰されかねない自由都市を糾合し、『自由都市同盟』を立ち上げるので、寧ろその顧問団に加わってくれないか、と言うのである。
一度は鮸膠もなく断ったゲルヌも、タロスやツイム、そして何よりも、同じ境遇のウルスの説得を受けて、サイカに身柄を委ねることにした。
それを見届けたカノンは、安堵したように息を引き取る。
一方、中原東南部の湿地帯では、大蜥蜴に乗った大勢のマオール兵、即ち竜騎兵が、イサニアン帝国の首都となったエイサを目指して行軍していた。
そのイサニアン帝国の皇帝となったブロシウスは、できたばかりの帝国を安定させようと、必死の外交交渉を行っていたが、内部の統制も儘ならない状態であった。
そこへ、突如南からドラグンの攻撃が始まり、更に東からも北からもガルマニア軍が押し寄せて来たため、ブロシウスは唯一残された西へ逃げた。
だが、そこには宰相チャドスの傀儡となったゲルカッツェが待ち構えており、魔道を封じられたブロシウスは、易々と討たれてしまう。
こうして、僅か十三日で、イサニアン帝国は潰えた。
ブロシウスが討伐されたことを知った弟弟子のケロニウスは、嘆きつつも、これで動きが自由になったバロードが、ニノフたちを攻めて来ないよう牽制するため、自ら直接交渉に向かった。
ケロニウスと入れ違いに、ニノフのいるクルム城にカルボン卿が訪れた。
カルボンは『アルゴドラスの聖剣』をチラつかせながら、協力を要請したが、ニノフはキッパリ断った。
その際、北方から助け出されてクルム城にいた蛮族の娘レナが、怪しい動きをする。
その蛮族に支配された状態のバロードに入国したケロニウスは、カルス王と母ドーラに会う。
ニノフと休戦して欲しいというケロニウスの申し出を、カルスは拒否する。
これは国内の問題であり、ニノフは早急に王都に戻って罪に服せというのである。
ケロニウスの必死の説得とドーラの執り成しでカルスは態度を和らげ、ニノフから攻めて来ない限り、こちらから攻撃はしないと約束する。
その頃、ゾイアが暗黒都市マオロンにいるらしいと知ったロックは、皆が止めるのも聞かず、サイカを飛び出していた。
マオロンのある中原東南部の湿原を進むうち、ロックはガイ族に襲われる。
女族長バドリヌによって、痺れ薬を塗った刀子を刺され、ロックは動けなくなった。
そのガイ族を操っているのは、ロックの従兄リゲスであった。
暗黒都市マオロンでゾイアに逃げられたリゲスは、ロックを囮にして捕まえようとしていたのである。
ゾイアを誘き寄せるため、火炙りにされかけたロックは、隠形したクジュケに救い出される。
ゾイアも一緒だろうと思っていたロックに、クジュケは、ゾイアに逃げられたと言う。
二人を追って来たマオロンの東方魔道師たちを撒き、落ち着いたところで、クジュケはロックにゾイアのことを説明した。
記憶を取り戻させるためにクジュケが色々と話しかけていると、「エイサ」そして「イサニアン帝国」という言葉に反応したゾイアが、怖ろしい怪物の姿になって逃げたのだと。
従って、ゾイアを捜すとすればエイサに行くべきだという。
ところが、エイサに入ってすぐ、ロックとクジュケの二人は拘束されてしまう。
マオロンの警備団長であった東方魔道師チャロアが、エイサも兼任していたのである。
その取り調べ中、窓に異形の姿となったゾイアが現れる。
変身が上手く制御できないながら、ゾイアは二人を救い出す。
そのゾイアを助けるため、クジュケは敢えて「イサニア」という言葉を聞かせる。
激しい変身を繰り返した後、ゾイアは光の球体の状態に戻ってしまう。
ゾイアを元の姿に戻すためには、タロスと再度合体させるしかないと考え、二人はタロスのいるサイカを目指すことにした。
そのサイカに、カルボン卿がやって来た。
ニノフに断られたたため、今度はウルスを騙して仲間にしようと考えたのである。
最早完全に、憑依している赤目族ズールをカルボンの心の方が支配していた。
ウルスに取り入ろうと必死なカルボンの話を聞くため、タロスを含めた三人で、門の近くの審問所に入った。
カルボンは、細々と聖王家の血脈を繋いでいたピロス公を騙し、カルス王を産んだ舞姫ドーラこそが、全ての元凶であると告発する。
すると、審問所の警備隊長ドラドが笑いながら入って来て、そのドーラに変身した。
ウルスと交代していたウルスラは、初めて見る祖母の姿に衝撃を受ける。
ドーラは隔力でカルボンから聖剣を奪おうとするが、危険を察したウルスラは、そうさせまいと抵抗した。
その瞬間、ドーラの指に現れた指輪が目も眩むような光を放ち、全ての動きが止まってしまう。
サンジェルマヌスの潜時術であった。
