あらすじ(1401 ハルマゲドン(57) ~ 1450 ハルマゲドン(106))
ガルマニアへの援軍を要請するため、単身で聖地シンガリアを訪れた統領クジュケだったが、不機嫌そのものの教主ヨルムに気後れしてしまう。
そこへガイ族のハンゼ少年が現れ、友人の少女ヤンを救うため援軍を出して欲しいと懇願する。
更に門番の老人からも先代サンサルスの教えを口添えされ、頑固なヨルムも援軍を出す決意を固めた。
その頃、ツイムの船で眠り続けるジェルマ少年に、異変が起きた。
目を醒ましたジェルマの瞳の色は鮮やかなコバルトブルーであり、その喋っている話の内容からも、ツイムには相手がタロスであるとわかった。
互いの情報を交換したところへ、困った様子の魔道屋スルージがやって来て、老人の姿に戻ったアルゴドラスが酔い潰れてしまったと告げた。
ジェルマの寝ていた寝台にアルゴドラスを寝かせると、タロスの代わりにツイムがバロード軍を取り返しに行くと宣言した。
一方、夢の中で異世界の戦場にいるジェルマ本人は、救けてくれたナターシャに協力していたが、瀕死の男に足首を掴まれてしまう。
その男の瞳の色は、珍しいアクアマリンであった。
ジェルマの足首を掴んだ男の瞳は、一瞬アクアマリンのように見えたが、見ている間に色が濃くなり、真っ黒になった。
髪の色も黒く、マオール人のような顔立ちをしている。
困ったジェルマはナターシャを呼んだが、警戒して武器を構えた。
男は外国人傭兵部隊の者だと名乗った。
怪我をしているため、用心しながらもナターシャの地下室へ連れて行き、ジェルマも協力して治療した。
男の名は、アイゾーというらしかった。
アイゾーという名前に反応しそうになったジェルマの意識が遠のき、意識が戻ると目の前に髪を伸ばしたナターシャがいた。
何故かジェルマは赤ん坊になっており、シンゴという名であるらしかった。
父のアイゾーは宇宙開発公社に献体の申し込みをしたと話しており、死後、その脳を活用して人工実存が造られるという。
また場面が変わり、あの地下室で年老いたアイゾーとナターシャが死んだ息子シンゴの話をしており、外では内戦が起きているらしい。
ジェルマは視線だけの存在になっていた。
アイゾーを助けるため、武器を手にしたナターシャが階段を駆け上がったが、激しい爆発が起き、地下室は土砂に埋まった。
気が付くと、ジェルマは暗黒の中を漂っていた。
その暗黒の中に浮かぶアイゾーを見つけ、眠りから醒まそうと声を掛けると、アイゾーの瞳の色はアクアマリンであった。
心細さから、泣きながらジェルマがゾイアの名を呼ぶと、見る間にアイゾーからゾイアに変身した。
夢の循環から抜け出したゾイアは、ゾイアとしての人格を完全に取り戻した。
コロクス・ドーラ連合軍六万は、当初こそ半分の兵力しかないヤーマン直属軍を一方的に攻めていたが、それが徐々に膠着状態に陥りつつあった。
ヤーマンが得意とする少数部隊による攪乱戦法により、本来の軍師であるドーラが不在で一本調子にしか攻められない大軍の脆さが露呈したのである。
更に、苛立つコロクスの許へ、タロス率いるバロードからの援軍四万五千が驀進中との知らせが入った。
勿論、遥か上空から偵察している東方魔道師たちには、タロスの瞳の色の変化まではわからなかった。
スカンポ河東岸で最初に腐死者の接近に気づいたのは、上流域の『荒野騎士団領』の監視船であった。
偶々乗組員に元漁民がおり、漁網を弩で打ち出して絡め捕る策戦が功を奏し、一時的に足止めはできた。
しかし、中流域のエオスの大公国付近には、ずっと多くのンザビが殺到し、ロック、ゾイアの身体を預かるウルス、ペテオたちが全力で渡河を阻止していた。
漁網以外の有効な手段として、礫を打ち出してんザビの脚を狙うことにより、一進一退の状態で夜を迎えた。
