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あらすじ(1401 ハルマゲドン(57) ~ 1450 ハルマゲドン(106))

 ガルマニアへの援軍を要請するため、単身で聖地シンガリアをおとずれた統領コンスルクジュケだったが、不機嫌ふきげんそのものの教主ヨルムに気後きおくれしてしまう。

 そこへガイ族のハンゼ少年があらわれ、友人の少女ヤンを救うため援軍を出して欲しいと懇願おんがんする。

 さらに門番の老人からも先代サンサルスの教えを口添くちぞえされ、頑固がんこなヨルムも援軍を出す決意を固めた。

 その頃、ツイムの船で眠り続けるジェルマ少年に、異変が起きた。


 目をましたジェルマの瞳の色はあざやかなコバルトブルーであり、そのしゃべっている話の内容からも、ツイムには相手がタロスであるとわかった。

 互いの情報を交換したところへ、困った様子の魔道屋スルージがやって来て、老人の姿に戻ったアルゴドラスが酔いつぶれてしまったと告げた。

 ジェルマの寝ていた寝台ベッドにアルゴドラスを寝かせると、タロスの代わりにツイムがバロード軍を取り返しに行くと宣言した。

 一方、夢の中で異世界の戦場にいるジェルマ本人は、たすけてくれたナターシャに協力していたが、瀕死ひんしの男に足首をつかまれてしまう。

 その男の瞳の色は、珍しいアクアマリンであった。


 ジェルマの足首を掴んだ男の瞳は、一瞬アクアマリンのように見えたが、見ているに色が濃くなり、真っ黒になった。

 髪の色も黒く、マオール人のような顔立ちをしている。

 困ったジェルマはナターシャを呼んだが、警戒して武器を構えた。

 男は外国人傭兵ようへい部隊の者だと名乗った。

 怪我をしているため、用心しながらもナターシャの地下室へ連れて行き、ジェルマも協力して治療した。

 男の名は、アイゾーというらしかった。


 アイゾーという名前に反応しそうになったジェルマの意識が遠のき、意識が戻ると目の前に髪を伸ばしたナターシャがいた。

 何故かジェルマは赤ん坊になっており、シンゴという名であるらしかった。

 父のアイゾーは宇宙開発公社に献体けんたいの申し込みをしたと話しており、死後、その脳を活用して人工実存アーティフィシャルエグジスタンスつくられるという。

 また場面が変わり、あの地下室で年老いたアイゾーとナターシャが死んだ息子シンゴの話をしており、外では内戦が起きているらしい。

 ジェルマは視線だけの存在になっていた。

 アイゾーを助けるため、武器を手にしたナターシャが階段を駆け上がったが、激しい爆発が起き、地下室は土砂にまった。


 気が付くと、ジェルマは暗黒の中をただよっていた。

 その暗黒の中に浮かぶアイゾーを見つけ、眠りからまそうと声を掛けると、アイゾーの瞳の色はアクアマリンであった。

 心細さから、泣きながらジェルマがゾイアの名を呼ぶと、見るにアイゾーからゾイアに変身した。

 夢の循環ループから抜け出したゾイアは、ゾイアとしての人格を完全に取り戻した。


 コロクス・ドーラ連合軍六万は、当初こそ半分の兵力しかないヤーマン直属軍を一方的に攻めていたが、それが徐々じょじょ膠着こうちゃく状態におちいりつつあった。

 ヤーマンが得意とする少数部隊による攪乱ゲリラ戦法により、本来の軍師ぐんしであるドーラが不在で一本調子にしか攻められない大軍のもろさが露呈ろていしたのである。

 さらに、苛立いらだつコロクスのもとへ、タロスひきいるバロードからの援軍四万五千が驀進中ばくしんちゅうとの知らせが入った。

