表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1479/1520

1421 ハルマゲドン(77)

 白魔ドゥルブ傀儡かいらいとなったジョレは、機械兵ゴーレムの口から金属の筒を引き抜くと、そのにぎりの部分をつかんで本殿の外に出た。

 その同じ武器で仲間を殺され、恐慌状態パニックになって逃げていた赤目族たちが門前に集まって騒いでいる。

「神殿を破壊するとは、何と罰当ばちあたりな!」

狼藉者ろうぜきものめ、く立ち去れ!」

「ここはわれらの聖域サンクチュアリなれば、けがすことなかれ!」

「神罰をおそれよ!」

「畏れよ!」

「畏れよ!」

「畏れよ!」

 が、ジョレは皮肉なみをかべて、手に持っている武器を上に向けて発射した。

 轟音ごうおんおびえて震える赤目族たちを見回し、ジョレは小声で「殺すほどでもないか」とつぶやくと、胸を張って告げた。

「神は死んだ。いや、死んではいないが、おまえたちを見捨てたのだ。あんな薄情はくじょう魔道神バルルより、われらドゥルブを信仰しんこうしろ。きっと今より幸せになれるぞ」

 奇妙なことに、憑依ひょういしたはずのドゥルブが、ジョレの人格と違和感なく融合ゆうごうしていた。

 ジョレという男が憑依れしているということもあるだろうが、これも一種の才能かもしれない。

 それはともかく、この世界には馴染なじみのない武器を手にしたその姿は、悠揚ゆうようせまらざる風格ふうかくさえあった。

 赤目族たちは、その武器に対する恐怖も相俟あいまって、気圧けおされたように黙り込んでいたが、一人がたまりかねたようにたずねた。

「本当にバルルはわれらを捨てたのか?」

 仲間たちは「よさぬか」「恥を知れ」「不信心者ふしんじんものめ」と叱責しっせきしたが、その声は小さかった。

 それを充分に心得こころえたように、ジョレは自信たっぷりな口調くちょうで話し始めた。



 本当だとも。

 今こそおまえたちに真実を教えよう。

 おまえたちの知るバルルとは、神などではない。

 成程なるほど知性は高く、寿命もはかり知れぬほど長いが、まあ、言ってみればそれだけの存在だ。

 で、あれば、おまえたちのきらうわれらと何の違いがあろう。

 ああ、ちなみにだが、バルル同様、われらをドゥルブと呼んだのはこの惑星せかいの人間たちであり、われら自身が名乗ったわけではないぞ。

 しかし、われらの本当の名を言ったところでおまえたちには無意味だから、ドゥルブと呼ぶがいい。

 抑々そもそも、われらはこの宇宙せかいとは別の宇宙で進化した存在だ。

 よって、説明の中でわからない言葉が出て来るだろうが、まあ、聞き流してくれ。

 もっとも、われらとて肉体を離脱テイクオフする以前はおまえたちとたような存在であり、それはバルルも同じはずなのだ。

 さて、偶然によってこの宇宙に漂着した際、自分たちと同様な知性体インテレクチュアルることを知り、われらは宥和ゆうわこころみた。

 うそではないぞ。

 拒絶したのはバルルたちの方だ。

 われらが有機生命体の根絶こんぜつを主張したら、倫理観がどうのと小煩こうるさいことを言ってな。

 当時のわれらは先鋭せんえい的な虚無主義ニヒリズムまっており、妥協だきょうするつもりもなかったから戦争となった。

 当初優勢に戦いを進めていたが、やはり余所者ストレンジャーであるわれらは補給ほきゅうが続かず、徐々じょじょおさえ込まれ、味方の大部分は元の宇宙へ逃げ帰った。

 戦時捕虜ほりょであったわれらだけはこの世界に取り残され、一万数千年の時を無駄むだにした。

 ところが、われらと同時にこの惑星に墜落したバルルは、仲間の救援を待つあいだ、神のフリをしておまえたちを支配したのだ。

 そして、ついにその救援が来ると知るや、おまえたちを捨てて逃げたのだ。

 何故なぜだと思う?

 ここにいるわれらをほろぼすため、連中はこの惑星ごと吹き飛ばすつもりなのさ。

 倫理観がどうのこうのなど、聞いてあきれるだろう?


 おっと、心配するな。

 われらとて、むざむざとやられるつもりはない。

 こうして船橋ブリッジ、おまえたちのう古代神殿も手に入った。

 あとはこれを宇宙船スペースシップ本体に接合ドッキングさせれば、いつでも逃げられるのだ。

 そこで、おまえたちに提案がある。

 ここに残っていれば、死を待つばかりだ。

 いっそ、われらのたみとなり、共にこの宇宙を支配せぬか?



 シンと静まり返る赤目族たちのうち、ジョレに質問した一人が突如とつじょ地面に両手をいた。

「どうか、わたくしたちをお導きください!」

 それにつられたように次々に大部分の赤目族は平伏ひれふしたが、当然、何名かは反撥はんぱつした。

だまされるな!」

「みんなも正気に戻れ!」

「ドゥルブの言うことなど聞くんじゃない!」

「きっとバルルが救ってくださる!」

 ジョレはわらいながら、武器を水平に構えた。

 ダーン、ダーンと音が響くたびに立って反対する者たちが倒れ、それを見てあわててつくばる者もいた。

 ついに立っている者がいなくなると、ジョレは宣言した。

「おまえたちをわがしもべとする! 逆らえば死を与えるが、従ってついて来れば、いずれわれらの仲間に加えることを約束しよう!」

 赤目族たちは顔を上げ、一斉いっせい唱和しょうわした。

「ドゥルブ!」

「ドゥルブ!」

「ドゥルブ!」

 満足そうにそれをながめていたジョレの顔が、白い平面に変わった。

「ふむ。面白い。われらが直接人間を支配するより、この者にまかせた方が上手うまく行きそうだ。いいひろい物をした。こうなれば、あの半腐はんぐされのサンテとかいう男は、早めに処分しよう。とっくに賞味期限が切れているからな」

 自分の冗談にウケて、切れ目のような口が哄笑こうしょうした。

(作者註)

 バルルとドゥルブの戦いについては、1109 牢獄島からの脱出(16) ~ 1122 牢獄島からの脱出(29)あたりをご参照ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