中流域では河幅が広く、対岸が見えないため、ペテオは甲板を照らしながら監視していたが、ゴンと何かがぶつかる音が響き、ンザビが甲板に上がって来た。
ペテオは、ウルスラがゾイアの身体で造ってくれた薬剤、通称、聖水を浴びせてンザビ倒したが、後から後から甲板に上がって来る。
絶望に空を見上げると、翼竜となったウルスが飛んでおり、聖水を散布してくれ、事なきを得た。
翼竜となって一晩中聖水を撒き続けたウルスは、眠気と疲労で力尽き、水面に墜落した。
が、その衝撃で目醒めた瞬間、姉ウルスラと共通の身体に戻っていた。
ウルスラは休むように勧めたが、ゾイアの身体を捜すため、ウルスは眠らずに道案内をした。
幸い、ゾイアの身体には本人の本来の人格が戻っており、もう迷うことはないと宣言した。
その頃、眠り続けるアルゴドラスを見張っているジェルマの身体のタロスのところへ、怪我をしたツイムが戻って来た。
気づかれぬよう、スルージに連れられて夜間飛行しつつバロード軍を発見したものの、向こうもツイムとは知らずに矢を射掛けて来たという。
ツイムを庇ったスルージの方が重傷であるため、代わりの魔道師を行かせようと話しているところへ、クジュケが帰って来た。
ツイムの代わりにバロード軍を止めに行くというクジュケに、アルゴドラスが同行を申し出た。
信用できないと声を荒らげるツイムを、ジェルマの身体にいるタロスが窘めた。
総合的に判断したクジュケは、アルゴドラスを連れて行くことにした。
同じ頃、援軍を出せずに悩んでいるハリスのところへ元皇帝ゲーリッヒがやって来て、協力するから早く援軍を送れと告げた。
一方、タロスの身体にいるため魔道が使えず、苛立つドーラの目の前に、アルゴドラスを抱えたクジュケが現れた。
いきなり斬り付けたドーラの剣を、老人の姿のアルゴドラスは護身用の剣で受けた。
ドーラは、タロスの身体の体力にものを言わせようと斬撃を繰り返したが、悉くアルゴドラスに躱され、剣を落としてしまった。
業を煮やしたドーラは部下に攻撃を命じたが、上空にゾイアが現れ、参謀総長として全軍に帰還を促した。
が、その隙にドーラは本来の身体を奪い返して逃げて行った。
逆に、アルゴドラスの人格はタロスの身体に入ってしまった。
倍の兵力を擁しながら苦戦を続けるコロクス・ドーラ連合軍にも、バロード軍四万五千の反転が伝わった。
喜ぶコロクスに、戻って来たドーラ本人が罵声を浴びせた。
バロード軍を率いていたのは自分であり、それを反転させたのは復活したゾイアだという。
追い込まれたコロクスにトドメを刺すように、ハリスの援軍がゲーリッヒの領土を通過して迫って来ているとの知らせが入った。
何とかしろと喚くコロクスを無視し、ドーラはドゥルブに、手持ちの機械兵でエイサを攻撃するようにと告げた。
ンザビがほぼ壊滅し、ゾイアが復活したことを聞き、ゲルヌは一旦エイサに戻ることにした。
先に地上部分の業務を片付け、地下の古代神殿に降りたゲルヌは、信じられない光景を目にした。
第一発言者ゲルニアが十字架に磔にされ、石を投げられていたのである。
救け出して事情を聞くと、古代神殿がドゥルブに破壊されるとの予言が出て、確かめようと魔道神を訪ねると、既にいなくなっていたという。
恐慌状態に陥った赤目族たちは、ゲルニアを生贄に捧げれば、バルルが戻ると信じているらしい。
傷付いたゲルニアを隠れ里へ運んだゲルヌは、かつての部下であるザネンコフ元将軍から、エイサの古代神殿にドゥルブによる攻撃があるとすれば、地下からだろうと推測した。
早速戻って対応すると告げたゲルヌに、裏切りを繰り返したジョレ元将軍が自分も手伝わせて欲しいと申し出た。
その頃、赤目族の人心が荒廃した状態の古代神殿に、ドゥルブのゴーレムたちの攻撃が始まった。
右往左往するばかりの赤目族の許に、ジョレを連れたゲルヌが戻った。
ジョレに見張りを頼んでゲルヌが本殿に入ると、壊れた機械人形のような小型自律機械だけが残っていた。