 勿論もちろんはるか上空から偵察ていさつしている東方魔道師たちには、タロスの瞳の色の変化まではわからなかった。


 スカンポ河東岸で最初に腐死者ンザビの接近に気づいたのは、上流域の『荒野あれの騎士団領』の監視船であった。

 偶々たまたま乗組員のりくみいんに元漁民がおり、漁網ぎょもうバリスタで打ち出してから策戦さくせんこうそうし、一時的に足止めはできた。

 しかし、中流域のエオスの大公国付近には、ずっと多くのンザビが殺到さっとうし、ロック、ゾイアの身体からだあずかるウルス、ペテオたちが全力で渡河とかを阻止していた。


 漁網以外の有効な手段として、つぶてを打ち出してんザビのあしねらうことにより、一進一退の状態で夜をむかえた。

 中流域では河幅かわはばが広く、対岸が見えないため、ペテオは甲板を照らしながら監視していたが、ゴンと何かがぶつかる音が響き、ンザビが甲板に上がって来た。

 ペテオは、ウルスラがゾイアの身体でつくってくれた薬剤、通称、聖水をびせてンザビ倒したが、後から後から甲板に上がって来る。

 絶望に空を見上げると、翼竜よくりゅうとなったウルスが飛んでおり、聖水を散布さんぷしてくれ、ことなきをた。


 翼竜となって一晩中聖水をき続けたウルスは、眠気と疲労で力尽ちからつき、水面に墜落した。

 が、その衝撃で目醒めざめた瞬間、姉ウルスラと共通の身体に戻っていた。

 ウルスラは休むようにすすめたが、ゾイアの身体をさがすため、ウルスは眠らずに道案内をした。

 幸い、ゾイアの身体には本人の本来の人格が戻っており、もう迷うことはないと宣言した。

 その頃、眠り続けるアルゴドラスを見張っているジェルマの身体のタロスのところへ、怪我けがをしたツイムが戻って来た。

 気づかれぬよう、スルージに連れられて夜間飛行しつつバロード軍を発見したものの、向こうもツイムとは知らずに矢を射掛いかけて来たという。

 ツイムをかばったスルージの方が重傷じゅうしょうであるため、代わりの魔道師を行かせようと話しているところへ、クジュケが帰って来た。


 ツイムのわりにバロード軍をめに行くというクジュケに、アルゴドラスが同行を申し出た。

 信用できないと声をあららげるツイムを、ジェルマの身体にいるタロスがたしなめた。

 総合的に判断したクジュケは、アルゴドラスを連れて行くことにした。

 同じ頃、援軍を出せずに悩んでいるハリスのところへ元皇帝ゲーリッヒがやって来て、協力するから早く援軍を送れと告げた。

 一方、タロスの身体にいるため魔道が使えず、苛立いらだつドーラの目の前に、アルゴドラスをかかえたクジュケがあらわれた。


 いきなりり付けたドーラの剣を、老人の姿のアルゴドラスは護身用の剣で受けた。

 ドーラは、タロスの身体の体力にものを言わせようと斬撃ざんげきり返したが、ことごとくアルゴドラスにかわされ、剣を落としてしまった。

 ごうやしたドーラは部下に攻撃をめいじたが、上空にゾイアが現れ、参謀総長さんぼうそうちょうとして全軍に帰還きかんうながした。

 が、そのすきにドーラは本来の身体をうばい返して逃げて行った。

 逆に、アルゴドラスの人格はタロスの身体に入ってしまった。


 倍の兵力をようしながら苦戦を続けるコロクス・ドーラ連合軍にも、バロード軍四万五千の反転が伝わった。

 喜ぶコロクスに、戻って来たドーラ本人が罵声ばせいびせた。

 バロード軍をひきいていたのは自分であり、それを反転させたのは復活したゾイアだという。

 追い込まれたコロクスにトドメを刺すように、ハリスの援軍がゲーリッヒの領土を通過して迫って来ているとの知らせが入った。

