あらすじ(151 ワルテールの会戦(1) ~ 200 王子と皇子(2))
(作者註)
ちょっと長めですが、この物語のキモとなる部分ですので、お許しください。
予定戦場をワルテール平原とみて早々に布陣したニノフは、蛮族軍の動きに疑問を持つ。
『暁の軍団』の砦から最短距離を採らず、一旦北の山岳地帯に寄せて宿営しているのだ。
ニノフは、別動隊が山に向かったのではないかと懸念する。
逸早く『暁の軍団』の砦がゾイア軍によって落とされたと知った『荒野の兄弟』の首領ルキッフは、蛮族軍に合流しようとしている『暁の軍団』に、ゲリラ戦を仕掛ける。
しかし、蛮族に従うことに不満を持っていた『暁の軍団』副団長のザクブルは、攻撃目標を『荒野の兄弟』に切り替えてしまう。
蛮族の帝王カーンの代わりに蛮族軍を率いている父ドーンは、ザクブルの単独行動に怒る。
『暁の軍団』の行動はニノフ軍にとっては有利であったが、ルキッフたち『荒野の兄弟』が窮地に陥ると心配し、ニノフは、ゾイア軍二千に救援を要請する。
同時に、到着したペテオ軍四千には、そのままワルテール平原の南側に布陣させた。
ところが、夜明けと共にペテオ軍が襲撃され、更に草に火をかけられ、二千ずつに分断されてしまう。
その間に、ニノフ軍の本隊は、蛮族軍のクビラ族と激突していた。
劣勢を跳ね返そうと、副将のボローが突撃するが、深手を負ってしまう。
ニノフはニーナとなって、ボローに癒しを施すが、そのボローの助言もあって、蛮族軍と決着をつけるため全軍で突撃する。
そこへ、工兵隊の活躍で罠を抜けたペテオ軍の残り二千と、辺境伯軍二千を率いたマーサ姫も合流し、一気に形勢を逆転した。
が、日没も近く、決着がつかないまま、翌朝に持ち越しとなった。
勝手に攻撃目標を変えた『暁の軍団』のザクブルたちの方は、砦に籠る『荒野の兄弟』を攻めあぐねていた。
そこへドーン本人が叱責に来て、ワルテール平原に戻るよう指示するが、ザクブルは従わず、今度はゾイア軍二千に目標を変える。
ゾイアの方も、ザクブル軍から脱走者が多く出て二千五百ほどになってることを知ると、近くのガルーダ盆地で戦うことにした。
ザクブルは、闘士部隊を中核とした布陣を敷いたが、元同僚が多いため抑えが効かず、勝手に戦いを始めてしまう。
特に大薙刀を振るうダグディンが突出し、ゾイアと一騎打ちとなった。
その激闘の最中、傷を負ったゾイアは、新たな変身能力が目醒め、鳥人の形態となって敵を蹴散らす。
翌朝、ワルテール平原で敵の蛮族軍が消えたことに驚くニノフたちの許へ、首都バロンが陥落したとの報せが入る。
しかも、蛮族軍は僅かに五百名、但し、鉄の巨人が一緒だという。
信じられないというニノフに、難を逃れて来た参与のクジュケと老師ケロニウスが詳細を伝えた。
そこへ、カルス王の名代として、ガネス将軍がニノフと機動軍に帰還するよう命じてきた。
ニノフは、副将ボローの怪我の治療を名目に、十日だけ待ってもらうように頼む。
一方、三万の兵を率いてバロードに向けて遠征中の軍師ブロシウスにも、首都バロン陥落の報が入る。
対応を考えているところへ、カルス王の使者としてその母ドーラが訪れた。
ガルマニア帝国と中原を二分割で支配したいというカルス王の申し出を、ブロシウスは断る。
しかし、その際にドーラは、『敵は新帝都ゲルポリスにあり』と告げて去った。
ワルテール平原でも、首都陥落後の対応を話し合っていたが、そこへ遅れてゾイアとロックが合流した。
ところが、入って来たロックを見て、ケロニウスが赤目族に憑依されていることを見抜く。