ゲルヌがロビーに問いかけると、バルルがいない理由を説明した。
救援艦隊がドゥルブごとこの惑星を破壊する決定を下したため、それを止めるべく、予備機構の黄金城と共に宇宙へ行ったのだという。
激昂するゲルヌに、ロビーを通じてバルルが詫び、何とか現地でドゥルブを中和して欲しいと頼んだ。
ロビーから灼熱剣という武器を二本渡されたゲルヌは、一本をジョレに持たせて地上を護らせ、自分は空中を飛び回るゴーレムと戦った。
戦いながらヒートソードの使い方を学び、二人で全部を倒した。
ゲルヌは後のことをジョレに任せ、現状をゾイアたちに報告するため飛び立った。
一進一退を続けるガルマニアの内戦に変化が起きていた。
ファーンの率いる精鋭部隊三千が縦横に活躍し、間もなく数万の援軍が到着するとの噂も相俟って、コロクス・ドーラ連合軍六万の前線が崩れ始めたのである。
戻って来たドーラが直接指揮を執ったものの、一度低下した士気は上がらなかった。
そのような中、敵を牽制するためにドーラが発案した古代神殿攻撃が失敗したと、ドゥルブが知らせて来た。
怒りを通り越して呆然とするドーラに、ドゥルブは、古代神殿にはもうバルルがいないと告げた。
最初は驚いたドーラも、バルルがいなくなった理由をドゥルブから説明され、この世界から逃げる方法を考えた。
そのためには古代神殿を乗っ取り、北の大海にある宙船本体と合体させねばならない。
古代神殿についてはドゥルブに任せ、ドーラは、聖剣かゾイアの身体を手に入れるため、バロードへ飛んだ。
その古代神殿では、ゲルヌにヒートソードで斬られたゴーレムが、上半身だけで赤目族を攻撃し、留守を護るジョレに照準を合わせていた。
ジョレは何とか最初の一発を躱せば、動けない相手から逃げられると思ったが、バラバラになったゴーレムたちの身体が迫って来ており、中でもジョレが頭部を融かした一体が背後から首を絞めて来た。
ジョレはヒートソードを捨て、協力を約束した。
すると、上半身だけの一体が、自分を抱えて本殿内に入るよう命じた。
上半身だけのゴーレムを前に持ち、首のないゴーレムを背負うようにして、ジョレは本殿内に入った。
中にはロビーがおり、最初抵抗したが、すぐにゴーレムに支配され、更に奥へと案内した。
制御盤を発見したゴーレムは情報を転送し、ドゥルブ自身は古代神殿本体に移った。
完全に機構を支配したドゥルブは、その礼としてジョレを専属の下僕にしてやろうと宣言し、合体した。
ジョレはゴーレムの口から武器を取り出すと、それで赤目族を脅しながら話をした。
バルルは赤目族を捨てて逃げたのだから、寧ろドゥルブに従えと言うと、最初は抵抗した赤目族も最終的には平伏した。
ジョレに憑依しているドゥルブも感心し、直接手を下すより、ジョレを媒介にして民衆を支配することにした。
バロードの王都バロンでは、最重要会議の最中であった。
ゲルヌ皇子からバルルが消えた経緯が説明されると、ゾイアが今すぐ聖剣でドゥルブを中和すると宣言したものの、ウルスラ女王が危険すぎると止めた。
すると、本来発言権のないアルゴドラスが口を挟み、今こそドーラに聖剣を渡して中和させよと提案した。
会議が紛糾したところへ、そのドーラ本人が訪ねて来たが、その姿は本来の老婆であった。
老婆となったドーラは、バルルもドゥルブも似たような存在だと非難し、人間の生命を軽んじていると断言した。
しかし、今無理に中和を試みれば、ドゥルブは北の大海の宙船を自爆させ、人間を道連れにするだろう。
そこで一計を案じ、古代神殿を宙船と合体させ、ドゥルブを宇宙へ逃げさせるという嘘を吐いたのだという。
ドゥルブが油断するその合体の前後に、必ず中和するから聖剣を渡すようにと、ドーラはウルスラに迫った。
ウルスラは、最終的な結論を出す前に話し合いたいと応え、その間ドーラは別室で待ってくれるように頼んだ。