 何とかしろとわめくコロクスを無視し、ドーラはドゥルブに、手持ちの機械兵ゴーレムでエイサを攻撃するようにと告げた。


 ンザビがほぼ壊滅かいめつし、ゾイアが復活したことを聞き、ゲルヌは一旦いったんエイサに戻ることにした。

 先に地上部分の業務を片付かたづけ、地下の古代神殿にりたゲルヌは、信じられない光景を目にした。

 第一発言者ゲルニアが十字架じゅうじかはりつけにされ、石を投げられていたのである。

 たすけ出して事情を聞くと、古代神殿がドゥルブに破壊されるとの予言が出て、確かめようと魔道神バルルたずねると、すでにいなくなっていたという。

 恐慌状態パニックおちいった赤目族たちは、ゲルニアを生贄いけにえささげれば、バルルが戻ると信じているらしい。


 傷付きずついたゲルニアをかくざとへ運んだゲルヌは、かつての部下であるザネンコフ元将軍から、エイサの古代神殿にドゥルブによる攻撃があるとすれば、地下からだろうと推測した。

 早速さっそく戻って対応すると告げたゲルヌに、裏切りをり返したジョレ元将軍が自分も手伝わせて欲しいと申し出た。

 その頃、赤目族の人心じんしん荒廃こうはいした状態の古代神殿に、ドゥルブのゴーレムたちの攻撃が始まった。


 右往左往うおうさおうするばかりの赤目族のもとに、ジョレを連れたゲルヌが戻った。

 ジョレに見張りを頼んでゲルヌが本殿に入ると、こわれた機械からくり人形のような小型自律機械ロビーだけが残っていた。

 ゲルヌがロビーに問いかけると、バルルがいない理由を説明した。

 救援艦隊がドゥルブごとこの惑星を破壊する決定をくだしたため、それをめるべく、予備機構サブシステムの黄金城と共に宇宙へ行ったのだという。

 激昂げっこうするゲルヌに、ロビーを通じてバルルがび、何とか現地でドゥルブを中和して欲しいと頼んだ。


 ロビーから灼熱剣ヒートソードという武器を二本渡されたゲルヌは、一本をジョレに持たせて地上をまもらせ、自分は空中を飛び回るゴーレムと戦った。

 戦いながらヒートソードの使い方を学び、二人で全部を倒した。

 ゲルヌはあとのことをジョレにまかせ、現状をゾイアたちに報告するため飛び立った。


 一進一退を続けるガルマニアの内戦に変化が起きていた。

 ファーンの率いる精鋭部隊三千が縦横に活躍し、間もなく数万の援軍が到着するとのうわさ相俟あいまって、コロクス・ドーラ連合軍六万の前線がくずれ始めたのである。

 戻って来たドーラが直接指揮しきったものの、一度低下した士気しきは上がらなかった。

 そのような中、敵を牽制けんせいするためにドーラが発案した古代神殿攻撃が失敗したと、ドゥルブが知らせて来た。

 いかりを通り越して呆然ぼうぜんとするドーラに、ドゥルブは、古代神殿にはもうバルルがいないと告げた。


 最初は驚いたドーラも、バルルがいなくなった理由をドゥルブから説明され、この世界から逃げる方法を考えた。

 そのためには古代神殿を乗っ取り、北の大海にある宙船そらふね本体と合体させねばならない。

 古代神殿についてはドゥルブに任せ、ドーラは、聖剣かゾイアの身体を手に入れるため、バロードへ飛んだ。

 その古代神殿では、ゲルヌにヒートソードで斬られたゴーレムが、上半身だけで赤目族を攻撃し、留守を護るジョレに照準しょうじゅんを合わせていた。


 ジョレは何とか最初の一発をかわせば、動けない相手から逃げられると思ったが、バラバラになったゴーレムたちの身体が迫って来ており、中でもジョレが頭部をかした一体が背後から首をめて来た。