ロックから離脱するようケロニウスが説得していると、干渉機が手に入ったからもうロックに用はないと告げて、赤目族は消えた。
その少し前、首都バロンから逃亡していたカルボン卿は、廃都ヤナンで地下神殿に落ちていた。
『アルゴドラスの聖剣』を持ったままだったカルボンは、それを赤目族に奪われ、憑依されてしまったのである。
ワルテール平原では気絶したロックを寝かせると、今後の対応を話し合った。
ニノフたち機動軍はバロンへは帰還せず、このまま辺境伯アーロンの許へ行くこととなった。
ところが、その話し合いの間に、ロックが行方不明になる。
それを捜すため、ゾイアだけ単独行動をとることになった。
遠く離れたプシュケー教団の聖地シンガリアにいるウルス王子たちも、母国の政変を耳にする。
その機会を捉え、教主のサンサルスがウルスたちに会いたいという。
サンサルスは妖精族であった。
身分を隠していたウルスたちのことも、全て知っていたが、アールヴ族の神通力ではなく、教団の情報網のお陰だという。
サンサルスの用件とは、ウルスを教団の後継者にしたい、というものであった。
サンサルスの申し出を、ウルスと交代したウルスラは、キッパリと断った。
しかし、その立派な態度にサンサルスは感服し、教団の賓客待遇にすると誓う。
ウルスの母国バロードでは、愈々王政復古となり、カルス王による粛清の嵐が吹き荒れた。
カルス王にブロシウスの調略の報告に戻った母ドーラが、男性形のドーンに変わったところで、時が止まったようになった。
サンジェルマヌスの潜時術であった。
ドーンの前に現れたサンジェルマヌスは、相手をアルゴドラスと呼んだ。
アルゴドラスは、聖剣の力で二千年の時を越え、現代に来ていたのである。
凡そ二千年前、ダフィニア島海没後、中原に渡ったアルゴドラスは、聖剣の力で瞬く間に中原全土を支配した。
その際、北方の奥地に眠る白魔を発見し、その危険性を調べるため、未来に跳んだ。
そして、自分の子孫が堕落し、千年後には国が滅び、その後千年の戦乱が続くことを知った。
未来を変えるべく、自分の替え玉と本物の聖剣を過去に残し、聖剣自身に造らせた複製『アルゴドーラの魔剣』によって、時を渡った。
魔剣の副作用によって倫理観が崩れたアルゴドラスは、女性形の舞姫ドランの姿でピロス公に近づき、カルスを産んだ。
更にピロス公が死ぬ頃に跳び、正妻の三人の子を亡き者として、カルスに王位を継がせたという。
話を聞き終わったサンジェルマヌスは、舞姫ドランの姿となったアルゴドーラに別れを告げ、時の流れを戻した。
但し、その手の指に、見えない謎の指輪を残して。
失踪したロックを捜していたゾイアは、遂にバロードの廃都ヤナンで発見した。
記憶を失くしていることに付け込み、捕虜であったバポロが自分の下僕のように、こき使っていたのである。
ロックを助けようとしたゾイアは、地下神殿に落ちてしまう。
そこには、赤目族に憑依されたカルボン卿がいた。
カルボン卿の精神と融合した結果、その赤目族は性格が歪んでおり、ゾイアは記憶と能力を封じられ、無力化される。
何もわからない状態で地上に戻されたところで、ゾイアはバポロに騙され、擬闘士として売られることになった。
(その後のゾイアについては、外伝短編『マオロンの超戦士』を参照ください)
バロードへの遠征軍が動かないことに業を煮やし、皇帝ゲールの使者として、宰相チャドスの縁戚のチャダイ将軍が、ブロシウスのところへ来た。
厳しい督促に、ブロシウスが頭を悩ませていると、再びドーラが現れた。