ドーラは怒りを露わにしたが、その言葉に従って別室へ移動した。
再開した会議の席上、ゾイアから意見を求められたアルゴドラスは、結局ドーラに聖剣を渡すしか方法はないのだから、裏切らぬようそれ相応の対価を用意すべきだと告げた。
ゾイアは、中原東南部の旧アルアリ大湿原跡地を丸ごと渡し、新たな国を創るのを支援しようと提案した。
話し合いが終わり、呼び戻されたドーラはいつもの美熟女姿であり、開き直ったように結論を聞いた。
代表してウルスラが聖剣を渡すと答え、返礼として中原東南部に国を創ってもらうと告げたが、ドーラは拒否した。
弟ウルスに交代し、中原東南部が如何に地味豊かかを力説したが、ドーラは、国ができる頃には自分の寿命が尽きると反論した。
交渉決裂かと思われた時、ゾイアの身体に間借りしているジェルマがドーラに提案した。
メトス族が生涯に一度だけ使える余命を譲る技で、二百年の寿命をやろうという。
それよりはゾイアの身体で永遠の生命を得た方がいいと言うドーラに、ゾイアの身体の機能が、人格が複写されるだけであり、永遠の生命が得られる訳ではないと説明した。
ドーラも妥協して、二百年の寿命で手を打った。
バロードでの話し合いを終え、エイサの地下にある古代神殿に戻ったドーラは、意外に片付いていることに驚いた。
更に本殿内にはジョレがおり、ドゥルブに憑依されているというより、人格の融合が起きているようであった。
ドーラの説明に、裏切るのかと怒った態度もジョレそのものであったが、ドーラはこれも相手を騙すための手段だと言い切った。
バロード側の提案に乗るフリをして、最後の段階でドゥルブと共に宇宙へ飛び立つのだというドーラを、ジョレそのもののような疑り深さで、ドゥルブは不信感を露わにした。
しかしドーラは、二百年の余命も、新しい国の女王となることも面倒であり、寧ろ、ドゥルブの仲間となって宇宙を自由に駆け巡る方が魅力的なのだという。
ドゥルブは、半信半疑ながら計画を進めることを了承した。
帰路、ドーラは同体の兄アルゴドラスに、共にドゥルブを支配するつもりだと告げた。
ドーラは、北方対岸の山岳地帯からバロード東南部まで続く地下隧道の入口に降り立った。
機械魔神を使ってエイサに向かって掘り進めるゾイアのところへ行き、ドーラはドゥルブとの交渉内容を包み隠さず説明した。
ドゥルブ同様、裏切るのかと色を成すゾイアに、ドーラは、敵を欺くには先ず味方からだと嘯き、成功を約束した。
ゾイアもそれを信じる外なく、作業を急ぐことにした。
この世界そのものが消滅するかもしれぬ危機も知らず、ガルマニアの内戦は熾烈を極めていた。
ドーラの傀儡となっているサンテは、敗戦が決定的となっても無謀な攻撃を続け、仲間であるコロクスが溜りかねて降伏を命じると、一刀の下に斬殺してしまった。
単身乗り込んで来たファーンがサンテを斃し、兵士に投降を呼び掛けて、漸く戦いは終わった。
怪我を負いながらも、一刻も早く帰国したいと兄ファイムにせがむツイムのところへ、ジェルマが訪ねて来た。
リープが不得手なジェルマには無理だとツイムが言っていると、クジュケもやって来た。
帰国できると喜ぶツイムに、クジュケは、迎えに来た相手はジェルマの方だと告げた。
ドーラが、余命二百年の前払いを要求しているというのである。
クジュケの話を聞いたジェルマは、照れたように笑いながら、余命を譲る技ができると言ったのはハッタリだと告白した。
蒼褪めるクジュケに、どうせ寿命が延びたかどうかわからないはずと、ジェルマは開き直った。
しかし、王都バロンの双王宮で待つドーラは、実験用に寿命が尽きかけているコウモリを用意していた。
こっそり双王宮に戻ったクジュケは、ラミアンを呼び出してドーラの様子を聞き、蒼白になった。
しかし、クジュケが帰って来たことはすぐにバレ、ドーラはジェルマを連れて来るよう催促しているという。