 ジョレはヒートソードを捨て、協力を約束した。

 すると、上半身だけの一体が、自分をかかえて本殿内に入るようめいじた。


 上半身だけのゴーレムを前に持ち、首のないゴーレムを背負せおうようにして、ジョレは本殿内に入った。

 中にはロビーがおり、最初抵抗したが、すぐにゴーレムに支配され、更に奥へと案内した。

 制御盤コンソールを発見したゴーレムは情報を転送アップロードし、ドゥルブ自身は古代神殿本体に移った。

 完全に機構システムを支配したドゥルブは、そのれいとしてジョレを専属の下僕サーバントにしてやろうと宣言し、合体した。


 ジョレはゴーレムの口から武器を取り出すと、それで赤目族をおどしながら話をした。

 バルルは赤目族を捨てて逃げたのだから、むしろドゥルブに従えと言うと、最初は抵抗した赤目族も最終的には平伏ひれふした。

 ジョレに憑依ひょういしているドゥルブも感心し、直接手をくだすより、ジョレを媒介ばいかいにして民衆を支配することにした。


 バロードの王都おうとバロンでは、最重要会議の最中であった。

 ゲルヌ皇子おうじからバルルが消えた経緯いきさつが説明されると、ゾイアが今すぐ聖剣でドゥルブを中和すると宣言したものの、ウルスラ女王が危険すぎるとめた。

 すると、本来発言権のないアルゴドラスが口をはさみ、今こそドーラに聖剣を渡して中和させよと提案した。

 会議が紛糾ふんきゅうしたところへ、そのドーラ本人がたずねて来たが、その姿は本来の老婆であった。


 老婆となったドーラは、バルルもドゥルブも似たような存在だと非難ひなんし、人間の生命いのちかろんじていると断言した。

 しかし、今無理に中和をこころみれば、ドゥルブは北の大海の宙船を自爆させ、人間を道連れにするだろう。

 そこで一計いっけいあんじ、古代神殿を宙船と合体させ、ドゥルブを宇宙へ逃げさせるといううそいたのだという。

 ドゥルブが油断するその合体の前後に、必ず中和するから聖剣を渡すようにと、ドーラはウルスラに迫った。


 ウルスラは、最終的な結論を出す前に話し合いたいとこたえ、そのかんドーラは別室で待ってくれるように頼んだ。

 ドーラはいかりをあらわにしたが、その言葉に従って別室へ移動した。

 再開した会議の席上、ゾイアから意見を求められたアルゴドラスは、結局ドーラに聖剣を渡すしか方法はないのだから、裏切らぬようそれ相応の対価たいかを用意すべきだと告げた。

 ゾイアは、中原東南部の旧アルアリ大湿原跡地あとちを丸ごと渡し、新たな国をつくるのを支援しようと提案した。


 話し合いが終わり、呼び戻されたドーラはいつもの美熟女びじゅくじょ姿であり、ひらなおったように結論を聞いた。

 代表してウルスラが聖剣を渡すと答え、返礼として中原東南部に国を創ってもらうと告げたが、ドーラは拒否した。

 弟ウルスに交代し、中原東南部が如何いか地味じみゆたかかを力説したが、ドーラは、国ができる頃には自分の寿命がきると反論した。


 交渉決裂かと思われた時、ゾイアの身体に間借まがりしているジェルマがドーラに提案した。

 メトス族が生涯しょうがいに一度だけ使える余命よめいゆずわざで、二百年の寿命をやろうという。

 それよりはゾイアの身体で永遠の生命いのちた方がいいと言うドーラに、ゾイアの身体の機能が、人格が複写コピーされるだけであり、永遠の生命が得られるわけではないと説明した。

 ドーラも妥協して、二百年の寿命で手を打った。


 バロードでの話し合いを終え、エイサの地下にある古代神殿に戻ったドーラは、意外に片付かたづいていることに驚いた。

 さらに本殿内にはジョレがおり、ドゥルブに憑依ひょういされているというより、人格の融合ゆうごうが起きているようであった。

 ドーラの説明に、裏切るのかとおこった態度もジョレそのものであったが、ドーラはこれも相手をだますための手段だと言い切った。


 バロード側の提案に乗るフリをして、最後の段階でドゥルブと共に宇宙へ飛び立つのだというドーラを、ジョレそのもののようなうたぐり深さで、ドゥルブは不信感をあらわにした。