ウルスラが聖剣を持つべきとサンジェルマヌスが説得していると、指輪が切れてドーラが動き出す。
ドーラは、サンジェルマヌスに『忘却の指輪』を嵌められたことに気づき、逆に罠を仕掛けていたのだ。
同時に、『アルゴドーラの魔剣』によって、潜時術に同調することができたと言う。
咄嗟の機転でウルスラに聖剣を掴ませたサンジェルマヌスは、魔剣を消滅させるよう頼む。
ウルスラが魔剣を消滅させると、再びドーラの動きが止まった。
更にサンジェルマヌスはウルスラに、ドーラを聖王宮に、カルボンを地下神殿に、それぞれ転送するように命じた。
その後、聖剣は一旦サンジェルマヌスが預かることになった。
ドーラが警備隊長ドラドとして勤務している間、密かにバロードから一万の軍勢がサイカに向かっていた。
率いているのは、ニノフの国外逃亡による失点を取り返そう焦るガネス将軍であった。
サイカを攻める表向きの理由はウルスの身柄引き渡しであるが、本当の目的は、『自由都市同盟』を芽のうちに潰すことである。
サイカ側でも、責任を感じているウルスに、ライナやギータが、いずれにせよバロードは攻めて来たはずと慰めた。
同時にギータは、バロード国内に異民族支配への不満が高まっており、ニノフやウルスの存在感が増していることを指摘した。
バロード包囲軍への対応を話し合う会議で、サイカには三千人の傭兵しかおらず、援軍を呼ぶしかないが、その方法がないと暗礁に乗り上げているところへ、クジュケとロックが跳躍で戻って来た。
クジュケは、初期化してしまったゾイアを保持していることを説明し、タロスに再合体を頼み、タロスもそれを諒承した。
ゾイアはすぐに復活したが、代わりにタロスが気絶し、目醒めると、再びタロスの記憶を失い、ティルスとなっていた。
ティルスがどういう行動をとるかわからぬため、刺激せぬよう、クジュケが上手く宥めた。
肝心の援軍については、ゾイアが包囲を突っ切って、『暁の軍団』の砦を押さえている留守部隊を呼びに行った。
ゾイア不在の中、包囲軍副将のロムが決死の覚悟で軍列を離れ、明日にでも総攻撃が始まるため、ウルス王子を逃がして欲しいと言って来た。
実は、ロムは反政府組織『自由の風』の指導者で、仲間と共に包囲軍に潜んでいたのだという。
既に仲間たちがウルスを逃がす手筈を整えているというロムに、ウルスと交代したウルスラが、逃げるつもりはないと断る。
困惑するロムに、ギータが代案を出した。
このままではロムの仲間を見殺しにすることになるから、自分がウルスの身代わりとなり、逃げるフリをして仲間を連れ出し、その後、周辺の自由都市から援軍を連れて戻るというのである。
最初渋っていたロムも折れ、そこにロックも同行して行くこととなった。
ゾイアに続き、ギータとロックもいなくなったサイカでは、翌日の総攻撃をどう凌ぐか話し合っていた。
そこへティルスが現れ、自分も手伝わせて欲しいと言ってきた。
軍略の才を発揮し、自然に会議を取り仕切るようになっていたゲルヌ皇子が、ティルスにも参加してもらうことを決めた。
その上でゲルヌは、三千の兵を五つに分け、前後左右に各七百、中央に予備として二百を置くという案を立てる。
翌日、最初の攻撃を受けたのは、裏門を護るツイムのところであった。
鉄製の門を激しく破城槌で叩かれたが、ここには予め設置された落とし穴があり、ツイムはなんとかそれを作動させ、破城槌を沈黙させた。
一方、ライナの護る木製の正門は、盛んに火矢を打ち込まれたが、動物の膀胱に水を入れて、上にある望楼から吊るすというゲルヌの発案で、事なきを得た。
クジュケの担当する左側壁面には、次々と長い梯子が掛けられたが、クジュケ本人が浮身して最上段に近づき、波動を打って倒して回った。
ティルスが任された右側壁面には、高い移動楼が迫って来た。
こちらの矢は届かず、頭上から矢が降って来る。
ティルスは、巨人用だという強弓で、槍のような矢を番えて、移動楼の矢狭間に突き刺した。
初日の攻撃が失敗して苛立つガネス将軍のところへ、ドーラがやって来て、サイカ側の援軍状況を教える。
ゾイアが『暁の軍団』の砦の留守部隊二千を、ギータたちが『自由の風』と自由都市の義勇軍併せて千を連れて来る。
ここまでは大勢に影響ないが、ニノフの機動軍とペテオの北方警備軍も渡河を始めており、何よりも、プシュケー教団の援軍がどこまで膨れ上がるかわからないという。
そのため、明日には決着をつけるよう念押しして、ドーラは帰った。
迎え撃つサイカ側も、ゲルヌが戦況を分析して、各担当の配置の入れ替えなどを行い、翌日の決戦に備えていた。