クジュケの顔色で騙されたことを知って激昂するドーラを、ジェルマは上手く宥めたが、死にかけのノスフェルで術を試せと迫った。
ジェルマは自信たっぷりに譲命術を実行すると宣言し、ノスフェルに施術した。
すっかり元気になったノスフェルを見たドーラは安堵しつつも、自分にも今すぐ術を施すように命じた。
ジェルマは力を消耗したからすぐにはできないと断り、その代わり言霊縛りを掛けられた。
ドーラが去った後、クジュケが感謝すると、ジェルマは一旦潜時術で時を止め、譲命術を試したもののできなかったため、癒しによって元気にしたのだと告白した。
民心を鎮めるために国内を廻っていたウルスラたちが双王宮に戻って来たが、この世の終わりが近いと煽動している者がおり、情報将軍ロックが密かに調べているという。
そのロックは民衆に紛れ、『タナトゥスの使徒』の演説会場に行った。
現れた使徒とは赤目族であり、バルルへの信仰を捨て、真の神であるタナトゥス、即ちドゥルブに帰依するよう諭していた。
思わずタナトゥスの使徒に反論したロックであったが、ドーラの両天秤を指摘された上、バルルが既に古代神殿にいないこと、救援艦隊がこの世界を滅ぼそうとしていること、更に、それらの実情をウルスラ女王が隠していることまで論われ、返す言葉を失った。
このままではロック自身が殺されかねない状況となったが、隠形してついて来ていたクジュケに救われた。
バロード以上に民衆に不安が広がっているエイサでは、バルルが去って無防備となった現状に防衛大臣マーサ姫がいきり立ち、覇気のないゲルヌ皇子に怒りをぶつけていた。
しかし、肉親以上の関係であるゲルニアの危篤を知らされながら、責任感から見舞いに行くこともできずにいるゲルヌに、マーサの父マリシ元将軍が、エイサのためにこそゲルニアの許に行くべきだと助言した。
その場から『隠れ里』へ行ったゲルヌは、ザネンコフの案内でゲルニアの病室へ行った。
既に臨終が間近であり、リサンドールからあの世へ旅立つことを怖れなくてよいと慰められていた。
その時ゲルヌの第三の目が光り、バルルが設定した時空を超えた通路の中でゲルニアと最後の会話ができた。
ゲルニアは、バルルの集合意識の一部となるという。
同時に、艦隊の公子魚雷の発射まで、あと一日の猶予しかないと告げた。
古代神殿に戻ったドーラは、赤目族が何処かへ出発しているのを目撃した。
魔王化しつつあるジョレ/ドゥルブに事情を聞くと、逆に裏切りを企んでいるだろうと指摘された。
ドーラが開き直って弁解したところで、ジョレは、赤目族に布教させ、信者となった者たちを別の世界に連れて行って支配するのだと説明した。
更にジョレは、実際には中和しないのだからと、本物の聖剣を模倣品と交換するよう、ドーラに迫った。
ジョレと押し問答となったものの、聖剣を渡さなければ共に滅びるだけだと言われ、ドーラは不承不承交換に応じた。
一方、期限が明日の日没までとゲルヌに知らされたウルスラたちは、最後の打ち合わせをしていたが、ラミアン・タロス・ロックが次々とドーラに対する不信感を表明し、収拾がつかなくなっていた。
そんなところへ、そのドーラ本人の来訪が知らされた。
どうせ自分の陰口を言っていたのだろうと皮肉るドーラに、ウルスラがエイサでの首尾を尋ねた。
ドーラは聖剣が贋物と交換されたことなど全く触れず、ドゥルブに先に本殿に乗るように言われたため、中和は合体の後になるとだけ告げた。
珍しくタロスが信用できないと言い、自分も本殿に同乗させて欲しいと申し出た。
ゲルヌも同乗したいと言ったが、ドーラはどちらも断り、ラミアンならよいと応えた。
動揺しながらも、ラミアンは引き受けた。
その頃、スカンポ河東岸地区でも、首脳陣が集まって対応を協議していた。