 しかしドーラは、二百年の余命も、新しい国の女王となることも面倒めんどうであり、むしろ、ドゥルブの仲間となって宇宙を自由に駆けめぐる方が魅力的なのだという。

 ドゥルブは、半信半疑ながら計画を進めることを了承した。

 帰路、ドーラは同体の兄アルゴドラスに、共にドゥルブを支配するつもりだと告げた。


 ドーラは、北方対岸の山岳地帯からバロード東南部まで続く地下隧道トンネルの入口にり立った。

 機械魔神デウスエクスマキナを使ってエイサに向かって掘り進めるゾイアのところへ行き、ドーラはドゥルブとの交渉内容を包みかくさず説明した。

 ドゥルブ同様、裏切るのかと色をすゾイアに、ドーラは、敵をあざむくにはず味方からだとうそぶき、成功を約束した。

 ゾイアもそれを信じるほかなく、作業を急ぐことにした。


 この世界そのものが消滅するかもしれぬ危機も知らず、ガルマニアの内戦は熾烈しれつきわめていた。

 ドーラの傀儡かいらいとなっているサンテは、敗戦が決定的となっても無謀むぼうな攻撃を続け、仲間であるコロクスがたまりかねて降伏をめいじると、一刀いっとうもと斬殺ざんさつしてしまった。

 単身乗り込んで来たファーンがサンテをたおし、兵士に投降を呼び掛けて、ようやく戦いは終わった。


 怪我けがいながらも、一刻いっこくも早く帰国したいと兄ファイムにせがむツイムのところへ、ジェルマがたずねて来た。

 リープが不得手ふえてなジェルマには無理だとツイムが言っていると、クジュケもやって来た。

 帰国できると喜ぶツイムに、クジュケは、むかえに来た相手はジェルマの方だと告げた。

 ドーラが、余命二百年の前払いを要求しているというのである。


 クジュケの話を聞いたジェルマは、照れたように笑いながら、余命をゆずわざができると言ったのはハッタリだと告白した。

 蒼褪あおざめるクジュケに、どうせ寿命が延びたかどうかわからないはずと、ジェルマはひらなおった。

 しかし、王都バロンの双王宮そうおうきゅうで待つドーラは、実験用に寿命がきかけているコウモリノスフェルを用意していた。


 こっそり双王宮に戻ったクジュケは、ラミアンを呼び出してドーラの様子を聞き、蒼白そうはくになった。

 しかし、クジュケが帰って来たことはすぐにバレ、ドーラはジェルマを連れて来るよう催促さいそくしているという。

 クジュケの顔色で騙されたことを知って激昂げっこうするドーラを、ジェルマは上手うまなだめたが、死にかけのノスフェルでじゅつためせと迫った。


 ジェルマは自信たっぷりに譲命術じょうめいじゅつを実行すると宣言し、ノスフェルに施術せじゅつした。

 すっかり元気になったノスフェルを見たドーラは安堵あんどしつつも、自分にも今すぐ術をほどこすように命じた。

 ジェルマは力を消耗しょうもうしたからすぐにはできないと断り、そのわり言霊縛ことだましばりを掛けられた。

 ドーラが去ったあと、クジュケが感謝すると、ジェルマは一旦いったん潜時術せんじじゅつで時をめ、譲命術を試したもののできなかったため、癒しヒーリングによって元気にしたのだと告白した。


 民心みんしんしずめるために国内をまわっていたウルスラたちが双王宮に戻って来たが、この世の終わりが近いと煽動せんどうしている者がおり、情報将軍ロックがひそかに調べているという。