謀叛を唆すドーラを、ブロシウスは断ろうとするが、ドーラが男性形のドーンとなり、更にアルゴドラス聖王本人であると知って、遂に決意を固める。
その間、辺境伯アーロンの許に避難して来たニノフたちのところへ、ロックを捜しに行ったまま行方不明となったゾイアの手がかりが齎された。
自分が行くと言う副将のペテオを抑え、クジュケが旅立つ。
同じ頃、北長城では、腐死者化した蛮族千名が襲って来ていた。
工兵ヨゼフの機転で、石油を撒いて火を点け、なんとか撃退した。
しかし、時ならぬ極光の出現に、ケロニウスは凶兆を感じ取る。
ゾイアを捜すため、廃都ヤナンに近づいたクジュケは、そこでタロスとツイムと出会い、ウルスとギータとも合流する。
ウルスたちがヤナンに入ろうと計画していると聞き、クジュケが止める。
既に聖剣を手に入れたはずの赤目族が、ウルスを狙って罠を仕掛けているかもしれないと言うのである。
一行は、サイカへ向かうことになった。
宰相チャドスは、ブロシウスの謀叛を密かに後押ししようと動いていた。
それを知った魔道師カノンは、ある人物に知らせようとする。
同じ頃、ブロシウス本人は、愈々同僚の将軍たちに自分の真意を明かす。
騒然となる中、予めブロシウスと打ち合わせていたガズル将軍の誘導で、皆謀叛へ加担することを決めた。
サイカに着いたウルスたちは、そこでロックと合流した。
ロックは幼い頃に自分たち母子を救ってくれたツイムとの再会に感激する。
そこへ、バロードへ迫っていたガルマニア帝国軍三万が反転したことと、マオール帝国の艦隊が沿海諸国を威圧しているとの情報が入って来た。
マオール帝国の艦隊は、沿海諸国に属国になれと迫ったが、一向に実力行使はしなかった。
対応に苦慮するカリオテのファイム提督のところへ、潜時術を使ってサンジェルマヌスが訪れ、艦隊の真の目的は沿海諸国ではないことを教える。
新帝都ゲルポリスにいる皇帝ゲールのところへ、血まみれとなった魔道師カノンが訪れる。
ゲルポリスの周囲は東方魔道師たちによって情報が遮断されており、気づかれないままブロシウス軍三万が迫って来ているという。
ゲールは自分の死を覚悟し、カノンに二つの命令を出す。
一つは、自分の首をブロシウス軍に渡さぬこと。
もう一つは、まだ幼い第三皇子ゲルヌを無事に逃がすこと、であった。
ブロシウス軍三万は、僅かの守備兵しかいないゲルポリスを、瞬く間に制圧した。
が、皇帝ゲールは一人奮戦し、何百人も斃した後、自らの首を斬り、カノンに託した。
一方、謀叛には成功したものの、ブロシウスを支持する外国勢力はなく、孤立してしまう。
そのブロシウスを討伐すべく、宰相チャドスは第二皇子のゲルカッツェをかき口説くが、生来臆病で、うんと言わない。
そこへ、野人太子とも呼ばれる皇太子のゲーリッヒが現れ、皇太子の位をゲルカッツェに譲ると告げた。
アーロン辺境伯のところへ、北長城を放棄した北方警備軍が逃げて来る。
途中、ンザビ化した部下に手を噛まれたというマリシ将軍は、自ら片腕を斬り落としていた。
傷の手当てが充分ではなく、瀕死の状態のマリシを救うため、ニノフは秘密を明かし、ニーナと交代して癒しを行う。
マリシは奇蹟的に回復し、ニノフは本格的に独立へ向けて動き出す。
その後、サイカにいるウルスのところへ、ゲルヌ皇子を連れた魔道師カノンがやって来る。
大怪我を負っているカノンは、ゲルヌをウルスに預けたいという。
ガルマニア帝国に敵意を持つロックなどが反発するが、同じく国を追われた身として、ウルスは同情する。