タナトゥス教による市民の動揺は比較的少なく、ンザビも完全に消滅した様子に、荒野騎士団のルキッフ、エオス大公国のニノフ、新辺境伯領のアーロンらは、後はもうゾイアたちに任せる他ないと覚悟を決めていた。
ルキッフは弟たちに名乗りを上げなかったことを後悔していたが、その弟ファイムも、娘リサの未来を案じていた。
ドーラと共に本殿に乗り込むことになったラミアンが出発する前、起きて来たジェルマが万が一の場合の生命綱だと言って、魔道の目印を設定した。
一方、地下を掘り進むゾイアのところへ現れたドーラは、事前に本殿に乗ることになったと説明した。
裏切りを怪しむゾイアに中和の時機を指定させ、ドーラは段取りを決めると、北叟笑みつつ去った。
夜明け前に隧道を貫通させたゾイアが地下の巨大円筒内に入ると、王と王妃のような出で立ちでジョレとドーラが出迎えた。
そこへラミアンを連れたゲルヌが来ると、ジョレと多少言い合いとなったが、最終的には冷淡な別れとなった。
ゲルヌが去った後、本殿に三人が乗り込み、被牽引車両形態となったゾイアを動力車両形態となったデウスエクスマキナが牽引して出発した。
タナトゥス教によって不安が広がる中原であったが、内戦が終了したばかりのガルマニアではそれどころではなく、戦後処理が話し合われていた。
その中でヤーマンは、元皇后オーネの身柄をプシュケー教団に預けたいと言い、更に、ドーラのバローニャ州を教主領として渡したいと告げた。
そのプシュケー教団でもタナトゥス教による動揺が起きており、教主ヨルムは頭を悩ませていた。
変身したゾイアに載せられて運ばれる本殿の内部は、静かであった。
退屈したラミアンが頻りにドーラに話しかけ、それにジョレが口を挟んだ。
歴代の皇帝の人物評をしている際ジョレに異変が起こり、頭痛がするかのように顔を顰め、見張り役に小型自立機械を残して別室に下がった。
それを見たドーラは、ジョレの内部でドゥルブと主導権争いが起きているのだろうと推測した。
北方では、赤目族に誘導されたタナトゥス教の信者たちが、続々と巨大円盤に乗り込んでいた。
しかし、無理な行程に脱落する者も多く、凍死寸前の状態のまま放置されていた。
一方、中原最西北端の山岳地帯に到達したゾイアは、本殿を一旦降し、巨大有翼獣人形態で空を運ぶ段階になった。
その前に中の状況を確認したゾイアは、一層人格の融合が進んだジョレが、魔王のようになっていることに驚きつつも、それが吉か凶か、判断がつきかねた。
北の大海へ行く前に、ゲルヌがバロードに立ち寄ると、政権の幹部が揉めていると秘書官シャンロウが教えてくれた。
北の大海の現場に立ち会うのは、魔道が使える者だけに限定するというクジュケに、ロックやタロスが反撥していた。
その時ウルスラが、本当のことを言うべき時が来たと告げ、ゾイアの『時は今』という合図によって聖剣が時を遡行し、過去から未来へ順行させてゾイアの手元に行くようになっていると教えた。
先に北方に到着したウルスラたちは、巨大円盤に向かって死の行進を続けるタナトゥス教の信者を見かけた。
行き倒れた一人を助けようとウルスラが言い出し、代わりにクジュケが行ったものの、タナトゥスの教えを信じない者の助けは受けないと拒絶された。
そのタナトスであるドゥルブと合体したジョレは、ドーラも手に負えない魔王に変貌していた。
北の大海にウルスラたちが着くと、巨大円盤の周辺には、何千人ものタナトゥス教の信者が集まっていた。
その時、ウルスラと交代したウルスが、円盤が随分傾いていると指摘した。
すると、何かに思い当たったゲルヌが慌てて赤目族に呼び掛けた。
出発に備えて機関を予熱しているため、その熱で氷が融け始めており、このままでは氷上にいる人々が凍てついた海に落下してしまうと、ゲルヌは警告した。
しかし、赤目族は嘲笑するだけであった。
そこへ、ゾイアに抱えられた本殿が到着した。