 そのロックは民衆にまぎれ、『タナトゥスの使徒しと』の演説会場に行った。

 現れた使徒とは赤目族であり、バルルへの信仰を捨て、真の神であるタナトゥス、すなわちドゥルブに帰依きえするようさとしていた。


 思わずタナトゥスの使徒に反論したロックであったが、ドーラの両天秤りょうてんびんを指摘された上、バルルが既に古代神殿にいないこと、救援艦隊がこの世界をほろぼそうとしていること、更に、それらの実情をウルスラ女王が隠していることまであげつらわれ、返す言葉をうしなった。

 このままではロック自身が殺されかねない状況となったが、隠形おんぎょうしてついて来ていたクジュケに救われた。


 バロード以上に民衆に不安が広がっているエイサでは、バルルが去って無防備となった現状に防衛大臣マーサ姫がいきり立ち、覇気はきのないゲルヌ皇子おうじいかりをぶつけていた。

 しかし、肉親以上の関係であるゲルニアの危篤きとくを知らされながら、責任感から見舞いに行くこともできずにいるゲルヌに、マーサの父マリシ元将軍が、エイサのためにこそゲルニアのもとに行くべきだと助言した。


 その場から『隠れ里』へ行ったゲルヌは、ザネンコフの案内でゲルニアの病室へ行った。

 既に臨終りんじゅうが間近であり、リサンドールからあの世へ旅立つことをおそれなくてよいとなぐさめられていた。

 その時ゲルヌの第三の目が光り、バルルが設定した時空を超えた通路の中でゲルニアと最後の会話ができた。

 ゲルニアは、バルルの集合意識の一部となるという。

 同時に、艦隊の公子魚雷フォトントーピドーの発射まで、あと一日の猶予ゆうよしかないと告げた。


 古代神殿に戻ったドーラは、赤目族が何処いずこかへ出発しているのを目撃した。

 魔王化しつつあるジョレ/ドゥルブに事情を聞くと、逆に裏切りをたくらんでいるだろうと指摘された。

 ドーラがひらなおって弁解したところで、ジョレは、赤目族に布教させ、信者となった者たちを別の世界に連れて行って支配するのだと説明した。

 更にジョレは、実際には中和しないのだからと、本物の聖剣を模倣品イミテーションと交換するよう、ドーラに迫った。


 ジョレと押し問答となったものの、聖剣を渡さなければ共に滅びるだけだと言われ、ドーラは不承不承ふしょうぶしょう交換に応じた。

 一方、期限が明日の日没までとゲルヌに知らされたウルスラたちは、最後の打ち合わせをしていたが、ラミアン・タロス・ロックが次々とドーラに対する不信感を表明し、収拾しゅうしゅうがつかなくなっていた。

 そんなところへ、そのドーラ本人の来訪が知らされた。


 どうせ自分の陰口かげぐちを言っていたのだろうと皮肉るドーラに、ウルスラがエイサでの首尾しゅびたずねた。

 ドーラは聖剣が贋物にせものと交換されたことなどまったれず、ドゥルブに先に本殿に乗るように言われたため、中和は合体の後になるとだけ告げた。

 珍しくタロスが信用できないと言い、自分も本殿に同乗させて欲しいと申し出た。

 ゲルヌも同乗したいと言ったが、ドーラはどちらも断り、ラミアンならよいとこたえた。

 動揺しながらも、ラミアンは引き受けた。


 その頃、スカンポ河東岸地区でも、首脳陣が集まって対応を協議していた。

 タナトゥス教による市民の動揺は比較的少なく、ンザビも完全に消滅した様子に、荒野あれの騎士団のルキッフ、エオス大公国のニノフ、新辺境伯領のアーロンらは、後はもうゾイアたちにまかせるほかないと覚悟を決めていた。

 ルキッフは弟たちに名乗りを上げなかったことを後悔していたが、その弟ファイムも、娘リサの未来を案じていた。


 ドーラと共に本殿に乗り込むことになったラミアンが出発する前、起きて来たジェルマが万が一の場合の生命綱いのちづなだと言って、魔道の目印ノータを設定した。

 一方、地下を掘り進むゾイアのところへ現れたドーラは、事前に本殿に乗ることになったと説明した。

 裏切りをあやしむゾイアに中和の時機タイミングを指定させ、ドーラは段取りを決めると、北叟笑ほくそえみつつ去った。


 夜明け前に隧道トンネルを貫通させたゾイアが地下の巨大円筒内に入ると、王と王妃おうひのようなで立ちでジョレとドーラが出迎えた。

 そこへラミアンを連れたゲルヌが来ると、ジョレと多少言い合いとなったが、最終的には冷淡な別れとなった。

 ゲルヌが去った後、本殿に三人が乗り込み、被牽引車両トレーラー形態となったゾイアを動力車両トラクター形態となったデウスエクスマキナが牽引けんいんして出発した。


 タナトゥス教によって不安が広がる中原であったが、内戦が終了したばかりのガルマニアではそれどころではなく、戦後処理が話し合われていた。

 その中でヤーマンは、元皇后こうごうオーネの身柄みがらをプシュケー教団にあずけたいと言い、更に、ドーラのバローニャ州を教主領として渡したいと告げた。

 そのプシュケー教団でもタナトゥス教による動揺が起きており、教主ヨルムは頭を悩ませていた。


 変身したゾイアにせられて運ばれる本殿の内部は、静かであった。

 退屈したラミアンがしきりにドーラに話しかけ、それにジョレが口をはさんだ。

 歴代の皇帝の人物評をしている際ジョレに異変が起こり、頭痛がするかのように顔をしかめ、見張り役に小型自立機械ロビーを残して別室にがった。

 それを見たドーラは、ジョレの内部でドゥルブと主導権争いが起きているのだろうと推測した。


 北方では、赤目族に誘導されたタナトゥス教の信者たちが、続々と巨大円盤に乗り込んでいた。

 しかし、無理な行程こうていに脱落する者も多く、凍死寸前の状態のまま放置されていた。

 一方、中原最西北端の山岳地帯に到達したゾイアは、本殿を一旦いったんおろし、巨大有翼獣人ケルビム形態で空を運ぶ段階になった。

 その前に中の状況を確認したゾイアは、一層人格の融合が進んだジョレが、魔王のようになっていることに驚きつつも、それがきちきょうか、判断がつきかねた。


 北の大海へ行く前に、ゲルヌがバロードに立ち寄ると、政権の幹部がめていると秘書官シャンロウが教えてくれた。

 北の大海の現場に立ち会うのは、魔道が使える者だけに限定するというクジュケに、ロックやタロスが反撥はんぱつしていた。

 その時ウルスラが、本当のことを言うべき時が来たと告げ、ゾイアの『時は今』という合図によって聖剣が時を遡行そこうし、過去から未来へ順行じゅんこうさせてゾイアの手元に行くようになっていると教えた。


 先に北方に到着したウルスラたちは、巨大円盤に向かって死の行進を続けるタナトゥス教の信者を見かけた。

 行き倒れた一人を助けようとウルスラが言い出し、わりにクジュケが行ったものの、タナトゥスの教えを信じない者の助けは受けないと拒絶された。

 そのタナトスであるドゥルブと合体したジョレは、ドーラも手にえない魔王に変貌へんぼうしていた。


 北の大海にウルスラたちがくと、巨大円盤の周辺には、何千人ものタナトゥス教の信者が集まっていた。

 その時、ウルスラと交代したウルスが、円盤が随分ずいぶん傾いていると指摘した。

 すると、何かに思い当たったゲルヌがあわてて赤目族に呼び掛けた。

 出発に備えて機関エンジン予熱ウオームアップしているため、その熱で氷がけ始めており、このままでは氷上にいる人々がてついた海に落下してしまうと、ゲルヌは警告した。

 しかし、赤目族は嘲笑ちょうしょうするだけであった。

 そこへ、ゾイアにかかえられた本殿が到着した。

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